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米津玄師のラブソング徹底分析<Pale Blue>はどうだ?

 TBSの春ドラマ「リコカツ」の主題歌を米津玄師が担当すると言うニュースとともに、こんなコメントが流れてきた。

離婚から始まる恋というコンセプトの中で、
久しぶりにラブソングを作りました。

久しぶりのラブソング?

そこで、米津玄師の”ラブソング”を新曲発表の前に分析しておこう。 

Apple Musicによると米津玄師のラブソングは下記の15曲。

1:恋と病熱
2:あめふり婦人
3:MAD HEAD LOVE
4:眼福
5:アイネクライネ
6:鳥にでもなりたい
7:メトロノーム
8:ブルージャスミン
9:フラワーウォール
10:あたしはゆうれい
11:シンデレラグレイ
12:orion
13:打ち上げ花火
14:春雷
15:PLACEBO

果たして米津自身が考えるラブソングの定義とは何なのだろうか?

ラブソングの分類

 上記のAppleによるリストが、米津サイドのアプルーバルを得ているのかはわからない。リスナーそれぞれにも解釈の違いがあると思う。

 この記事ではAppleのリストを公式見解とみなし、筆者の意図で、”ミラージュソング”と”ViVi”を加えた17曲を分析してみた。

 下記のチャートは「出会いから思い出になるまでの時間軸」を横軸に、「幸福感」を縦軸に取り、筆者の主観で米津玄師のラブソング17曲をプロットしたものだ。

 色分けはそれぞれの曲が収録されているアルバムのジャケットカラーに準じている。こうしてみるとラブソングは「Bremen」に多く、「StraySheep」には1曲しかないことがわかる。そして大半が”相思相愛”ではない。

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両思いソングなのになぜか切ない理由

 上段中央の波線で囲んである6曲は幸福度が高めの相思相愛ソングである。

 その最高峰は、米津自身が「愚直なラブソング」と語る”ブルージャスミン”だ。この曲の幸福感には一点の曇りもない。結婚式でフルコーラス歌っても何の違和感もないだろう。

 また、"MAD HEAD LOVE"も大喧嘩の最中のような歌詞だが、実は体当たりの恋の真っ盛りだ。そこにはあるのは激情であって憂いではない。

 しかし、その下にプロットされた4曲はラブラブな歌詞と優しい曲調にも関わらず、小さなトゲが仕込まれている。

 これらのフレーズには「今」目の前にある愛を確信できず、「終わり」に向けてそっと心の準備をしてしまう臆病な”いじらしさ”が滲む。

あとどれほどだろうか
君と過ごす時間は
(FlowerWall)

今痛いくらい幸せな思い出が
いつか来るお別れを育てて歩く
(アイネクライネ)

きっとあなたと私は
いつまでも一緒にいられない
(眼福)

その声はいつか消えてしまうからさ
(ミラージュソング)

「僕は気づく、これからの日々が幸せだってこと」と愛の確信を歌う”ブルージャスミン”のような”シンプルゆえの強靭さ”に欠け、心がチクっと痛むのだ。

 それは不甲斐なさと言うよりも、愛を失いたくない切望が柔らかく心を刺す痛みなのだろう。

恋が始まる高揚感と届かぬ想い

 チャートの左側は、2人が相思相愛ではないことを示している。上段の"PLACEBO"は、恋が始まる高揚感に高鳴る鼓動が聞こえてきそうだ。

 野田洋次郎とのデュエットソングであることと「鉢合わせのとんだピーカブー」と言う歌詞から、2人の男が1人の女をめぐって争っているようにも聞こえる。

 そのすぐ下の"春雷"は、思わせぶりに翻弄され幸福度が急降下しそうな危うさを孕み、何とも官能的だ。

 最初から想いが届かない哀しさを歌っいるのが左下の3曲だ。最も幸福度が低そうな”あたしはゆうれい”は、「脈がない」という慣用句を「ゆうれい」と表現した米津の洒落の効いたセンスが光る。

恋の末期から思い出へと

 チャートの右下は、2人の関係が怪しくなり始めた頃から別れへのゾーン。このゾーンの中でも上方でセンター寄りにある”メランコリーキッチン”と”鳥にでもなりたい”は、頑張ればまだ修復の可能性は残されていそうだ。

 別れの歌にも関わらず、まだ残る温もりを慈しむような”メトロノーム”に比べ、”ViVI”は「愛してるよViVi」と繰り返しながらも、どこか乾いた響きがある。

 「他人に理解を求めるべきではないなと思ったんです。」「人は結局どうやってもわかりあえない」とViViについて語った米津。つまり、この曲はラブソングの顔をしながらディスコミュニケーションの諦観を歌っている。ViViとはMVに登場する可愛い女の子ではないのだ。

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 思い出になってしまった恋、”シンデレラグレイ”は後悔を叫び、”打ち上げ花火”は切なくあの夏を思い返す。

PaleBlueはどこにプロットされるのか?

 さて、チャートの右上が空いていることにお気づきだろうか?ここは「恋の終わりなのに幸福度が高い」という一見矛盾するゾーンだ。

例えば「あの別れがあったからこそ今の幸せがある」のように。

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 4月16日に解禁となる新曲”PaleBlue”は「離婚から始まる恋」というコンセプトだ。もしかしたら、ここにスポッとハマってくるのかもしれない。

それとも、”ブルージャスミン”を遥かに凌駕する最高にハッピーなラブソングなのか?

 いずれにせよ、本人が「ラブソングを作った」と言い切って発表する曲だ。米津玄師のラブソングの定義を知るひとつのヒントとなることだろう。

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