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#190_【スタディツアー】国境の島で学ぶ意味 -「島」編-

前回から2回に分け、「国境」と「島」をテーマに、対馬に来たらどんなことを学べるのか紹介しております。

今回は「島」編です。
日本は島国と言われるものの、数時間で一周できるとか、端から端まで1日で移動できる島ってどのような空間であるか、実際に生活したことがないとなかなかイメージが湧いてこないと思いますので、早速紹介していきたいと思います。


交通、物流

対馬には航空路もありますが、島の生活には船が不可欠です。
フェリーに乗船しますと「乗客がこれしかいないのに採算が取れるのだろうか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、フェリーで運ぶもののメインは人ではなく荷物です。
対馬の場合、よその離島に比べると欠航が少ないですし、何日も連続することはまれですが、フェリーが欠航しますと物が入ってきません(スーパーなどへの納品や宅配便など)から、生活への影響が目に見えて分かります。逆にいいますと、日本のハジッコにいても、ネット通販で買った商品が数日で届くのですから、日本の物流のありがたみを感じます。

では、道路網が整備され、トラック物流が幅を利かせている本土ですと、海上物流は関係ない話でしょうか。
まったくそのようなことはなく、最近ですと2024年問題が浮上したことにより、海上輸送が見直されはじめている情勢になっています。
そして、日本の貿易量(輸出入合計)の99.6%(2022年国土交通省、トン数ベース)は海上物流が占めています。ですから、スエズ運河でタンカーが事故起こして立ち往生したとか、ソマリアで海賊が出没したとか、パナマ運河が水不足で大型タンカーが通れなくなるかもしれないという話題がお茶の間のニュースでも流れることがありますが、これらも、商社や投資家にしか関係ない話ではなく、一般消費者でもとばっちりを受ける可能性があります。

【島の物流を支えるフェリーです。】

船があまり馴染みのない乗り物になっているという話はありますが、フェリーは輸送距離が長距離になるほど威力を発揮します。中には到着までに半日以上かかる航路もありますので、夜行便が設定されている航路もあります。
そのような中でも航路の安全を守らねばならないわけですから、灯台をはじめとする航路標識も発達してきました。
ちなみに対馬は、朝鮮や中国への動線となる場所ですから、1894(明治27)年に三島(みつしま)灯台と神埼(こうざき)灯台が設置されました。
某灯台女子によりますと「島はボーナスステージ」というくらい、たくさん灯台があるのだそうです( *´艸)。

【対馬で最初に点灯した三島灯台です。】
【こちらは対馬最南端の神埼灯台です。】
【新旧の豆酘埼灯台です。手前の旧灯台は1909(明治42)年建造の構造物です。】
※現在は灯台ではなく標柱に分類されます。

産業

島の主要産業といえば、ほとんどの島では漁業になるかと思います。
(主要産業が漁業でない島も、逆に興味深いですが…f^_^;))

対馬は漁場としても、養殖漁場としても豊かな環境で、様々な漁法で数多くの魚種が水揚げされます。

【定置網漁です。】
【水揚げの様子です。】
※上の写真とは違う場所です。
【生け簀の養殖マグロにえさやりです。】

しかし、地球環境の変化により海藻がなくなる磯焼けという問題や、獲れる魚種の変化なども起こっています。

【磯焼けした海の中です。】
【海藻を大量に食べる魚を、刺し網で捕獲しています。】
【捕獲した魚を美味しく食べられる惣菜にして、磯焼けの普及啓発活動をしています(肴やえん)。】
【小学校の総合学習でひじき養殖の苗付けをしています。】
【漁業の現場を紹介するツアーも行われています(丸徳水産海遊記)】

このように、様々な角度から海のことを学べるメニューをご提案できます。

その他の産業については、島の地理によって特徴が現れてくるかと思いますが、対馬の場合は、9割が山で農地がほとんどありませんので、林業や原木しいたけの栽培が盛んです。

【対馬産のしいたけは全て原木しいたけです。】

そして、これは多くの島で共通かと思いますが、島外との仕入や出荷には輸送コストがかかりますし、島の中における市場規模も限られていますので、野菜などを自給自足したり、本土ではお金を払うのが当たり前のサービスを自前で解決したり、ということもあります。

くらし

よく「島は日本の縮図」とも言われますが、島の暮らしってどのような感じでしょうか。

教育

離島では学びを活かせる環境がない、進路の選択肢が限られるといった話が長らく言われてきましたが、ICTの普及により変化が起こりつつあります。
対馬では、インターネットの高速化がまだ始まったばかりですので、もう少し時間はかかりそうですが、教育機会の均等化に近づけられると思います。
むしろ、離島には都会にはない学びの題材や現場がたくさんありますので、捉え方次第では、交流やアドバンテージが生まれるかもしれません。

【GIGAスクール構想の前から行われていた遠隔授業の実験の様子。】

医療

島は、少子高齢化が全国に先んじて進んでおりますので、課題も本土より先に顕在化しています。医師不足により診療休止の科があったり、救急対応の範囲が広域化していたりなど。
色々と制約のある環境下で厳しい状況に直面していますが、そのような状況でも医療が継続できるやり方を模索する医師の方や、島外から離島医療を学びに実習に来られる方もいらっしゃいます。

【島内の総合病院のひとつである対馬病院です。】
【予防医療を啓発する取り組み(出前授業)。】

少々ネガティブな話になってしまいましたが、いずれ離島以外の地域でも他人事ではなくなると思いますので、不意にその時を迎えるよりも、あらかじめ直視して考える機会を作っておいたほうが良いかもしれません。

※教育や医療がテーマの場合、関係者様との調整が必要になりますので、依頼目的などをお伺いいたします。予めご了承ください。

海を介して伝わってきたものが…

島は海を隔てて閉ざされていますので、遅れているとか、取り残されているとか言われることもありますが、海を介した伝わってきたものが、島の中で独特な発展を遂げることもあります。

【大陸から対馬に渡ってきて独自の進化を遂げた「ツシマヤマネコ」。他にも対馬にしか分布しない動植物がたくさんあります。】
【7月に行われる「地蔵盆」は関西から伝わってきた風習という話があります。】
【対馬の郷土料理「ろくべえ」です。黒っぽい麺はさつまいもを発酵、乾燥させて作る「せん」という食材が原料です。】
【石屋根倉庫の軒先で「せん」を作っている様子です。考案された経緯は分かっていませんが、対馬にさつまいもが入ってきたのは江戸時代と言われています。】

島と一口にいいましても、対馬のように国がひとつできるくらいの大きい島もあれば、徒歩1時間で一周できる島もあり、広範囲に交流が行われた島もあれば、社会的な事情により外部との関係を遮断された歴史を持つ島もあります。
それぞれの島が持つ歴史を、地理や歴史から紐解いていきますと、見える世界が大きく広がると思いますので、ぜひ一度「島」に学びに来てくださいo(^-^)。


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