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タコ星人のやぼう

「なんて醜い生き物たちなんだ!」
タコ星人たちははるか上空のUFOから、望遠鏡で地球を眺めながら言った。

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「頭に毛を生やしていやがるぞ!」

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「おぞましい姿だ!」
「汚らしい!」
「見てるだけでゾッとするわ!」
タコ星人たちは望遠鏡をもっていない残り6本の足でツルツルの頭を撫でながら、口々に吐き捨てた。

「艦長、こんな気持ちの悪い生物、奴隷として使うのもまっぴらゴメンです」
彼らは地球を侵略し、地球人たちを自分たちの星に連れ帰って、自分たちの下僕としてこき使うつもりだったのだ。

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「この星を爆破して、皆殺しにしましょう!」
タコ星人の一匹が、今までの様子を黙って見ていた一番大きいタコに言った。
「そうだな、そうしよう。波動砲用意!」
地球に向かって、UFOから大きな大砲が伸びる。

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「タコ足配線接続!」
「エネルギー充電!」
「発車まで10秒前! 9、8……」

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ギュゥゥゥン……という地響きのような音ともに、大砲の先が少しずつ光り始めた。
「5秒前! 4、3……」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
望遠鏡で地球を見続けていた若いタコ星人が叫んだ。
「う、美しい! とても美しい生き物がいます!」
「なに?」
「あ、あそこです!」

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若いタコ乗組員が足差す方向を、船長以下、全員が望遠鏡越しに覗き込んだ。そこには剃髪したお寺の住職の姿があった。
「やだぁ、ステキ!」
「なんか、セクシーでイカしているわね!」

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メスのタコ星人たちが、坊主のテカった頭をうっとりと見つめながら言い合っている。
「かっこいいな」
「オスも惚れるオスって感じだよね」
オスのタコ星人たちも、綺麗に剃り上げてある頭を、羨望の眼差しで見つめている。
「船長、こんなに美しい生き物もいることですし、この星を破壊するのはやめにしませんか?」
一人の中間管理職風のタコが言った。
「そうだな、あの美しすぎるヘッドがこの宇宙からなくしてしまうのは、あまりに心苦しい。地球は生かしておいてやろう。波動砲、中止!」
「タコ足回線、抜去!」
「エネルギー放出!」
地球に向けられていた波動砲は、ゆっくりとUFOの中に格納された。

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「その代わり、あの生き物の写真集を作りましょう。きっと大儲けできますよ!」
「そうだな! あのテカリ具合……若いメスを中心に、みんな夢中になるだろう!」

タコ星人は望遠レンズで住職の頭の写真を撮りまくって、自分たちの星に帰っていった。

はるか上空のUFOから、タコ星人たちに恍惚の眼差しで見つめられていたとはつゆ知らない住職は、説法会で檀家たちに語りかけていた。

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「お念仏を唱えましょう、仏様はきっとお守りくださいます」

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