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#179_【まちあるき】トマソンをさがしに

前回書きはじめた「超芸術トマソン」に関する書評の続きです。

いま一度、「トマソン」の定義をおさらいしましょう。

おそらく超芸術の中の一部門です。正しくは、「不動産に付着していて美しく保存されている無用の長物」ということになります。

超芸術トマソン/赤瀬川原平 P26

かなり広範囲にわたる定義で、分類も多岐にわたりますので、具体的にはこの後紹介しますが、釣りに行って「ボウズ」だったら嫌いになってしまうのと同様、「トマソン」も探しに行ったのに見つからなかったら気分が下がりますので、まずはどのようにすれば見つけられそうか、考えていきましょう。

トマソンというのは古い街の様相が悶えながら新しい町に変貌していく、その軋みの中にポツン、ポツンと生まれて、そしていずれは消えていきます。

超芸術トマソン/赤瀬川原平 P62

先日「コテンラジオ」に対する感想を書きながら、「当時の価値観を考慮せずにいまの価値観を当てはめようとしたり、出来事を結果から逆算するロジックで解釈したりするのは反則である」という、歴史に向き合う時の前提を書きました。

しかし、「トマソン」に対して当てはめてはいけません。

芸術は不変でしょうが超芸術(トマソン)はその日のコンディションで表情が変る。

超芸術トマソン/赤瀬川原平 P133

超芸術というのはただひたすら発見するだけですが、発見もまた才能であり 個性であるというのがよくわかります。

超芸術トマソン/赤瀬川原平 P284

変化が構成要素になることや、発見者の才能により見え方が変わってくると考えますと、文化財や美術品よりも廃墟に近しいと考えて良いと思います。
「以前は●●だったものが、時が経って××なり、現在・・・な姿になっている」と、そこには様々な足し算や引き算がなされた積み重ねがありそうです。過去には普通に機能していたものが、ある時ハシゴを外されて無用なものになったり、無用だから存在を消されたはずだったものが、何かの拍子で表に出てきたり。
そして、前回の記事で紹介しました「麻布谷町」の再開発のように、モノ単体を超えて、変化の過程そのものが「トマソン」になってしまうこともあります。

その中では、当時の価値観がどうだったとか、いまの価値観だけで語るなとか堅苦しく考える必要はなく、むしろズレて組み合わされたギャップからわくわくや新しいものが増殖される、それが「トマソン」なのだろうと思います。
所詮は無用の長物ですし…(゚∇゚;)☆\(-_-;)。

芸術というのは役に立つ有用な物品であります。生活的には役立たずでも、芸術的に役に立つ。しかし超芸術というのは芸術的にも役に立たない。世の中の全方位に向かって役に立たない物品であります。

超芸術トマソン/赤瀬川原平 P140

さて、社会現象レベルに発展していった「トマソン」ということで、「超芸術トマソン」以外にも、数冊関連本が出版されています。
ひとくちに「トマソン」といっても色々なカテゴリがありますが、ここから先は「トマソン」の写真満載の「トマソン大図鑑」無の巻・空の巻を参考にしながら、私がまちあるきで見つけた「トマソン」を一気に紹介していきたいと思います。

【トマソン大図鑑です。】
【まずは復習で、高所ドアです。】
【固い岩だったのでしょうか。「でべそ」になっています。】
【ブロック塀に表札でしょうか。「ウヤマタイプ」の変態進化形です。】
【裁判所の境界標が「生き埋め」になっています(角に注目!)。】
【「地層」のような石垣です。】
【地殻変動著しい「地層」です。】
【川端に生える「もの喰う木」です。】
【「蒸発」その1】
【「蒸発」その2。「無言看板」とも言うそうです。】
【釧路の「非情階段」です。不法侵入されないよう1階はわざと切ったのでしょうか。】
【「無用門」です。知っていると、実は城の石垣を観察するとき役立つかもしれません。】
【「無用橋」です。暗渠だとしたら、隣のお店も暗渠の上に立つのでしょうか。】
【「よりあい処つしま」(博多)の近くで見つけた「原爆タイプ」です。】
【「内面」が表れました。】

キャプションに地名の記載がないものは、すべて厳原で撮影したものになります。意外と撮れ高が多く驚きました。
なぜなら、赤瀬川先生が言語化されていますが、トマソンは都市部ほど見つけやすいからです。
まぁ、厳原は対馬の大都会ですが…(゚∇゚;)☆\(-_-;)。

トマソンとは人工空間に発生する歪み(ひずみ)のようなものであり、都市の不動産の活断層に沿ってあらわれる、したがってトマソンは都市の中でこそ発見されるものである。ところが、今治市からの報告を見たりすると、田園風景にもトマソンがちらりとのぞき、都市構造が粉末となって田園にまで飛び散っていることを知るのである。

超芸術トマソン/赤瀬川原平 P323

都市という物件は、大自然に発生した人類による一時的な現象であり、いずれは崩壊してまた大自然の中に埋もれていくのであった。

超芸術トマソン/赤瀬川原平 P340

ちなみに、以下の写真は、おそらく「トマソン」に分類されません。

【「アタゴ」かと思いましたが、いまでも境界標の役目を果たしていそうです。(上県灯台)】
【白昼堂々と鎮座している「アタゴ」かと思いきや…】
【夜になると、ちゃんと仕事をしています。】

いかがだったでしょうか。
書きながら、久々に路上観察の旅に出たくなってしまいましたが、そんな方がひとりでも増えましたら幸いですf^_^;)。

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