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梅切らぬバカ

映画『梅切らぬバカ』を観た。

定かな記憶ではないが、それはこの映画の制作発表の場だったと思う。
主演の母親役の加賀まりこさんに誰かが質問した。
「役作りとか難しくなかったですか?」
それに対して加賀まりこさんは、
「私、実際に自閉症の息子がいるので、実生活の延長みたいで映画でも役作りとか特に難しくはありませんでした」
というふうなことをおっしゃっていた。
私はそのことを知らなかったので「えっ、そうなの?」と驚きながら聞いていたのだけど、あとでそのことの正式なインタビューを受けてらして、加賀まりこさんの連れ合いの方の連れ子が自閉症であったということらしい。
「今はこんな世の中なのでなかなか自由に会えないけど、目が純粋でとてもかわいい子なのよ」と答えてらした。
そのことを知ったからということではないが、予告編を観てこれはっ絶対に公開されたら観ようと思っていたのだ。
WOWOWオンデマンドを検索していたら配信されているのを知って「あっ!」と思って観た。

物語は…
山田珠子(加賀まりこ)は50歳になる自閉症の息子忠雄(塚地武雅)とふたりで暮らしている。
珠子は息子を忠さんと呼んで可愛がっている。
明るく元気に庭に梅の木がある戸建て住宅で暮らしているが、珠子は自分が歳をとってきたのを自覚していて、自分に何かあった時に息子はどうやって生きていくのかという不安を感じていた。
そんな時にグループホームの施設に息子を預ける決心をするが、そこでもやはり問題が起こってしまう。

この映画を観て思ったのは、日々の生活の大変さよりも理解しようとしない周りの人々との闘いが大変なのだと思った。
余談ではあるが、私の古くからの友人も自閉症の息子を育てている。
「大変だね」と声をかけると「大変なこともあるけど楽しいこともたくさんあるよ」と笑いながら答える友人を見て、その時は「そんなに強がらなくてもいいよ。もっと愚痴をこぼしていいんだよ」と私は言っていたが、この映画を観て彼女は本心で「楽しい」と言っていたのだとわかる。周りとの関係は大変ではあるが、家の中は幸せ、楽しさが溢れている。
しかし、この映画の中で描かれている問題(偏見や差別)のすべてが理解され解決されることは残念ながらないのだろうと思う。
とても歯痒い気持ちでいっぱいであるが『自分が一番普通』と信じてやまない人々がこの世の中には存在していて、自分と少しでも違う感覚を持ってる人に対して冷たく対応する。そういう人にこの問題を理解させるのは難しい。
改めて難しい問題提起を見せつけられたけど、ひととき、ふふっと笑ってしまうような珠子と忠さんの愛の溢れる生活が垣間見れてよかったと素直に思っている。

愛と不安の両方を自然に演じ分ける母親役の加賀まりこさんも素敵だったし、難しい演技が要求される忠男役の塚地武雅さんも素敵だった。
観てよかった。

監督: 和島香太郎
脚本: 和島香太郎
出演者: 加賀まりこ  塚地武雅  渡辺いっけい  森口瑤子  斎藤汰鷹  
林家正蔵  高島礼子  他

https://youtu.be/Ie4nHCVuTRc


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