狂_01:15

00:45。
眠っていた椅子から落ち目を覚ます。
曲を聴き流しても寝付けず、LINEを開き色々な人との過去のメッセージを漁ったり、フォトライブラリーの写真を漁ったりした。

( 色々スクショしてるな )

くすっとわらいを零しつくつくと笑っているとスクロールしていた指先が止まった。
…大嫌いな、元カレからの甘い言葉をスクショしたものの場所で。
何故残っているのだろう。
全て消したはずなのに。
消す。
まだ出てくる。
消しても消しても出てくる。

『 会いたいね 』 
『 愛してるよ 』
『 俺が好きなのはうらだけだよ 』
『 こんなに人を好きになったことないよ 』
『 うらだけが俺の好きな人 』
『 これから先も一緒だよ 』
『 俺の可愛い彼女 』
『 うら以外好きになれないよ 』

消しても消しても消しても消しても消しても消しても消しても消しても消しても消しても消しても消しても消しても消しても消しても消しても消しても。
気色悪くて嘘に塗れた言葉が続いている。
鮮明に残っている。
ぼくのことを女としか見ていなかった。
男の子で在りたかった事を拒絶された。
ぼく以外のコイビトが居た。
性行為を交わそうとしてきた。
重いと言って突き放された。
愛していないとはっきり言われた。
遊び程度にしか思っていなかったと言われた。
綺麗に浮気された。
お前のことを愛してくれる人なんて存在しないと
言いきられた。
…うそつき。
うそつきうそつきうそつきうそつきうそつき。
結局は嘘じゃないか。
甘い言葉を吹っ掛けて、
弄んでいただけではないか。
愛していなかったじゃないか。
認めてくれなかったじゃないか。
突き放したじゃないか。
うそつき。
消去し続けても出てくるスクショ。
何故こんな屑を好きになったのだろう。
何故こんか塵に初恋を奪われたのだろう。
本当に好いていた人への片思いを諦め
彼奴に依存し
本気になったのだろう。
吐き気がする。
叫びたい。
しにたい。
消え去りたい。
しんでしまいたい。
いきていたくない。
この記憶を消したい。


 「 …うそつき。 」


思い返せば彼奴は。
ぼくの病気が判明した時も、
ぼくが風邪を引いた時も、
病んだ時も。
心配なんて概念、欠片も無かった。

ああ、そう。
大変だね。
そっか。

大体これで終わりだった。
だいきらいな彼奴の声が、姿が、表情が、言動が。
フラッシュバックする。

…いやだ
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだきしょくわるい。
きらいだ
だいきらいだ
わらえない。
彼奴のために笑おうだなんて、
なんて、愚かだったんだ。
彼奴のために1年4ヶ月の人生を捧げていたなんて、
とんだ時間の浪費だ。
彼奴のために生きようだなんて、
馬鹿げた発想だった。

しんでほしい。ころしたい。まっさつしたい。
憎しみ、後悔、復讐心、希死念慮、怒り、哀しみ。
全てがぼくを真っ黒に埋めつくした。
なんでぼくは彼奴なんかを
なんでぼくは彼奴なんぞを
なんでぼくはあんなことを
受け入れるが儘、応じる儘。
洗脳され
正解を見失い
自我を捨て
従順になったのだろう。
ぼくの愛情が歪んだのも
ぼくの愛の認識が壊れたのも
全部全部、彼奴のせいだった。

暴力が愛情だなんて
飴と鞭なんかではない。
何故あの時気が付かなかったのだろう。
…しにたい。
殺したい。
殺めたい。
…わすれ、たい。
跡形もなく。

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