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持続可能な梨の芯のシロップ(のどが潤う)をつくりませんか?

 9月の末、待ちに待った新高梨のハネの販売が解禁になり、さっそく、夫に買ってきてもらいました。
 だってねー、3個でたったの1000円で、運がよかったら1個1000円以上するような贈答用と遜色ないレベルの味わいが楽しめるわけですから。さらに運がよかったら、おまけをつけてくれたり、値引いてくれたりするし。
 スーパーで買わないのって、ホントに楽しい!

 さて、今年は梨本体を食べるだけでなく、梨の芯のシロップを作るのもてぐすねひいて待っておりました。
 というのも、数年前、スーパーの産直コーナーで買った、梨の果汁を煮詰めたエキスがめちゃくちゃ喉によくて。でもさすがに、醤油みたいに黒くなるまで煮詰めるとか、必要な梨の量や労力を想像すると、自作できそうにありません。そこで去年、代用品として梨の芯のシロップをつくってみたのですが、意外とよく効いたんですね、これが。
 今年の4月あたまにかかった謎の呼吸器の病気も、これで症状が緩和したので、インフルと新型コロナのダブル流行が予想される今年は、是非とも多目に作って確保したい、と考えていました。

 

・◇・◇・◇・

 

 ①期待できる効き目

 秋冬、空気が乾燥してくると、朝目覚めたとき、喉がからからになっているのに悩まされてきました。だけど、寝る前に梨のエキスをなめておくと、翌朝起きても、喉がしっとりと潤っています。ティースプーンの先、3分の1くらいで、なにかの薬ではないか、というくらいキレのいい効果が出ます。
 はじめは梨で喉の調子がよくなるとか、ありえんやろ、と思いました。でも、調べてみると、漢方では梨は、「肺を潤す作用がある」とされているそうで、しかも中国では、梨のエキスは咳どめとしてわりとポピュラーらしい……。

 今回の梨の芯のシロップは、梨のエキスほどこゆくないので、エキスのようなキレのいい効果を期待するのは、さすがに無理。ですが、毎日少しでも口にすることで、喉が潤い、調ってくるかんじがしてきます。
 ベースが調って、潤う力が底上げされるおかげか、梨の果実を食べた翌日は、とくに喉の潤いを感じます。また、今日は潤ってないなぁ、と感じるような日も、ティースプーン1杯で喉のがさがさが落ち着いてきます。

 とはいえ、なにせ、まだ、自分でつくって自分で食べて、人体実験中(2年目)なので、みなさんもぜひ、ご自分で試してみてください。

 

 ②持続可能な梨の芯のシロップ、の作り方

 作り方はいたって簡単です。
 簡単ですが、非加熱で作るので、各手順で清潔を保つことは気をつけてください。

 ①梨の皮をむき、芯をのけ、食べる。
 ②を集めて重さを量る。
 ③広口の保存用ビンに入れる。
 ④さらに、芯の重量の1.5倍の重さのグラニュー糖を入れる。
 
 ⑤一晩でかなりの水分が出る。以後、毎日1回は、ビンを回して砂糖が水分とよく混ざるようにする。
 ⑥何日か様子を見て、芯から十分に水分ができったら、完了。風味が落ちる前に、芯を取り出す。
 
 
 ※砂糖を大量に使うのは、糖度を高めて保存性をよくするためです。そもそも期待しているのが健康に対する効果なので、味よりも保存性を優先しています。また、このくらい大量に砂糖をつかうと、果物の発酵も抑制されるようです。
 季節がら気温が低いので、砂糖は撹拌しても溶け切りません。
 
 ※より安全性を高めるためには、梨の芯をあらかじめ焼酎で洗ったり、最終的には出てきたシロップをあつめて加熱する工程も必要かと考えています。

 さて。

 材料が梨の芯、なのは、「梨を砂糖漬けにして得られるシロップでも、喉を潤す効き目があるのか?」を実験するために、もったいないから芯をつかった……のがそもそものわけなんですが、なにせ、梨自体が水分の多い果物であるうえに、デカイのがウリの新高梨を使ってるわけだから、芯もデカイ。
 結果、しみ出てくる水分もビックリするくらい多く、梨3個分の芯でジャムのビンがまけまけになるくらいシロップが取れました。
 だったら、どうせごみになる芯をシロップに使って、身はそのまま美味しく食べちゃったほうが、絶対いいじゃないですか!

 だから、梨の芯を材料にしました。

 芯がごみになるのは、人間が使わないからです。しかも、ごみになるような手放しかたをするから、どうしようもなくごみになる。だけど、使えばごみになりません。使えば「生きるために必要な材料」になります。
 ていうか、地球上にはそもそもごみはありません。だって、ある生物にとって不要になったもの(食べ残し、排泄物、死体等)でも、それが別の生物にとっての食べ物になったり、住みかの材料になったりするのですから。
 不要になったあとで誰も使ってくれないし使えないし、害にすらなる「ごみ」(例えば、マイクロプラスチック)を大量に作る存在は、おそらく人間ぐらいです。

 自然の施してくれた恵みの一部を、当然のようにごみにする。「使ったら次に回す」という、地球上の暗黙のルールを守らず、ごみになるような使い方、捨て方をする。ことに最近の人間のそんな「生態」は、生態系という生き物同士の連携システムのなかでは、異常です。
 だからぜひとも、不要物である梨の芯を、健康に役立つものへと逆転、いや、「最後の最後まで、誰かの食べ物である」というもとの姿にたちもどらせてほしいと思います。
 タイトルにかかげた「持続可能な梨の芯のシロップ」という命名は、そんな願いをこめています。

 

 ③風味

 味については……死ぬほど甘いです。そもそも、甘いのがあたりまえの新高梨に砂糖を大量に投入するわけですから、当然の結果です。
 梨自体が香りがうすい果物なので、香りもそれほどありません。そのうえ、そもそもうすい貴重な香りが、ビンのふたを開ければ開けるほど飛んでいくので、開閉の回数を最小限にする気遣いが必要です。
 なので、この梨の芯のシロップに「梨っぽいなにか」を期待するのは、ちょっと無理があります。期待するなら「喉にいい薬膳的ガムシロップ」というくらいが妥当かとおもいます。使い方も、薬としてひと匙なめるのでなければ、紅茶やヨーグルト、無糖のシリアル類にかける変わり種の甘味料、くらいでいいとおもいます。

 

 ただ、今年最初に買ってきた梨は、例年より甘味がうすく、酸っぱめの大ハズレだったのですが、シロップにその酸味が移って、絶妙な味わいになりました。

 料理次第で「生食に向かない=市場での価値が低い」ものが美味しくなる、という逆転がおもしろい。また、酸っぱいからこそ、「砂糖を大量に用いる」という冷蔵庫いらずのエコな保存法に向いている、という逆転もおもしろい。
 こんなところでも、今の資本主義が前提としている価値はなんなのか、自然の施しをまっとうに評価できる代物なのか、考えさせられます。

 また、そのままでは美味しくないものを美味しくするためには「料理」が必要なのですが、生活から「料理」するゆとりがどんどん奪われていく=工夫次第で食べられるものをどんどんごみにするしかなくなる、ではないのか?……持続可能性を考える上で、はずしてはならない視点だとおもいます。

 

 とにかく、この梨の芯のシロップをより美味しく口にすることを望むなら、①あえてハズレの梨を使う、もしくは、②レモンをひと切れいっしょに漬ける、③酢や酸味がある果汁(柚子とか?)を加える、などのひと工夫が考えられます。
 また、梨感を高めるためには、なにか追い梨的な工夫も必要だと考えています。

 

 ④去年の不満、今年の試み

 そもそも去年は実験的につくったので、どうしても不満が残りました。なので、今年はすこし手順をふやしてみています。

 去年はとりあえず作れたらいいや、みたいなやりかただったので、

《去年の手順》
 
 ①梨の芯グラニュー糖をビンに詰める。
 ②別の日、新しい梨の芯を、グラニュー糖といっしょに追加する。
 ③とにかく、梨を食べるたびに追加していく。
 ④以下同文。

 とまあ、こんな感じ。
 これでもシロップは取れたのですが、以下の点が不満でした。

 ・後から追加した芯は、脱水が不十分。
 ・後から追加した芯は、茶色く変色が激しい。

 つまり、最初にビンに入れた芯は、砂糖と直接接しているので、強力に脱水の作用がはたらき、これでもか、というくらいみごとに縮みます。だけど、追加で投入した芯は、すでに出来たシロップに浸かることになるので、砂糖も追加するとはいえ、脱水の作用の効きが弱いようなのです。
 また、溶け残った砂糖に埋もれていた芯は、比較的白さが保たれていたので、色味についても、脱水についても、最初から最後までしっかりと砂糖に接触させることがコツになりそうです。

 それと、用意したビンがちいさすぎたので、なにかと作業が不便でした。これも反省。

 

 そこで今年は、まず、インスタントコーヒーのいちばん大きい空きビンを用意し、こんなふうにしてみました。

《今年追加した手順》
 
 ①しみ出たシロップは、別のビンに取り分ける。溶け残った砂糖は残す。
 ②先に漬けた芯はそのままで、新しい芯を追加する。
 ③追加するグラニュー糖の半量程度を入れる。ビンをふって、新しく追加した芯にグラニュー糖をよくまぶす
 ④残りのグラニュー糖を入れる。このとき、なるだけ芯がグラニュー糖のなかに埋まるようにする。

 ※もうひと手間かかってもよいなら、別の器にグラニュー糖をとり、そこでグラニュー糖を芯にまぶしてからビンに入れる、というやり方もあります。
 ただし、作業後のグラニュー糖は、芯の水分が移るので、もたもたした感じになります。

 現在、新高梨6個の芯を漬けていますが、去年と比べたら、全体的によく縮んでいるように感じられます。ただ、去年のものはもうないので、あくまでも、そういう印象、ということになります。
 色については、あきらかに今年のほうがきれいです。全体的に茶色味がうすく、その茶色も、「きれいに枯れてきた」という印象です。ですが、変色の進行を完全に止めるのはむつかしいようです。また、熟しているほど種の周囲が濃く茶色くなるのはどうしようもないようです。

 ビンについては……現在、芯と溶け残った砂糖で、ビンの4分の1~3分の1くらいになっています。空間が大きく残っているのは一見ムダですが、おかげでビンをふって砂糖をまぶす作業がやりやすいです。
 また、菜箸等を使わずに溶け残った砂糖をシロップのなかに泳がせるためには、ビンをかたむけながら回転させないといけません。大きく傾斜がつけられるので、砂糖がよく流動し、まぜやすいです。
 シーズン中、どれだけ芯を漬けるかにもよりますが、たくさん作るなら最初から大きいビンを用意することをおすすめします。

 

 ⑤持続可能な梨の芯の果実酢、も作れる!

 さて、水分をしぼりきった梨の芯ですが、これもさらに再利用できます。
 自分の水分を引き出す一方で、砂糖もガッツリ染み込んでいるわけですから、紅茶にひたしておくと、甘味が出てきて砂糖の代わりになります。
 さらにもったいない、とかんじるひとは、ひたしたあとで、種や硬いところに気をつけながら食べちゃうことも可能です。

 ですが、もっと欲張って楽しみたいひとには、果実酢をおすすめします。これはもう、ほんとに簡単!

 ①出来たシロップをビンから取り分けて、梨の芯を残す。
 ②をたっぷりと注ぐ。
 
 ③数日様子を見て、酢に甘味が移ったら、OK。
 ④減ってきたら、酢をつぎたして楽しむことも可。
 
 ※溶け残った砂糖を取りのけるか、残していっしょに酢に溶かすかは、ケースバイケースでお好みで。

 やはり梨の風味がかすかなのは残念なポイントなのですが、酢に漬けても、喉が潤う効果が残ってます。
 それと、縮んだ芯が、酢を吸ってふたたびもとの大きさに戻るのを目撃するのは、純粋に理科の実験として面白いです。

 水、湯、サイダー、紅茶、その他、お好みのもので割って楽しみます。酸っぱかったら、砂糖、蜂蜜、ジャム、果物に合いそうな甘いものなんでも足してチャレンジしてみてください。
 意外かもしれませんが、甘酒も合うんですよ! 甘酒は果物系との相性がいいんです。
 自分としては、薄めの紅茶で割ったブドウジュースに混ぜるのがいちばん好きです。

 

 もともとは、梨の芯のシロップが意外によく喉に効いたので、どんどん楽しんでいたらインフル流行本番前になくなってしまい、窮余の一策で「残りの芯から酢で出汁をとる」ことにしたのですが、これがわりかしアリでした。
 しかも、最初にガッツリきかせた砂糖のおかげか、果実酢がほとんど発酵しません

 去年の梨の芯の果実酢は、減るたびに酢をつぎたし、さらに、実家に眠っていた、20年前の蜂蜜漬けのカリン(煮しめすぎた醤油の煮しめというか、地獄の食べ物みたいな色になっている)も追加して、現在にいたっています。ひと夏過ごしましたが、風味が落ちた感じもなく(味はもちろん薄くなったけど)、発酵している気配はありません。
 今年、無農薬のブルーベリーが手に入ったので、梨の芯同様の段取りでやってみました。室温で放置しても、果実酢はいまのところ発酵していません(シロップは、果実を引き上げるタイミングが遅れて、風味が落ちてしまったので、念のために冷蔵しました)。

 生の果物をつかう保存食は、どうしても保存中の発酵がネックになるのですが、シロップからの果実酢、という一度で二度美味しい作り方をすると、うまく回避できるのかもしれません。
 今年はさらに、リンゴの芯でも、シロップと果実酢を作ってみようかとたくらんでいます。リンゴの芯も、めちゃ甘い出汁が取れるんです!

 

 果実酢に使った芯自体は、酢を継ぎ足すたびに砂糖を放出して、たっぷり酢を吸って、酸っぱくなっています。無理に食べなくてもかまいませんが、私は薄めの紅茶にひたして酸っぱい出汁をとったあと、喉の薬と思って食べています。案外梨らしい食感が残っていて、種の周囲以外は食べられますが、味はほぼ罰ゲームです……ご想像あれ。
 それに、たとえ味が罰ゲームでも、最後まで使いきって食べきってあげた満足感は、なにものにもかえられません。まだ食べられるものを捨ててしまった……という罪悪感一切無しです。豆をとったあとの殻を畑に返すときに感じる、地に足がついた感じ、生き物としてまっとうなことをしている安堵感を感じます。

 これがほんまのギルティーフリーやと私はおもいます。

 

 使用済みで一見ごみでしかないものをさらに使いきり、しぼりきり、食べきる。これが、持続可能な梨の芯の果実酢です。
 たとえばフェアトレードとか有機栽培とか、なにか特別な食材を購入しなくても、持続可能な食のあり方は、「そこにあるごみはホントにごみなのか?誰がこれをごみにしたのか?」と疑うところから考えが深められるし、実践できるんです。
 できたら梨の皮も使ってみたいのですが、これは農薬の影響が心配で躊躇しています(ここでも、人間は口にできるものを毒にしてしまっていますよね)。乾かしたら漢方薬になる、という情報も目にしたので、無農薬のものが手に入るなら、天日干ししてお茶にでもしようかな?

 

・◇・◇・◇・

 

 最後になりますが……

 今回の記事は、謎の呼吸器の病気のときに発したSOSにこたえてくれたみなさんへの恩返しとして書きました。

 病気の原因(ウイルスかなんか?それとも、ひどいアレルギー?)自体は、おそらくほとんど消えているのだと思いますが、主要で深刻な症状だった「肺や気管、咽喉、鼻腔ひっくるめて、呼吸器全体が乾燥する」というのが、勢力が弱いながらもまだ残っているため、元気にはなってきたけど全快ではない状態です。
 8月からは、ストップしていた外出を再開できるところまで改善しましたが、「病院にいったら、かならず3、4日熱が出る」という、あちゃーな状態が続いています……ていうか、病院以外の外出って、結局ほとんどできてません。

 この半年……容態が悪くなってからもう半年たったんですね!……痛感したのは、「からだのなかが調ってないと、外からなにを加えてもダメ」ということです。つまり、今回の謎の呼吸器の病気でいうと、なかから肺自体が自ら潤う機能が壊れていたら、加湿してもマスクしても、効果はしれている、ということ。だって、そもそもわずかな潤いが呼気とともに出ていく一方なのですから。
 だけど、肺の潤う力をガッツリ支えて、勝てる戦いに形勢逆転してくれたのが漢方薬でした。確保した優位を保ち、病気と戦い抜けるよう、肺に潤いを補充してくれたのが、この梨の芯の果実酢でした……シロップのほうは、もうすでになくなってたから。これがなかったら、反転のきっかけがつかめず、もっと長引いていたかもしれませんし、入院していたかもしれません。
 とにかくなかから調えて、調えて、自分でなんとか潤って、わけのわからない病気を押さえつけながら、やっとここまで治ることができました。

 そして、みなさんからのメンタル面での支えが、たたかい抜く馬力を補充してくれました。ほんとうにありがとうございます。
 いくら良い薬があっても、それを口に運び、飲み下す気力がなくなったら、ひとはおしまいなのです。みなさんは、その力をあたえてくれました。

 

 さて、今年の冬は、新型コロナとインフルエンザのダブル流行、という未知の事態に立ち向かわないといけません。経験したことがないから、よい目が出るか、悪い目が出るかも、きてみないことにはわかりません。
 わからないものに立ち向かうには、そいつの正体をあばくしかない。しかしそれは、わたしたち一般市民には無理なはなしで、専門家にゆだねるしかない。そして、専門家がいくら知識を総動員して予想をたてても、「来てみないとわからない」という今回のような場合もある……つまり、今年の冬が、次の冬の予想のための実験データになるってことですよね。

 だけどわたしたちは、自分のからだについてなら、もうわかっていることを足がかりにすることはできます。つまり、「健康な身体には病気は取りつかないし、取りついてもはねかえせる」ということを足がかりにすれば、敵の正体が不明であっても立ち向かうことができるのです。

 どうか皆さん、日ごろの食べ物の工夫で、ウィルスの入り口となる呼吸器を健やかにしてあげてくださいませ。
 そして、これ以上の乱開発が、新しい未知のウィルスを身近なところまで呼び込まないよう、持続可能な社会のあり方にも目を向けてくださいますよう。

 

 

 



 


 

いま、病気で家にいるので、長い記事がかけてます。 だけど、収入がありません。お金をもらえると、すこし元気になります。 健康になって仕事を始めたら、収入には困りませんが、ものを書く余裕がなくなるかと思うと、ふくざつな心境です。