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「ココロのキョリ感」のソウシツ

以下、長大な前文が続く。「ここから本文」まで飛ばしていただいて構わない。


現在のところ人類は社会性の獲得により、各個体は肉体的に脆弱な割には繁栄している訳だが、その前提となる「周囲の他人と上手くやっていく」のは未だに難しい。人種、宗教、国家、経済格差など、全ての異質なものの間でトラブルが生じ得る。

王侯貴族による独裁制は自由化運動により打破され民主主義国家が誕生した。しかし、その多くは資本主義を採用したため貧富の差を解決するには至っていない。一方、社会主義という理想的な概念・思想も、壮大なる実験の結果、支配層の腐敗・勤労意欲の低下を回避するには至らず、成功したとは言い難い。

日本国民は現状を反映しているかはさておき、生まれた時から「国民の自由こそ正義」と叩き込まれてきているので軍事政権や独裁国家を否定しがちだが、現在においても世界人口の半数以上は(準)独裁国家に所属している。公的機関の調査ではなく、商業誌『週間エコノミスト』を発刊するイギリスの民間企業エコノミスト・グループ(の傘下の調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット)が発表している民主主義指数なるものがある(実は、この記事を書いていて初めて知った)。その指数に基づき国・地域の順位づけがなされると共に、4つ(完全民主主義、欠陥民主主義、混合政治体制、独裁政治体制)に分類されている。2023年版を見ると、日本はかなり健闘しており16位で完全民主主義である。それに対し米国の順位は意外に思われるかも知れないが29位で、欠陥民主主義に分類されている。30位のイスラエルと並んでいるのは何かを象徴しているような。

独裁国家の国民にしてみれば少々言論の自由などを犠牲にしても強力なリーダーに対外的な経済・防衛的安定を維持してもらったり、内戦による治安の不安定化を抑制してもらった方がありがたいという気持ちは分からないでもない。しかし、大衆が求める「飼い慣らされた猛犬」は少なからず形容矛盾を孕んでいて、そこそこ望ましいペットを手に入れるのは容易ではないと思う。「おねがい、神さま」感があるので、無神論者の僕は受け入れたくない。「神は人間の最大の発明」というのが僕の信条である。


「優秀なAI を開発して全ての統治を任せれば良いのでは」という話はChatGPT の開発を皮切りとする昨今の生成AI ブームで俄然注目を浴びるネタではあるかと思うが、その背後にはそのAI を管理・運営する人間が不可欠であり、結局のところ不公平が生じるのではないかと危惧する。完全自律型AI なら良いかもしれませんが、あなたはそれを信じられますか? どこの企業が開発したAI を信じますか? (あなたは神を信じますか? どの宗教・宗派を信じますか? と同じ気が)
「やさしいAI 」が統べる理想郷を描いたSF、『タイタン』(野崎まど 著、講談社タイガ)についてはかつて紹介したので、気になったらそちら(記事ではなく、書籍の方)を読んでみてください。

ベーシック・インカムにも懐疑的である。社会主義の頭をすげ替えただけにしか思えないのですが、どうなんでしょう? 平等な労働どころか働かなくても良い状況で、労働者人口は減少しないのだろうか? 例えば水道の水が出なくなった時、誰か直してくれますか? 作業は自分でするとしても、部品は誰が供給してくれるんですか? 『形あるものは、いつか壊れる』。必ず老朽化は進行しますよ。「ボランティア」が助けてくれるのだろうか。


ここから本文。


双極性障害により人間関係を失いゆくにつれ、心の距離感を測りにくくなるのを感じている。発症以前は必要に応じて暗喩(符合とは異なる)で会話するなどという半ばことば遊びのようなことも出来たのに。

健常者であっても難しいものが、障害を理由とする引きこもり、関係の悪化などのために機会を喪失することで能力が急速に錆びつき、さらなる状況の悪化を繰り返す負のスパイラルに陥っていく。

非言語的要素を補おうとするため、ついつい文章が長くなる。現代の若者のSNSは会話するごとく短文を多数やり取りするらしいが、自分の言いたい事が伝わっているか、誤解を招いていないか不安にならないのだろうか。

形式的な配慮なのか、実質的な拒絶なのか。字面通り受け取って良いのか、行間を読むべきなのか。現実世界での信頼はなく、non-verbal な情報が削ぎ落とされ、純粋なtextのみを伝達手段とする場合、そこには自ずと限界が存在する。この世界での常識は現実世界での常識と同じなのか、似て非なるものなのか、全くと言って異なるのか。機嫌を損ねる一端となったかも知れない場合、いかなる対応が可能なのか。いや、もう既に修復不可能なのかもしれない。その判断さえ付かない。

かつて「そんなの常識だよ」と事あるごとに繰り返す上司がいた。そんな誰にでも当て嵌まる常識など存在しないのは明らかなのに。「自分に都合の良い常識」の中に閉じこもり、魔法の呪文を繰り返す返す彼は、しあわせだったのかも知れないと今では思う。


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