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眠れない夜に、ほろ苦いわたし。

もう日付が変わって夜中の1時をまわったところだ。
あまりよく眠れないのはいつものことだが、今回ははっきり目が覚めてしまって、もう体が眠ることを受け付けなくなったようだ。
横になっても不快感しかない。
『眠れない時は無理に寝ようとすると余計に眠れないので、いっそのこと起きて好きなことをすればいい』と、誰かが言っていたのでそれを実行する。
起き上がって、喉が渇いていたのをいいことにビールを開けて、そして本を読み始める。本当はワインがよかったのだが、白ワインの在庫を切らしていて残念だった。赤ワインはおつまみが食べたくなるのでこれも断念した。
幸いなことにビールは山ほど冷蔵庫に入っていた。
誰も起こさぬようにそろりとステイオンタブを開けてグラスに注ぐ。ステイオンタブはどうやっても少し音がする。こんな音くらいでは誰も起きやしないとは思うが、細心の注意を払って開ける。それでもカチッと小さな音を立てた。
快感を感じる音だ。

本は軽快である。
海外の作家の本は不穏な状況を演出もどこか軽快なのが不思議だ。
軽快でアイロニー。
これは昼間読むより、夜中に読んだ方がおもしろい本なのかもと思う。
こんな文章が書けたならどんなに愉快であろうか。

雨が降っているのか、小さなシャーという音がベランダの方から聞こえる。窓を開けると確認できるがそれもめんどくさくて、雨が降っているのだと自己判断する。
たぶん外にはこんな時間でもビルの光でキラキラしているのだろうが、部屋の中は当然暗い。ベッド横にあるデスクの上に、何の変哲もない読書灯があり、その光だけが部屋の一部を煌々と照らしている。読書をする機能としては申し分ないが、色気もロマンもないデザインと光の具合は、眠気を誘う機能としてはまったく役には立たない。
そのせいで眠気どころかますます頭の中は覚醒してくるようだ。
こうなったらと思い本を日本の作家のものに変えた。やはり日本のものはとても真面目で心にずしんとくる。

そして2本目のステイオンタブを開ける。
グラスに注がれる琥珀色の液体は、1本目のそれと変わらず心地いい。
待っていると夜が明けるのが遅い。
また最初の海外作品の読書に戻る。
そして3本目のビールのステイオンタブがカチッと音を立てた。

ついに朝。
カーテンを開けると、やっぱり雨が降っている。
寝ていないのにどういうわけか心がはずむ。
真夜中に好きな本をアテにビールを飲む。
これは寝不足になってもやめられそうにない。




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