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バズーカしげぞうのショートショート

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タコ星人のやぼう

タコ星人のやぼう

「なんて醜い生き物たちなんだ!」
タコ星人たちははるか上空のUFOから、望遠鏡で地球を眺めながら言った。

「頭に毛を生やしていやがるぞ!」

「おぞましい姿だ!」
「汚らしい!」
「見てるだけでゾッとするわ!」
タコ星人たちは望遠鏡をもっていない残り6本の足でツルツルの頭を撫でながら、口々に吐き捨てた。

「艦長、こんな気持ちの悪い生物、奴隷として使うのもまっぴらゴメンです」
彼らは地球を侵略し

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想像できる指定席

想像できる指定席

実は世の中には、オープンにされていない、セレブ中のセレブだけが買える「指定席」がある。
例えば大リーグの「マウンド真下席」。ピッチャープレートはマジックミラーになっていて、下にはセレブだけが入れる秘密の特等席があるんだ。ポールマッカートニー、レディーガガなど世界的なミュージシャンの楽屋でお茶係になれる指定席もある。これらの指定席は1戸建てが買えるくらいの高値で販売されている。
ネット上にある某サイ

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ショートショート「使い捨てベッド」

ショートショート「使い捨てベッド」

デパートの家具売場で、「使い捨てベッド」というものを見かけた。
「なんですか、これ?」
店員に尋ねると、
「使い捨てできるベッドです。地面に埋めると半年で土に還ります」
「どんな人が買うんですか?」
「一番多いのは潔癖症の方ですね。ベッドは丸洗いできないからありがたいって」
「なるほど」
「マットについた汗などの体液もすべて土に還ります」
「…血なんかも?」
「はい」
これはいい話を聞いた。俺は妻

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ショートショート「思い出引き取りコールセンター」

ショートショート「思い出引き取りコールセンター」

3年間付き合った彼女と別れた。原因は彼女の浮気。
俺の心はズタズタになった。誰とも会わず部屋に引きこもっていると、見かねた親友のEが「思い出引き取りコールセンター」というものを教えてくれた。そのセンターに電話すると、嫌な思い出を引き取って、忘れさせてくれるという。
俺はそのコールセンターに電話してみた。「手放したいのはどんな思い出ですか?」おばさんの声だった。
俺は彼女の裏切りについて話した。涙が

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ショートショート「猫コンビニ」(400文字)

ショートショート「猫コンビニ」(400文字)

そのコンビニに入った瞬間、
「げっ!」
足が止まった。すごい数の猫がいるのだ。床はもちろん、コピー機の上、商品棚の上、至る所に猫がいる。
「いらっしゃいませ」
レジの向こうから初老の男が満面の笑みで言った。抱いた猫の喉を撫でながら。
「うちはね、猫好きのためのコンビニなんす」
「はあ」
「コンビニも厳しいから差別化しないとね。そしたら猫好きのお客さんはもちろん、バイトの応募も増えてね〜」
「へ〜」

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400文字ショートショート「爆風スマホ」

400文字ショートショート「爆風スマホ」

歩きスマホが大きな社会問題となっている。これを撲滅すべく、経産省は莫大な国家予算を投じて画期的なスマホを開発。その名も「爆風スマホ」。歩きスマホをして1分経つと画面から爆風が噴きだし、強制的に顔を上げさせられるのだ。国からの通達で、全メーカーのスマホにこの機能が搭載されることとなった。
しかし、「つけまつげが飛んだ」とか「カツラが飛んだ」などの苦情が国民から相次いだ。さらに、某テレビ局のバラエティ

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400文字ショートショート「タネも仕掛けもいらん土(ど)」

400文字ショートショート「タネも仕掛けもいらん土(ど)」

「何歳になってもガーデニングを楽しみたい」
そんな高齢者のために画期的な園芸用の土が発売された。その名も「タネも仕掛けもいらん土(ど)」。あらかじめ土の中に種や肥料が混ぜ込んであり、庭にまいたり鉢に入れるだけで、お好みの花を咲かせることができる。畑を耕したり、肥料をまいたりといった面倒な作業がいらないので、庭仕事が辛くなったお年寄りに大ヒットした。
この土に意外な人物が注目した。隣国の侵攻にゲリラ

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400文字ショートショート「開票しない選挙」

400文字ショートショート「開票しない選挙」

ド田舎にある場塚村は、戦前より村全体が2つの派閥に分かれて、いがみ合っている。特に4年に一度の村長選挙では熾烈な選挙戦が展開される。過去にはヒートアップしすぎて暴力沙汰に発展したことも。
この積年の争いを終息させるべく、「選挙活動と投票は行うけど、開票せずに終わる」という「開票しない選挙」という選挙が、世界で初めて実施された。従来の選挙では負けた方は恨みが残り、新たな抗争の火種になってしまう。しか

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400文字ショートショート「汁物専用パソコン、略して汁コン」

400文字ショートショート「汁物専用パソコン、略して汁コン」

倒産寸前のバズーカ電器は、社運を賭け「汁物専用パソコン」、略して「汁コン」という新商品を発売した。汁コンは味噌汁やカップ麺など、どんな汁物をこぼしても絶対に壊れない。寝食を惜しんでパソコンに向かうオタク向けの商品である。
しかし数ヶ月後、社長は涙ながらに社員に告げた。
「…今月末で我が社は倒産します」
汁コンは全く売れなかった。その時、ドアが開き一人の社員が飛び込んできた。
「注文です!汁コン1万

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400文字ショートショート「野菜ラリアット」

400文字ショートショート「野菜ラリアット」

「野菜ラリアット」とは農家兼女子プロレスラーのブロッコリー静江の必殺技。畑で採れた旬の野菜を相手の胸に叩きつけて攻撃する。例えばレタスやナスビ、トマト…。特にゴボウが旬を迎える秋から冬にかけては無敵。その鞭のようなしなやかさと硬さで相手に大ダメージを与え、マットに沈めた。
そんな静江に強敵が現れた。その名もストロベリー桜子。果物農家でもある彼女は、「フルーツ・ラリアット」を得意とし、旬の果物で攻撃

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