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9. 充電方法(定電流定電圧 パルス充電)

リチウムイオン電池は充電方法を誤ると、事故をもたらすことがあります。


充電はメーカーが指定した条件内で行うことが重要です。

一般的には、電圧はセルあたり最大4.2V、電流は1C以下とされています。


電圧は4.1Vとする場合もあるようです。

10年ほど前までは4.1Vが一般的で、容量増をねらって4.2Vが導入されてきたと理解しています。

電圧が低い場合には当然、充電容量が減少します。

4.1V充電では4.2V充電に対して、約10%充電容量が低下します。

しかし、サイクル寿命は非常に改善されます。


充電電流が規定値より大きすぎると、負極内に吸収されないリチウムイオンができてきて、これが金属リチウムになるといわれています。

金属リチウムは良く知られているように、非常に活性な金属で、事故が発生しやすくなります。

このように、リチウムイオン電池は、充電電圧と充電電流をともに管理する必要があります。

これが定電流定電圧充電方式です。

ちなみに、ニッケル水素電池やニッカド電池では、電流のみの管理で、定電流充電が行われます。

しかし、ニッケル水素電池やニッカド電池では充電を止める判定が難しく、電圧の変化点や、セルの温度が急上昇するところを検出する機構が必要で、充電器としてはリチウムイオン電池用のほうがシンプルで、低コストになります。

電池パック内にサーミスタを入れて電池セルの温度を検出する場合がありますが、これはもともとはニッケル水素電池の充電で、満充電の時点を検出するための温度検出用であって、リチウムイオン電池では必ずしもサーミスタを入れる必然性はありません。

電池メーカーが充電温度範囲を規定しているので、その温度範囲内にあることを検出するためにサーミスタを入れる、というのが本音のようです。

リチウムイオン電池は低温(例えば0℃よりだいぶ下の温度)で充電した場合は、正極から出たリチウムイオンが負極に吸収されにくくなり、リチウム金属が析出しやすいといわれています。

もし、このような状態になれば、事故が発生しやすくなります。

逆に、充電時の温度が高い場合は、充電電流による温度上昇が環境温度に加わり、電池が高温になる場合があることを心配します。

これがリチウムイオン電池で、充電時の温度範囲が規定されている背景です。

多くの場合、充電温度範囲は0℃~45℃程度に規定されています。

実際に問題になるような低温もしくは高温というのはさらに極端に低温もしくは高温なのですが、しかし実用的には、例えば0℃以下で充電することはまずないだろうし、45℃以上で充電するケースもないでしょう。

さて、以下の解説では相対的な電流量を示すCという単位が出てきます。


これは電池業界で一般的に使われる表現なので、ご理解願います。

1Cとは公称容量値の容量を有するセルを定電流放電して、ちょうど1時間で放電終了となる電流値のことで、たとえば2.2Ahの公称容量値のセルでは1C=2.2Aです。


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定電流定電圧充電方式は図で示されているように、放電状態から充電を開始すると、当初電圧は低いため、定電流充電となります。

次第に充電量が増加して、セル電圧が4.2Vに達すると、ここからは定電圧充電となり、セル電圧が4.2Vを超えないように電流量が絞られていきます。

満充電の判定は、充電時間または充電電流の減少状態で行います。

充電時間で規定する場合は、電流1C、電圧 4.2Vの定電流定電圧充電で充電時間2.5時間を満充電と定義することが多いようです。

電流0.5C、電圧4.2Vの定電流定電圧充電では3.5時間が満充電となります。

ニッケル水素電池に対するリチウムイオン電池の欠点の一つはいわゆる急速充電が困難であることですが、図からもわかるように、たとえば1C充電の場合には充電開始1時間後には90%が充電されています。

 0.5C充電の場合では120分後には90%以上充電されています。

電池の容量を満充電の90%と割り切って考えてしまえば、ニッケル水素電池にほぼ匹敵する急速充電ができることがわかります。

携帯電話などでは充電時間を”短い印象”にするために、充電完了表示(ランプの色変更)を90分程度で行っているようです。

充電電流は0.7C程度のものが主流ですから、セルの能力である満充電に対して、90%程度の充電量で満充電表示を行っています。

表示が満充電となっても充電は継続している場合が多いので、急がない場合には使用する時まで充電台においておくことにより、充電量を増やすことができます。

充電量は[電流×時間]で決まります。

定電流定電圧充電方式で充電時間が長くかかるのは、電圧が上昇したときに電流値を小さくしていくからです。

セル電圧が充電中のごく短時間だけ、規格値である4.2Vを超えることを認め、電流値を大きくすることによって、充電時間を短縮しようという方法がパルス充電方式です。

この方式はいろいろな方法が提案され、各社特許を取得しているようですが、基本的な方法はセル電圧4.2V以下のときは例えば電流1Cの一定の時間幅のパルスで充電し、その後のセル電圧をモニターし、セル電圧が4.2V以上ならば充電は停止、4.2V以下ならば再度パルス充電を行うというものです。

多少充電時間が短縮されますが、コストアップに見合うだけの効果は無く、また、各社の特許の権利関係が複雑で、弊社としてはパルス充電方式を採用する予定はありません。


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*2006年当時のお話をもとにしております。

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