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求めるは、若さ、特別、不老不死。

2020.8.7(金曜日) Goal In Life

「1本ぶちゅっといっときましょうか... 」その医師は嬉しそうに私の目を覗き込んだ。もうそれしか方法がないことを私はわかっている。「ぶちゅっとお願いします」と答えた。

数日前から肩が痛い。肩こりを通り越して痛みに変わってきた。鎮痛剤を飲んでもイマイチ痛みがおさまらず、今朝この整形外科病院に来た。ブロック注射をすると今までの痛みが嘘のように消える。肩に羽根が生えたように軽くなる。半ばちょっとしたブロック注射中毒と言ってもいいかもしれない。1本と言わず首や腰にも2本3本と打ってほしいくらいだ。「時間があるなら、肩のリハビリも受けていって」と言われて、暇だしどんな人がいるのか興味があって受けてみることにした。

この病院はリハビリ施設は大した症状ではなくても保険でいろいろと指導してもらえるのが高齢者に人気でいつも多くの患者が待合室に溢れている。私は知り合いがいるわけでもないので、無言でリハビリを受けていた。そして無言でさまざまな人たちを観察してみた。どんな平凡な人にも物語があり、どんな素敵な人にも闇がる。それを知ることが面白くて勉強にもなる。ほとんどが私より年上で、たまに若い人が来たりするとみんながジロっとその人を見る。私もジロジロと見られた。私でさえこの中に入ると若い女性というカテゴリーに入るようだ。

まざまな人種がいる。

派手な服装のおばちゃん。

質素な服装のおばちゃん。

化粧の派手なおばちゃん

若作りなおばちゃん。

人生を諦めてしまったようなおじちゃん。

若い者には負けない風なおじちゃん。

歩くのもままならない老人。

交通事故で骨折した若者。

子育てで腰を悪くした主婦。

無言でもこれくらいのことがわかってしまうから不思議だ。そして、聞き耳を立てているわけじゃないが、その人たちの話がよく聞こえる。若作りのおばちゃんは若く見られることを自慢している。「この間、75歳くらいですかって言われたのよ、本当は82歳なんだけどね〜」と嬉しそうに話す。質素なおばちゃんはファッションなんかより将来にのことを考えて小銭を溜めてるらしい。化粧の派手なおばちゃんは化粧をしてない人に「口紅くらい塗ったら、女なんだから」とアドバイスをして嫌がられている。歩くのがままらならない老人はまた山登りを再開したい為に歩行訓練をしているそうだ。1歩踏み出すたびに「うぅっ~」と死にそうな呻き声をあげる。主婦は女性雑誌を見つめ、気になる洋服の写真を撮っていた。若者はスマホを見つめゲームをする。そして私はその人たちを無言で見つめる。
 
何を目標として生きるのかはそれぞれの自由だ。そもそも目標などなくてもかまわないのだけど。ただ、人は目標を求める。少なくともここにいる人たちはしっかり求めている。人より若い自分、人より個性的な自分、人より刺激的な人生、人より特別な自分、人より高度な目標を持つ自分、いつまでも元気にいる自分。そして究極の目標、不老不死。悲しいかな人は自分自身が幸せと感じるより、他人に幸せと思ってもらいたくて頑張っている。

じっと見る、数十年後の自分の姿がここにある。

欲しがるねぇ。あれも欲しい、これも欲しい。

求めるは、若さ、個性、刺激、特別、不老不死。

読んでいただきありがとうございます。 書くこと、読むこと、考えること... これからも精進します。