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マイナスを集めてプラスを生み出すチーム力

こんにちは、ビートオブサクセス(BOS)スタッフのナカです。

BOSが企業向けに行っているチームビルディング研修では、ビジネスの様々な要素や場面を、ドラムサークルのアクティビティにメタファー(比喩)として取り込んでいます。

メタファーはドラムサークルのファシリテーターが明示的に伝えることもあれば、活動を通して参加者がご自身で気づかれることもあります。

今回は、そんなメタファーの例をご紹介したいと思います。考え方や捉え方はそれぞれの企業や参加者の状況・状態にもよりますし、普遍的な唯一の正解はありませんので、あくまで個人的な解釈の一例としてお読みいただければ幸いです。

大きな音と小さな音

チームビルディング研修で使われるドラムサークルのアクティビティの一つに、ファシリテーターが手を上げたり下げたりするジェスチャーに合わせて、音を大きくしたり小さくしたりするというものがあります。

単純なアクティビティであることもあり、様々な場面や目的で使われますが、今回は音の大きさそのものに注目してみたいと思います。大きな音は出せるだけ大きく出す、小さな音は聞こえるギリギリの小ささで出す、ということを目指すということにしましょう。

ドラムサークルで使う打楽器は、少々乱暴に単純化すれば、基本的には強く叩けば大きな音が、弱く叩けば小さな音が出ます。

そこで、できるだけ大きな音を出すには、できるだけ強く叩けばよいことになります。人が叩ける強さには限界がありますので、これ以上は出せないという音の大きさはだいたい決まってきます。

小さい音を出すのは難しい

一方、小さな音はどうでしょうか? 聞こえるか聞こえないかのギリギリということで、小ささは決まってきます。難しいのは、その小ささの音を出すことです。

試しに近くにあるもの、ペンや手など何でも構いませんので、叩いてみてギリギリ聞こえる小さな音を出してみてください。かなり力加減が難しいうえに、音がしているのかしていないのかの判断も難しいと思います。

それでも自分一人で試すときはまだましです。力加減の調整も、聞こえるかの判断も自分一人で完結します。

ところが、ドラムサークルでは、数人から数十人、多い時には100人以上が参加します。参加者全員でできるだけ小さい音を出そうと思ったら、100人なら100人の音が合わさったときに、ギリギリ聞こえる小さな音を出さなければいけません。

ということは、一人ひとりが出す音は、それだけを聞いても聞こえないくらい小さな音です。自分の出す音は聞こえないほど小さいけれど、全員の音が集まったらギリギリ聞こえる音を出す。難しさが容易に想像できるのではないでしょうか。

しかし、ここで重要なことは、出すのが難しく、単独では聞こえないほどの小ささの音であっても、音を出さなくて良いということではないということです。全く音を出さないと何人集まっても聞こえる大きさにはなりません。ですので、自分でも出ているかどうかわからない大きさでも、音を出すことが重要です。

見えない成果が集まって大きな成果を生む

ここで、この聞こえない音のビジネスにおけるメタファーについて考えてみましょう。

チームで仕事をしていると、一人ひとりの業務は、それだけでは十分に成果が認識できないことも多いと思います。これが先ほどの聞こえない大きさの音に当たります。

単独では成果も感じられず、意味を見出すのが難しいことも多いですが、そのような小さな仕事が集まって、大きな成果を生み出せるわけです。

聞こえないほど小さな音が集まって大きな聞こえる音になるように、成果が感じられないと思われるような小さな成果が集まって大きな成果を生むのです。チームで仕事を行う目的はここにある、と言えるかもしれません。

このような小さな仕事の重要性をチーム内で相互に認識することで、心理的安全性も確保でき、大きな成果を生み出せるチームになるのではないでしょうか。

プラスの大きさの音、マイナスの大きさの音

ここまでで今回お伝えしたいことは全てですが、おまけとして、同じことを少しだけ難しい角度から見たお話を。ご興味のある方はもう少しお付き合いください。

音の大きさを数値で表すのに、dB(デシベル)というものを使うことがあります。建築現場の電光掲示板などで、騒音の大きさを表すのに使われているのを見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

人が聞こえるギリギリの大きさ(小ささ)を0デシベルとして、これよりも大きい音、つまり人が聞こえる大きさの音はデシベルの値はプラス、これよりも小さい音、つまり人の耳には聞こえない大きさの音は、デシベルの値はマイナスになります。

マイナスからプラスを生むのがチーム力

ここでドラムサークルの話に戻りますと、例えば100人の音を合わせてギリギリ聞こえる大きさの音を出すというのは、100人の音を合わせて0デシベルの音を創り出すということです。

一人ひとりの出す音は、単体では人の耳には聞こえませんので、マイナスのデシベル値になります。つまり、一人ひとりの出すマイナスの大きさの音が合わさると、ゼロやプラスの大きさになるのです。少し理解し難いですが、デシベルは単純な足し算ができないのでこのようなことが起こります。

これをチームとのメタファーで考えると、一人ひとりもしくは一つひとつは成果の上がらない、ともするとリソースを無駄遣いしているマイナスの仕事のようにみえても、それが集まるとプラスの成果を生み出すわけです。

もちろん、方向性を誤った仕事や努力は本当にマイナスになり、どんなに集めてもどんどん悪い方向に進んでしまうだけです。しかし、あるべき方向の仕事や努力であれば、一つひとつはマイナスの大きさの仕事であってもチームにとって必要なものであり、それらが集まって大きなプラスの成果が得られます

数値化できても測れない

ところで、デシベルは単純な足し算はできませんが、計算をすることはできます。計算方法の説明は省きますが、例えば2人の音を合わせて0デシベルを出そうと思ったら、一人当たり-3デシベルの音を出す必要があります。全体で10人なら一人当たり -10デシベル、全体で100人なら一人当たり -20デシベルの音を出す必要があります。

このように数値化はできるのですが、そもそもマイナスの大きさは人間の耳には聞こえません。聞こえない範囲で -3デシベルだ -10デシベルだと言っても、どれくらいの力加減で叩けばよいか分からないですよね。

数値化はできても、知覚できないほど小さいので測れない。ではどうするか? たとえマイナスの大きさであっても、音や成果を生み出しているということを、お互いに信頼すること。強いチームを作るにはこれが大事なのではないかと思います。

●ビートオブサクセス(BOS)