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眉毛のない男と恋をする


一歩進むごとに、過去の一歩が失くなっていく。
いつかこの場所もゼロになってしまうのだろう。
『霜柱を踏みながら 12』


私は17才の誕生日を迎えていた。高校生なった時から17才ってなんとなく特別な年齢のような気がしていた。16にも18にもないキラキラに少しヌメリやコクを足したような特別さがあるように思っていた。キラキラ感だけじゃなくそのプラスアルファが欲しくて早く17才になりたかった。なぜそんなふうに思っていたのだろうか...流行りの歌謡曲には「17才」という言葉ががよく使われていることや、セブンティーンという雑誌を読み漁っていたりしていて知らず知らずのうちに『17才は特別』というふうに洗脳されていたのかもしれない。今となってみれば、青春ど真ん中の浮足だった季節のせいだとしか言いようがない。

この頃の私は家庭というものにほぼ何も感じなくなっていた。母は仕事が順調で休みなく朝から晩まで家を空けていた。父は体調が思わしくなく家で臥せっていたり、ひどい時は入院したりしていた。でも私は母が何をしようと、父が何を思い悩もうと、もうそんなことにいちいち動揺していては自分の人生がダメになってしまうと思っていた。私の人生に対してこの両親が責任を取ってくれるわけじゃない。それなら私も両親の人生にあれこれ思い悩むことなんてまっぴらごめんだと思って暮らしていた。それはどこの家庭でも多少なりとも勃発する問題だと思うが、私の場合はそれが数年早く、そして強烈に訪れたということだ。

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