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8月22日 #アジアベイビーシアターミーティング レポ6日目【参加者と運営側のモヤモヤ】

6日目。ある意味ドラマチックな一日でした。
昨日でクリエーションが終了し、多くの方が帰られました。今日明日は、自己紹介・実践報告パートのほか、城崎の街をゆっくり過ごしたり、わりと時間を気にせずにざっくばらんな話をすることができました。
気持ちが緩んだのと、精神的・時間的に余裕ができたことによって、これまで見えていなかったことに気づきました。

今日は海外の三人の方が発表してくれました。
シンガポールの方は、自分が乳幼児演劇の創作をはじめた経緯と、それをどのように洗練させていったのかを分かりやすくまとめていました。『You can reach the sky』という作品です。
ディバイジングのエレメントとして、音、タッチ、カタチ、感情の4つを挙げ、それぞれどのように探究していったのかを映像をもとに紹介していました。探究したものを元に上演を行い、そこで経験から改善して調整するというプロセスをふまれてきたようで、とても参考になりました。

タイの方は、脳科学の研究者との出会いから、脳の発達に関心をもち、乳幼児演劇をはじめました。『Purr Purring』という猫のゴロゴロという意味で、聞いていて心地よい音をテーマにした作品です。赤ちゃんが好きそうな音を用いて、シンフォニーをつくれないかというふうに探究が進められたそうです。身体の稽古のためにヨガボールを用いたことがきっかけで、ボールでできる表現を探究していきました。ボールの色や大きさ、そのコントラスト、あるいはその組み合わせで何かの形をつくることができます。それらの表現をなぜ行っているのか、それに対する子どもたちの反応はどうかなど意見交換する機会があったようです。

三人目の台湾の方は家族をテーマに行った実践を紹介してくれました。とりわけ、ワークショップでつくったものを、参加者の家に持って帰って、そこで家族に向けて上演するという実践が、みんなの関心を集めました。お家に招くことのハードルの高さから、そうしたことを実践していることに驚いたからです。これには台湾の文化も影響しているのかもしれませんが、演劇を家庭にデリバリーするというやり方は、乳幼児演劇においても実践の可能性があるかもしれません。

実践報告パートの後、よく分からないモヤモヤが胸の辺りにありました。この数日間の疲れや違和感が蓄積されていたのだと思います。その感覚はときには隠せない苛立ちとして身体に現われてしまうこともありましたが、それが何なのかは分からずにいました。

今日のお昼ごろ、プログラムに関して参加者の方とお話ししていたときにどうも話がかみ合わないことがありました。
参加者の方も何やらモヤモヤとしたものを抱えていて、お互いのモヤモヤがすれ違っているようでした。それによってピリピリとした空気になりましたが、そこでお互いに語気強めに正直な態度で言葉にならない思いを何とか伝え合おうとしました。それはなかなかしんどい時間だったのですが、ある瞬間をきっかけに雲が晴れるようにお互いがモヤモヤが見えてきて、ようやく同じ景色を見ることができたように感じました。

参加者と運営側とで、見えている景色は異なりますが、それがそもそもどのように異なっているのかが分かっていませんでした。

それから、城崎の喫茶店に向かいました。今日の午後は城崎のフィールドワークをする予定となっていました。途中の道のりで青々とした空や緑が連なる山々を見て、とても新鮮な気持ちになりました。
これまで朝から晩まで城崎国際アートセンターのなかにいて、昼の城崎をゆっくりと見ることはありませんでした。クリエーションのときに1時間ほど外に出たわけですが、そのときは短時間で何かを見つけ出そうとしていて、ただぼんやりと城崎を感受することとは異なる、かなり能動的な知覚のモードだったと思います。今日になってはじめて、ただぼんやりと城崎の自然を見たわけです。

喫茶店ではのんびりとした時間が流れていました。それはアートセンターで流れている空気とは異なりました。
アートセンターでの時間は、それはそれで濃密ですばらしい時間でしたが、喫茶店でののんびりとした時間にふれて、ふと、城崎に滞在するとはどういうなのだろうかと考えました。

その後、城崎こども園に伺いました。お寺のとなりにあるその園はとてもユニークな実践をされていると聞き、乳幼児演劇の実践と重なる部分があるのではないかということで、園長先生にお会いすることになりました。
園長先生のお話はとても興味深いものでした。歴史のある園で、これまで例年と同じ発表会をしてきたところを、そうではなくて子どもたちが主体的にやりたいことを発表する場を手助けするというやり方に変えていったそうです。
こちらが何かを教えて提供するのではなく、道具や設備といった環境を整えていくことで、子どもたちのやりたいことを促していく。子どもたちの主体性を伸ばすということは、これからどんどん重要になっていくだろうとおっしゃっていました。
どこで活躍することになるかは分かりませんが、それが城崎であろうと、どこかの町であろうと構わないという考えに懐の深さを感じました。園長先生自身、好奇心があって柔軟な人なのだろうと思いました。

その後、温泉寺へと向かいました。ロープウェイは終了していたので、途中まで歩いて登ることになりました。ここでも大きな気づきがありました。
街からやや外れた道のりは、山の緑で囲まれていました。そうした景色に飢えていたのです。また、石畳の階段を登るときの脚への負荷、それに伴う息切れがいとおしいものに感じられました。山道の木陰に吹く風は爽やかで、息を吸うことが心地よく、一歩いっぽ登るたびに身体も心もほぐれていくようでした。山の中腹の本殿から街を見下ろし、それからまた下りていったのですが、自分が生まれ変わったような気分でした。

開放感に包まれたのも束の間、これまで考えられてこなかったことに思考が向かうようになり、夜にはまたいろいろと悶々としてきました。
ミーティングでは乳幼児演劇についてさまざまな視点を得られましたが、どう実践し、どう運営していくのかということについては、とりわけ自分が力不足であることを強く実感しました。

2日目の美味しそうだったごはん
8/18 #夕食
#ビーガンカレー
#ブロッコリーとコーンの洋風和え
#切干大根煮
#鶏おから団子のスープ

アジアベイビーシアターミーティングとは?

アジアの国々で、乳幼児を対象とした舞台芸術(=ベイビーシアター)に関わる人たちの継続的なネットワークづくりを目的として、国を超え、知識・経験を共有し、国内外で作品を製作し発表できる環境づくりを目的として開催。
世界の各地には、ベイビーシアターのネットワーク組織があり、ファンドレイジングをはじめとした相互支援の仕組みがあります。アジアで個々に活動を続ける個人や団体が繋がる場を目指して、今回アジア初の開催をBEBERICAの企画制作で行いました。

期間:2020年8月17(月)〜8月24日(月)
会場:城崎国際アートセンター Kinosaki International Arts Center
http://kiac.jp/jp/


文:仁科 太一


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