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突然キスする男は何なのか〜経験から語る・2

突キス男・2 年下の消防士

30歳ぐらいのとき、仕事関係で知り合った女性に合コンに誘われた。相手は消防士だという。「行く行く!」消防士さんと知り合えるなんて、これはチャンス!と意気込み、いかにいい女だと思わせるか、化粧に服に、その時の最大限の努力をして挑むも、参加した男性3人中、2人は既婚だった。合コンといいながら既婚者、彼女ありが交じることは往々にしてあったが、こちら女性側は、3人とも同じ年頃で独身、フリー(多分2人も)だった。

ただの飲み会だなと思いつつ、3方のチームワークから繰り出されるお仕事トークなどは、面白かったと思う。既婚者2人は私より年上で、独身の子は25、6と、5つぐらい下だった。その彼を、仮にO君とする。小柄で目がキラキラした男の子だった。

「皆さんは年下だったら、何歳からオッケーですか?」

盛り上がってきた頃、O君は、3人の年上女性を前に、そんな質問をしてきた。

「やっぱり、25歳ぐらいからかなぁ」

O君の年齢を考慮した上で私は答えた訳だが「よっしゃー」と素直に喜び、そのたくましい腕でガッツポーズをとる姿は、私の女心を満たすのに充分だった。好みのタイプが深津絵里というのも、好感が持てた。

2次会にカラオケに行き、最後に皆で何となく連絡先を交換し、「また飲みましょう」などとそれぞれが口にして、お開きになった。

確かその日か翌日に「ありがとうございました。今度ぜひ○○に行きましょう」というようなメールがO君から送られてきた。○○というのは、話の中で私が行きたいといった場所なのか、よく覚えてないが、とにかく昼間に2人で会うことになった。この辺りでは大きな公園を散歩することになり、公園がある駅まで車で迎えに来てくれた。

秋が深まる公園の中を歩きながら、個人的なことを聞いたり話したり、見つけた運動器具にO君が挑戦するのを見て微笑んでみたりと、穏やかな時間が過ぎ、「そろそろ帰る」と私が言ったからか、車で近くまで送ってくれることになった。

おかしい。車中、話しかけてもさっきまでと違い、O君の端切れが悪い。運転中とはいえ、前を向いたまま神妙な顔をしている。それに何か方向違くない?どんどん緑豊かな方に進んでいるような。

「着きました」

そういって車を停めた場所は広い駐車場で、「うち、ここです」などと言って、ごく自然に目の前の綺麗なアパートに招いた。

初めてのデートで部屋に連れて来られるとは、いかがなものか。その考えはあったが、いきなり押し倒されることもなかろうと、年上の余裕を醸すかのように「いいの?おじゃましまーす」などといって私は足を踏み入れた。

「広い部屋なんだねー」などといって室内を見渡した後、壁際の勉強机の前に置かれたパイプ椅子を勧められて、座る。O君も椅子を持ってくると、私の右斜め前に座った。「そういえば、遠足みたいにお菓子持ってきたんだ、忘れていた」と、昨夜袋詰にした駄菓子を渡す。「ありがとうございます」と受け取ると、うまい棒か何かを食べながら熱い視線を向けてきた。オスの顔をしている。

な、なんだ、これは。まずくないか。別に嫌じゃないけど、でも2人で会うのは初めてだし、このままそうなるのは、どうなのか。うー、どうしよう。私の困惑をよそに、彼は顔を近づけ唇を〜

奪いませんでした。前おき長くてすみませんっ。

「私、そろそろ帰るね」熱い目線と無言に耐えられず明るく言うと「わかりました」とすぐに立ち上がり、キーを取ると、今度は本当に家の近くまで送ってくれた。

それから私は彼のことが異常に気になり、次はいつ会えるかなと期待してメールしたり、返信メール見ては一喜一憂したり。

何度かやりとりがあった後、夕方に待ち合わせ、深津絵里が主演のコメディ映画を見に行くことになった。ガラガラのシアターに横並びに座り、大型スクリーンに映し出される深津絵里他、俳優たちの演技を見続ける。途中、横からクスクス笑う声が聞こえてきて、彼が楽しんでいることを知り安堵した。

その帰り道「送ります」と言われ、夜道を車で走っているとき、私はどうしても帰りたくなかった。しかし、だんだん家は近づいてくる。

「そっちじゃなくて、こっちの道だよ」

彼が迷っているのをいいことに、別方向の道を告げる。「あれ、そうだっけ。おかしいなあ」とハンドルを回しながら不安気になったところで「ごめん、嘘ついた。まだ一緒にいたくて」そう言うと「何だよー、かわいいなぁ」と言って手を頭に伸ばし、髪をくしゃくしゃしてきた。

「じゃあ、ちょっと寄り道しましょう」

坂の途中にある私の家を通り過ぎ、更に上がり、右折して山のような道に入った。しばらくして「ここです」そう言って降りた場所は、山道の途中で、家の近くだけれど、普段はまずいかない場所だった。見下ろすと、木々の影から家々の光が見えた。

「綺麗だねー」

何故、こんな場所を知っているんだろう。心の内で思ったが口には出さず、精一杯キラキラした横顔を見せつけ、求められるセリフをいった。それに実際、綺麗だった。のび太くんが、夜、裏山から見下ろす街の景色の、ごく一部に値するとは思う。

助手席に戻り、暗い車内でシートベルトを閉める。「帰ろっか」私が言ったんだと思う、その直後に、ぐっと顔が近づき、唇が触れた。

数秒後、彼は唇を離し、何事もなかったかのように前を向き、シートベルトを閉めると「帰りましょう」そのようなことを言ってエンジンをきった。

家に着き、別れ、私は眠りにつけたんだろうか。多分つけてない、てか、何なの何なの何なんだ!?今のキスは??

いや、その日、家に着いたのか?そのあと「帰りたくない」とか何とかドラマのセリフ真似して言ってなかったか?ギャー!!そーだ、それであーなってこーなって、で、結局は。

告白に至ることもないまま、自然消滅しました。だってメールしても反応鈍いし、会ってもテンション低いし。そこまで気がないの見せつけられたら、離れるしかないでしょ。

総括

私、バジルに「突然のキス」をした男(M君 O君)の共通点①コミュニケーション能力が高い。職場では先輩に可愛がられ、プライベートでも一緒に飲む、合コンにも行く仲。②女慣れしている。彼女がいるか、今いないにしても、それなりに経験はある。③知り合って日が浅い。④バジルのことを女として認識はしているが、特別良いなとか、彼女にしたいなどとは思ってない。むしろ、俺のこと好きなんじゃね?と上から見てる⑤バジルに施した「突然のキス」に深い意味はなく、ただその時したかったからしただけ。

対して、『プロミス・シンデレラ』に出てきた男2人は、時間をかけて女との距離を縮めている、もしくは縮まっている、本気で想っていて、誰にも奪われなくない、俺の気持ちに気づいてほしい、そのようなパッションで「突然のキス」を試みていたように思う。

これよ、これ、この違い。お願いだから私にキスしてその気にさせて放置とか、止めてください。キスするならパッションと責任を持ってして頂きたいものです。

前話はこちらからどうぞ。







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