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奴隷商人 第9、10章

奴隷商人 Ⅱ
第9章 ●奴隷商人7、パトロヌス、紀元前47年

「エミー、こっちよ」とソフィアがタペストリーで仕切られた一画に私を連れて行く。そこは水場で、丈の高いベッドが4台置いてある。そこに少女が二人、仰向けになっている。別の少女が彼女たちのムダ毛をよく研いだ鉄製らしいナイフで剃っている。ナイフを使っているじゃない!

「ワックスじゃなくて、ナイフじゃないの?ソフィア」と聞くと「あれは前処理よ。あれだけじゃあ、毛穴のブツブツが残っちゃうでしょ」と答えた。

「次に、熱いタオルで肌を蒸すの」と壁際のタイル貼りでできたかまどで沸いている青銅製の鍋を指差す。「その隣りのがワックス」

 私がその隣りの鍋を覗くと、これは蜜蝋?これがワックス?あれ、これって・・・

 仰向けに横たわっている少女に別の少女が、熱いお湯にひたして絞った綿のタオルを下腹部に広げた。脚を広げさせられている。下腹部って言っても、そこ陰部よね?横たわっている少女は熱そうだ。

 ソフィアが20世紀で言うアイランドスタイルのタイル張りのテーブルに幅広の包帯を広げた。ミイラに巻くようなヤツだ。そこに杓子でグツグツした蜜蝋を均等にたらしていく。フーフーと拭いて、半分固まるぐらいで、少女の陰部に包帯を貼る。少女はあまりの熱さに唇を噛み締めている。しばらくして、蜜蝋が固まったようで、ソフィアが遠慮なく、包帯を引き剥がす。手伝っていた少女二人がその女の子の手足を押さえつけている。あまりの痛さに少女が背をそらすが、手足を掴まれていて、動けない。

「ほら、エミー、これがムダ毛処理よ。じゃあ、エミー、あなたも横になってね」

 あ~、聞くんじゃなかった。これは、20世紀の脱毛法のブラジリアンワックスじゃないか!私は、少女たちの手前、拒否もできず、泣く泣くベッドに仰向けになった。ソフィアがニタァ~と笑って「今まであまり脱毛してこなかったようね。でも、コーカサス人で、ムダ毛も薄いから、そんなに痛くないわよ。でも、全身くまなく脱毛しましょうね。ムラー様に抱かれるんだから、キレイにしておかないと。おケツの毛もキレイにしましょうね」と言う。

 ソフィアに全身くまなく、やられた。すね毛はもちろんのこと、おケツの毛なんて、四つん這いにさせられて、脚を広げさせられて、肛門から縦筋、あそこまで、ベリッとやられた。ベリッ!!だった。全身が因幡の白うさぎになったのだ。私、肛門なんて他人に見せたことないのよ!

 私の中のエミーが「絵美、あんた、なんてことを私の体にしているのよ!痛い!痛い!痛い!」と悲鳴をあげる。私だって悲鳴をあげた。でも、ソフィアは容赦なかった。「終わったわ。もう、全身、ツルッツルだわ」と嬉しそうに私の肌をなで上げた。痛い!

 その後、香油を全身に塗られて、髪の毛をアップにされた。ギリシャ神話の女神のような服を着させられる。ソフィアが銅鏡を差し出して「さあ、エミー、見てご覧なさい。キレイよ」と言う。

 鏡を見た。昨日の夜からだから、エミーをちゃんと昼間見たことがなかったのだ。え?エミーって、クロエ・グレース・モレッツみたいじゃない?と思った。私の中のエミーが「クロエ・グレース・モレッツって誰よ?褒めてんの?けなしてんの?」と言うので、20世紀の私の記憶を彼女に見せる。「ああ、未来のアクトレスね。褒められているのね。ありがとう、絵美」と言う。

奴隷商人 Ⅱ
第10章 ●奴隷商人8、解剖、紀元前47年

「別に肉料理だと思えばいいんでしょ?」と小ぶりの半月刀で大脳皮質を切っていく。半月刀が固いものに当たった。骨?骨が脳内にあるわけがない。私は指を突っ込んで、大脳皮質を左右に開いた。

 なんだ?これは?

 脳内から現れたのは、血まみれのガラスの球だった。慎重に皮質を球から剥がしていく。球からは何百本ものワイヤーが出ていて、脳のいたるところに広がっていた。

 なんなの?これ?

 ムラーがそっとガラス球を脳内から取り出す。一緒にワイヤーも脳から抜けてきた。ムラーが水桶に球を浸して洗う。透明の球の中にあったのは、なんか、基盤とチップのようだった。基盤?チップ?この古代ローマで、半導体が半神半獣の脳の中にあるのよ!

 エミーが知りたがるので、ざっと半導体とかCPUの説明をしてやる。

「絵美、そんな未来の代物が、なぜ、この古代の半神半獣の頭の中に入っているの?」と聞かれた。私だってわかりゃしないよ。

 ムラーが捻っている。

 それから、ムラーとパシレイオスと私は、アヌビスの胴体を解剖していった。脳以外で、このガラス球のようなものはなかった。つまり、脳内以外は、これは生物だ。信じられないが、生物だった。

「う~ん」とムラーが唸る。「こりゃ、ちょっと考えないとな。まあ、これまでだ。パシレイオス、屍体を縫っておいてくれ。それで布でくるんで、ナルセスとアブドゥラと一緒に埋葬しておいてくれ。この中にあったものとか、パシレイオス、誰にも言うんじゃないぞ」と彼に言う。

 ムラーは、ガラス球を持って「絵美、ご苦労だった。さあ、行こうか」と言う。なにがなんだか、私にはわからない。ムラーもまだよくわかっていないようだ。

「昼飯前の行事にはちょうどいい。絵美、昼飯前にベッドに行こうか?」ととんでもないことを言う。
「ムラー、あなた、こんな後、セックスするつもり?」
「あれ?したくないの?昼飯前の運動をしないと」
「あ~、信じられない」


A piece of rum raisin - 単品集


ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編1

ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編2

ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編3

挿入話第7話 絵美と洋子、1983年1月15日/1983年2月12日


登場人物

宮部明彦 :理系大学物理学科の2年生、美術部
小森雅子 :理系大学化学科の3年生、美術部。京都出身、実家は和紙問屋
田中美佐子:外資系サラリーマンの妻。哲学科出身

加藤恵美 :明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、心理学科専攻
杉田真理子:明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、哲学専攻

森絵美  :文系大学心理学科の2年生
島津洋子 :新潟出身の弁護士


シリーズ「A piece of rum raisin - 第1ユニバース」

第1話 メグミの覚醒1、1978年5月4日(火)、飯田橋
第2話 メグミの覚醒2、1978年5月5日(水)
第3話 メグミの覚醒3、1978年5月7日~1978年12月23日
第4話 洋子の不覚醒1、1978年12月24日、25日
第5話 絵美の覚醒1、1979年2月17日(土)
第6話 洋子の覚醒2、1979年6月13日(水)
第7話 スーパー・スターフィッシュ・プライム計画
第8話 第二ユニバース
第9話 絵美の殺害1、第2ユニバース
第10話 絵美の殺害2、第2ユニバース
第11話 絵美の殺害3、第2ユニバース

シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)-第4ユニバース

第一話 清美 Ⅰ、1978年2月24日(金)
第一話 清美 Ⅱ、"1978年2月24日(金)1978年2月27日(月)
第二話 メグミ Ⅰ、1978年5月4日(火)
第三話 メグミ Ⅱ、1978年10月25日(水)
第四話 メグミ Ⅲ、1978年10月27日(金)
第五話 真理子、1978年12月5日(火)
第六話 洋子 Ⅰ、1978年12月24日(土)

 ●クリスマスイブのホテル・バー
 ●女性弁護士
第七話 絵美 Ⅰ、1979年2月17日(土)
 ●森絵美の家
 ●御茶ノ水、明治大学
 ●明大の講堂
 ●山の上ホテル
第八話 絵美 Ⅱ、1979年2月21日(水)
第九話 絵美 Ⅲ、1979年2月22日(木)
第十話 絵美 Ⅳ、1979年3月19日(月)1979年3月25日(日)
第十一話 洋子 Ⅱ、1979年6月13日(水)

メグミちゃんの「ガンマ線バースト」の解説

マルチバース、記憶転移、陽電子、ガンマ線バースト


シリーズ「雨の日の美術館」


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シリーズ「アニータ少尉のオキナワ作戦」

シリーズ「エレーナ少佐のサドガシマ作戦」

A piece of rum raisin - 第3ユニバース

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フランク・ロイドの随筆 Essay、バックデータ

弥呼と邪馬臺國、前史(BC19,000~BC.4C)


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