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わたしの仕事 地域包括支援センターの保健師について(後編)



みなさんこんにちは!
日本語パートナーズ・タイ12期に内定したアイと申します🇹🇭



このnoteでは、20代保健師の私アイが、日本語パートナーズになるための過程を主に記録してきました。


日本語パートナーズについて知りたい方は、以下の公式ホームページをご覧ください😊


今回は、日本語パートナーズではなく、私の仕事である地域包括支援センターの保健師についてをまとめた記事になります。


これは後編なので、もしご興味があれば前編からどうぞ!


この記事が、包括保健師について知りたいあなたの一助になれば、こんなに嬉しいことはありません。


さて、前回の中編では、包括保健師の業務について途中まで説明しました。


包括の業務は、大きく4つに分かれています。

① 総合相談
② 介護予防ケアマネジメント
③ 権利擁護
④ 包括的・継続的ケアマネジメント支援


中編では①②を解説したので、今回は③④についてお伝えします。




業務その3 権利擁護


名前のとおりです。
虐待や消費者被害などから高齢者を守るための業務を行います。

消費者被害についての相談は私の地区では殆どないのですが、高齢者虐待への対応は毎月どこかでありますね…

悲しいことですが、皆さんが想像しているよりも高齢者虐待ってずっとずっと身近に起きているんです。 ニュースになってしまうような重大なケースこそ少ないですが、命の危険はない「比較的」軽微なものはどの市町村でも起きています。

管轄地区内で高齢者虐待が起きれば、(場合によってはその日約束していた訪問も延期させていただいて)急いで対応します。

他の市町村が同じ流れかは分かりませんが、虐待通報が包括に直接来ることは少なく、基本的には市から共有がきます。



 例えば私の市では、

A町に住む高齢夫婦。妻に殴られた夫が慌てて警察に通報する
→警察官が家まで来て夫婦の話を聞く
→対応が終わった後、(虐待ではなさそうなケースであっても)警察が虐待通報票を作成
→警察から市へ虐待通報票が届く
→市から、A町を管轄する包括へ共有される

という流れで包括まで通報がまわってきます。


中には「いや明らかにただの夫婦喧嘩やん…」というものもあるのですが、通報を受けたからには事実確認のため必ず動きます。


認知症の親の介護に疲れて叩いてしまった、というケースがあったとすれば、まず子ども側の話を傾聴して寄り添って、介護保険の申請を代行したり適切な介護サービスに繋げたりします。

親を叩いてしまった背景にどんな要因があったのかアセスメントして、金銭的な問題があるなら生活福祉課への相談を適宜勧めますし、より困難なケースだと、市町村や成年後見センターと連携することも。

関係各所と連携して私たち包括が動くのは虐待が繰り返されないようにするため、高齢者が安全安心に生活を続ける権利を擁護するためです。
決して、虐待した人を責めるためではありません。

なので、
「虐待した人へ『あなたのしていることは虐待です』とは絶対に言ってはいけない。責めるようなことは言わない」
と社会福祉士の先輩から学びました。





【おまけ】虐待の種類



余談ですが、虐待には5つの種類があります。

●身体的虐待
殴る、叩く、蹴る、つねる。正当な理由なくベッドや車椅子に縛りつける等。

●精神的虐待
怒鳴る、暴言を吐く、トイレの失敗を嘲笑する、威圧的な態度をとる、誹謗中傷等。

●経済的虐待
生活に必要な金銭を渡さない、年金や預貯金を自分のお小遣いとして着服する、本人の自宅や持ち物を家族が無断で売却する等。

●性的虐待
トイレの失敗に対して、懲罰的に下半身を裸にして放置する等。

●介護放棄(ネグレクト)
入浴や整容などを行わず不衛生なまま放置している、食事・水分を与えない、部屋の掃除をせず劣悪な環境にいさせる等。



上記に加えて、最近では、セルフネグレクトも虐待の一種として数えられるようになりました。


セルフネグレクトとは、自宅で暮らしている高齢者などが、食事や着替え、病気の治療など、本来であれば生活の中で行なうべき行為をしない、あるいはできないために、心身の安全や健康が脅かされる状態を指します。


例えば、
●ゴミが散乱した状態で暮らし続けている
●極端に汚れた衣類を着用したり、失禁しても放置したりしている
●生活に必要な最低限の公的制度・介護・福祉サービスの利用を拒否する
など。

自分(セルフ)を放置(ネグレクト)するということなので、前述のような、警察から市経由で通報がくるということは基本ありません。

ご近所の方から「あの家がゴミ屋敷状態で心配」と相談がくるとか、その人が受診している医療機関から「受診時にとんでもない尿臭がしたし、服も何日も洗っていないようだった。以前はこんな人ではなかったのに」といった情報提供があるとか、そういう経路で包括に情報がきます。

情報がきたらメンバー全員で共有した上で、セルフネグレクト「疑い」としてどう関わっていくか確認します。ただ、事実確認をまだしていないこの時点ではあくまでも「疑い」です。



訪問は、何かあったときのために職員2名以上で。

ご本人も、(ご自分の中では)普通に生活してて、いきなり知らない人が来ると当然身構えます。
なので、敢えてアポ無しで訪問することもあります。


訪問したら、
「はじめまして。突然すみません。市から委託を受けて運営している、地域包括支援センターっていうところからきました。無料の健康相談で、この辺の65歳以上の方がいるお家を回っているんですよ〜。ご自分の体調のことですとか、何かご不安なことはないですか?」

なんて感じで名刺を渡して、(本題である身なりや住環境には一切ふれず、「どこどこから心配の電話があったので」等も言わずに、)まずは信頼してもらうことを第一目標に笑顔でお話しを聞きます。

ここで拒否されれば「そうですよね、突然失礼しました。ではまた来ますね」とすぐに引き下がりますし、もしすんなり心を開いてくれたら話を傾聴して、困りごとを解決するために包括として支援できることを提案していきます。

必要であれば介護保険の申請代行なども行います。

もしご本人の体調が明らかに悪そうだったら、医療職として血圧や脈拍を測って、必要時には救急車を呼びます。






業務その4 包括的・継続的ケアマネジメント支援


ここまで、だいぶボリューミーにお伝えしてきました。皆さん大丈夫でしょうか?
包括の業務、4つ目のこれで最後です。
読み疲れたら一旦休んでくださいね!


包括的・継続的ケアマネジメント支援とは、高齢者にとって住みやすく快適な地域社会にするために、地域で活躍するケアマネジャーや医療福祉の専門職、民生委員などとのネットワークを構築し、地域全体で課題が解決できるように環境を整えていく業務です。

「環境を整えていく」って、なんだか大業に見えますよね。笑

具体的には、
●地域ケア会議の開催
●地域のケアマネジャーからの個別相談対応
●支援困難事例等への指導・アドバイス
等を行っています。


地域ケア会議とは、いくつかの個別のケースの背後にある共通の課題を見つけ出して、関連する課題とかその地域の現状を総合的に判断して、解決すべき地域の課題を明らかにし、話し合う会議です。
  


これ、例示することがとても難しいのですが、

あのケースもこのケースも、認知症の人への対応が周知できていたらもっと良い経過を辿れたかもしれないよね。

→でも、この地域って認知症の人への正しい関わり方を知ってる人(=認知症サポーター養成講座を受けた人)があまりいないし、認知症になった家族を恥ずかしがっちゃう人が多い。

→地域の皆が認知症のことを正しく知って、徘徊してるのかなーとか、それっぽい人を見かけた時の対応とかがちょっとでもできるようになったら、地域全体での見守りが充実すると思う。
そしたら、認知症の人もその家族ももっと暮らしやすい地域になるんじゃないかな?

このようなことを考えて、各地域の課題解決に向けて開催しています。



地域ケア会議には、地域の自治会長や民生委員、福祉推進員、ケアマネさん等をお呼びします。
上の例でいえば、「認知症について、もっと気軽に話し合える町をつくるには」といったテーマで、皆で話し合うワーク等をしています。

開催はだいたい年2回です。
企画書を作って市に提出して、配布資料やパワポ、何をテーマに扱って誰を講師として呼ぶのか、会場の確保等、全て包括職員で行います。

最初に地域ケア会議を知ったときは「え、年2回で地域課題解決とか地道すぎる…」と正直びっくりしたのですが(笑)、福祉や地域づくりに理解・関心のある方(=民生委員さんなど)の意識から変えていくことで、いずれは地域全体が良くなっていくんだなあと今は思っています。


また、地域のケアマネさんが担当している要介護の方で、対応に困っている困難ケースについて相談を受けることもあります。
基本は対応への助言を行いますが、必要であればケアマネさんと一緒にその方の家を訪問して話を伺いますね。

ケアマネさんの中には「なんだかんだ包括には相談しにくいな…自分で解決しなきゃな…」と考える方もいらっしゃるので、地域ケア会議にお呼びするなど日頃から連携することで相談へのハードルを下げて、お互いに相談し合える関係づくりも行います。

このように、包括は地域づくりの役割も担っているので、その業務は多岐に渡ります。




包括保健師の待遇


包括の業務内容、いかがだったでしょうか。

上記の4つ以外にもいろんな業務があって、挙げると本当にきりがないのですが、「ふーん、こんなことやってるのね」って何となくでも分かってもらえたら嬉しいです😊



さて、皆さんがきっと気になっているであろう包括保健師の待遇ですが、

●病棟看護師よりは給料貰えない(夜勤ないから当然)
●給料は、同じ包括でも、運営する法人によって2〜3万円/月の差がある
●年間休日数も、運営する法人によってだいぶ違う(少ない法人だと年休105日とか110日とか…)
●その包括が市町村直営であれば公務員となるため、公務員ではない私の待遇は当てにならない

このことを踏まえて、あくまでも目安としてお伝えしますね。


●年間休日数:120日(年末年始休みの12/29〜1/3を含む)
●有休:法定どおり(希望どおりに消化できます)
●勤務時間:8時間/日、40時間/週
●残業:基本なし
●固定残業手当:なし
●残業手当:あるが、上司に事前申請して許可が貰えないとつかない。事前申請するような事情=緊急訪問での対応が長引く等の理由がないと駄目なので、基本つかない。(ので定時でさっさと帰れる)
●資格手当:あり
●通勤手当:全額支給
●退職金:勤続1年以上であり
●賞与:夏・冬あり。3か月分くらい
●昇給:年1回あり
●社会保険完備
●産休・育休実績あり
●互助会あり

ざっとこんな感じですね。



給料は特別高くはありません。
病棟看護師時代の基本給とほぼ変わらないです。
(看護師さんならなんとなーく想像つくはず、、)

これに資格手当や特別調整手当などがつくので、贅沢はそんなにできませんが普通に生活していく分には困らないかなと思います。

ただ、物価高に対応して給料を上げるとか、そういう配慮は残念ながらありませんね🥹

極力定時で帰りたい、夜勤なしで手取り20万円くらいの給料が貰えれば十分かな、という人には向いている待遇だと思います😎

年休120日で有休も自由に使えるので(毎年100%消化しています)、給料が高くなくても、病棟看護師時代と違って自分の時間が確保できる包括の働きやすさが私は好きです。





包括保健師が向いていそうな人



最後に、これは完全なる独断と偏見なのであまり参考にならないかと思いますが、私が思う「包括が向いていそうな人」の特徴も記述しておきます。


●マルチタスクが丁寧にできる人
●高齢者が嫌いじゃない人(好きじゃなくていいです、嫌いでなければ)
●潔癖症じゃない人
●電話越しでも感じの良い対応ができる人
●相手の人生に興味を持てる人
●事務作業、PC入力が苦手じゃない人
●噛み砕いた説明ができる人


思うまま列挙してみました。が、別にこれに当てはまらなくたっていいんです。

人生一度きりです、ご興味がある方は是非チャレンジしてみてください😊
包括、意外と楽しいですよ!



ここまでお読みいただきありがとうございました😊


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