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恋で愛の話。

唐突に泣きたくなる日がある。
それは朝、昼、夜、晴れ、雨、雪、関係なしにやってくる。


高校生の頃、先輩の紹介である人に出会った。
「こういう奴がいて、そいつがライブするんだけど一緒に行かない?」

バンド界隈、よくある誘い文句だ。

ライブ当日、いや、その人の演奏時間だけが別の世界を見せているようだった。
これは言い過ぎでもなんでもない。私は覚えていないのだけれど、その日、家に帰って早々、家族に「やばい、やばい歌、歌う人がいる」と言っていたらしい。

それくらい、かっこよく言葉を紡ぐ人間と出会ってしまった話。

とんとん拍子に話は進み、私と彼(かっこよく言葉を紡ぐ人間)は、はなぜだかバンドを始める。人生何があるかわからない。

そこから一年ほど活動をし、先に高校を卒業した彼と、一年の高校生活が残っている私。そんな時、彼は私をクビにした。

元々、友達でもなんでもなかった私たちに “バンド” の繋がりすらなくなった。
当然、連絡を取る理由も、会う理由もなかった。当時の私はそのことになんの悲しみも、未練も、なかった。当たり前の流れ、だったのだ。


そこから一年ほど経ったある日、借りてたギターを返したい。と連絡が来た。駅のホームで本当にギターだけを受け取って終えた。

これが一度目の再会。

それから、私は東京の専門学校に進学し、一人暮らしを始めていた。


高校生の時は、15分に一度は見ていたSNSもなぜだか遠のいていた私。
一人暮らしも板についてきた頃、
なんとなく、本当になんとなく、高校生の頃使っていたアカウントにログインしてみた。
この人、音楽やめたんだ。とか、舞台とかやってるのね〜とか、そんなみんなの現在をいいねをする訳でもなく流し見していた。
その中に、彼のライブ告知があった。
しかも、私の一人暮らしの家から徒歩圏内の洋食屋さんだった。

元々彼の創る音楽が好きな私は、聴きたい。と、簡単にいいねを押していた。

翌朝、起きると一件の連絡通知。

「いいねきたけどお前今何してんの?」

これが二度目の再会。

「専門学生してる。東京で一人暮らししてる。」

「東京のどこ?」

こんな感じで話していくうちに、彼の一人暮らしの家もまた、私の家から徒歩圏内ということが発覚したのだ。
かかりつけ医が同じ。これで相当な近さということがわかるはずだ。

それから二年間、月に二回ほどのペースで飲みにいくことになる。

そしてなぜか、二度目の再会から二回目の年越し、私の家族と彼とでリキッドルームのカウントダウンイベントに行くことになる。

2022年、一年の最後に見た顔は彼で、2023年最初に見た顔が彼だった。
もう、この時から2023は彼でいっぱいの一年と決まっていたのかもしれない。


三月、私の実家帰省と共に、なぜか彼も私の実家に帰省した。帰省というのかはわからないけど。

私の家族は少し複雑で、叔父と叔母の家が実家になる。

私の実家から東京に戻って居酒屋に行った時、

「叔父さんとお前が似ててすごく嬉しくなった。安心した。」

と言われた。全く血の繋がりのない私と叔父。

その頃、母とうまく行っていなかった私を心配した彼は、ちゃんと気負わずに頼れる家族がいて良かったと安心したらしい。



四月、桜が満開の頃、「代々木公園に桜を見に行かないか。昨日行ってすごく綺麗だったから。」と連絡が来た。「仕事の後なら。」と返し、「昨日行ったのに同じところでいいの?」と追加で送った。「綺麗だったから」の一点張りで代々木公園の夜桜を見に行くことが決まった。

普段から飲みに行っても、結局隅田川沿いを歩いて歩いて朝焼けを見て解散。みたいなことをしていた私たちは、その日も座ることなく代々木公園を歩き続けた。

終電が近づいて駅へ向かい始めた頃、

「僕はお前のことが好きだよ」

と。

私はそれが告白とも気づかずに、

「後輩としてでしょ?」と笑いながら返した。その私に
「人間として好きだよ。」

そこからはいつもの先輩、後輩の会話に戻っていたと思う。朝五時くらいに解散した後、私は一通のメッセージを送った。

「私も先輩のこと、結構好きです。」これに対しての返信はこうだった。

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