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【メモ(memo)】最後に感じたい気持ち

もし、今日が、あなたの人生の最後の日だとしたら、自分について何を思いたいですか?

もし、余命○ヶ月と宣告されたら、死ぬまでに何をする?なんていう質問はありますね。

そういえば、余命宣告された主人公が、その時間でやりたいことをすべてやる、という映画もありました。

ここでは、何かをするのではなく、もう、そんな時間はなくなっていて、まさに、今、あちらへ行くというときです。

そして、自分の人生を振り返ったとき、どんな風に感じたいでしょうか。

自分の最後の言葉、最後の思いは、どんなもの?

「ひと魂でゆく気散じや夏の原」葛飾北斎

掲出句は、かの超人的絵師・北斎の辞世(90歳)の句として知られています。

北斎は、川柳をよくしたので、川柳のつもりで詠んだのかもしれませんね。

死を前にした境地ながら。

なんとも言えない、とぼけた味わいがある句ですよね(^^)

言い換えれば、残された者への救いがあると思いませんか。

例えば、同じ辞世句にしても、芭蕉の、

「旅に病で夢は枯野をかけ迴る」

などとは大いに異なっています。

また、

「悲と魂でゆくきさんじや夏の原」葛飾北斎

この句の表記は、

「新選俳句歳時記」(潮ライブラリー)多田道太郎(著)

句を引用している多田道太郎さんの本書に従っていますが、特に、上五の表記は、出典が別にあるのか詳らかにしないのですが、もしかしたら、多田さんが工夫したオリジナルであると考えると、面白味のある句かなと思います。

さて、辞世の念を述べる述べないはさておき、私にも一度だけチャンスは訪れます。

そのときに果たして、何が見えるのだろうかと。

生きた社会的産物なるものが、どんな中身と構造を持つのか。

その境地に至る過程をトレースしてみるアプローチも有効です。

たとえば、「私の人生は、楽しかった!」とか。

「まあ、こんなもんでしょ」とか。

「何かもうちょっとできた人生だったかも」とか。

幸せだった、と感じたいのが自然です。

どんな人も、後悔だらけだったなんていうのが、最後の思いにはなりたくないはず。

7つの習慣の著者、スティーブン・コビー博士の"Begin the end in mind"というくだりは有名ですね。

「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」スティーブン・R.コヴィー(著)フランクリン・コヴィー・ジャパン(訳)

つまり、終わりを思い描いてから始めること、そのことを考えることから始めなさい。

終わりのところから、人生の舵取りをしなさい、という意味です。

そ言われても、終わりを思い描いてから始めるには、どうすればいいのでしょうか。

スティーブン・コヴィー博士は、この習慣におけるすべてのものは、心の中と現実世界とで、合わせて2度作られるという原則に基づいているとします。

博士によれば、まず目標を思い描き、イメージを創造(知的創造)することによって、第2の、つまり物理的な目標の創造(物理的創造)が、可能かどうかを判断できるようになります。

終わりを思い描いてから始めるアプローチには、いくつかの方法があります。

特に効果の高い優れた方法が、自分のためのミッションステートメントを作成することです。

個人のミッションステートメントを作成する場合、人生の、どの側面を取り上げるか、決めてから書くこともできます。

個人的な目標、つまり、健康、キャリアなどのあらゆる目標を可視化し、定義することに役立ててみては如何でしょうか。

「現代人は、実に勤勉に働きますが、明確性とビジョンがないために、なかなか成功に至りません。

端的に言えば、多くの人は、持てる力を振り絞り、実りなき仕事に奮闘しているのです。」—スティーブン・R・コヴィー博士

確かに、個人のミッションステートメントを作成することは、とても時間も、エネルギーも、必要になるのですが、書くことで目標に向かって戦略的に進めるようになる利点があります。

まず、次の質問を、自分に問いかけてみましょう。

質問1:あなたがパフォーマンスを最も発揮できるのはどんな時ですか?あるいは発揮できないのはどんな時ですか?

質問2:プライベートな生活で、あるいは職業人として、どんなことに情熱を抱きますか?

質問3:あなたに生まれつき備わった才能や得意なことは何ですか?

質問4:無限の資産があり、失敗しても問題ないとしたら、人生で何を成し遂げようと思いますか?

質問5:あなたの人生の旅はどんなものですか?あなたが今、取り組んでいること、それは誰のためか、あなたの行動の理由、あなたが目指す結果を定義してください。

質問6:キャリアの終点にいる自分の姿を思い描きましょう。あなたという人間について、周囲の人からどんな評価を得たいですか?

質問7:あなたは将来、どのような貢献を果たすことが最も重要だと思いますか?また、だれがその恩恵を受けるべきですか?

質問8:自分について変えたいと思うところはありますか?

質問9:これまであなたの人生に影響を与えた人を 3 人まで思い浮かべてください。その人たちの名前と、あなたが特に尊敬する資質を書き出しましょう。

質問10:人生の身体的、精神的、社会的、感情的な面で、あなたはどのようにバランス感覚を保っていますか?

個人のミッションステートメントの作成は、終わりを思い描くことから始める素晴らしい方法ですが、そもそも、「終わりを思い描くこと」が実際に何を意味するのかを把握するのは、中々難しいかもしれません。

さて、彼の本の中には、自分が死んだときに、どんな弔辞を読んでもらいたいか、なんていう質問もありました。

最後に感じたい気持ちとは、それと似ています。

もちろん、周りがどう思ってくれるかどうかは、ひとつの基準。

いい人だった、惜しまれると言われるなら嬉しいもの。

でも、同時に、何よりも自分が、自分のことをどう思うか、もさらに重要です。

いくら周りが、「あなたはラッキーね、幸せね」と言ってくれたとしても、自分が、ココロから、本当に、そう思っていなかったとしたら、どうでしょう。

周りの言葉に、「私はラッキーなんだ、幸せなんだ」と思い込むよう努力をする方もいますが、たいていの場合、自分の心に、ウソはつけません。

だから、最後に、自分が感じたい気持ちを一度レビューし、これからは、その思いを尊重して、これからの軸にしていったらいいのです。

そう言えば、「徒然草」の第155段には、

「新版 徒然草 現代語訳付き」(角川ソフィア文庫)兼好法師(著)小川剛生(訳注)


「生・老・病・死の移り来る事 また、これに過ぎたり。

(中略)

死期(しご)は序(ついで)を待たず。

死は、前よりしも来らず。かねて後(うしろ)に迫れり。

人皆死ある事を知りて、待つことしかも急ならざるに、覚えず(おぼえず)して来る。

沖の干潟遥かなれども、磯より潮の満つるが如し。」

とあります。

「人間、生・老・病・死がやってくるのは季節の入れ替わりより早い。

(中略)

死期は順序通りにやってこない、死は自分が予測している前からよりも突然後ろに迫ってくる。

誰もいずれ死ぬのは分かっているのに、今日明日とは思わないから死は不意にやってくる。

沖まで続く干潟を遥か後方に眺めているうちに、足元の磯から潮が満ちてくるようなものである。」

まさに言い得て妙ですね。

吉田兼好は、「徒然草」の中で、死について繰り返し語っているのが印象に残っています。

「我等が生死(しやうじ)の到来、ただ今にもやあらん。

それを忘れて、物見て日を暮す、

愚かなる事はなほまさりたるものを」(第41段)

「京都の上賀茂神社の競べ馬を見ようと木に登って待っている僧が、居眠りして落ちそううになっているのを見た人たちが、「なんと愚かなことか」と言っているのを聞いて、兼好は「そういう自分たちも 死の到来は今すぐかもしれないのに物見して過ごしている。

木の上の僧より愚かかもしれない。」と言った。

「道人は、遠く日月(じつげつ)を惜しむべからず。

ただ今の一念、空しく(むなしく)過ぐる事を惜しむべし。」(第108段)

長寿の時代になって、まだ先があるから「そのうち、そのうち」と先延ばしをして、今日という一日が何となく終わってしまう。

兼好は、そんな先のことを心配するより、今日一日が過ぎ去ってしまうことを心配したらどうか と言っています。

「身を養ひて、何事をか待つ。

期(ご)する処(ところ)、たゞ、老(おい)と死とにあり。

その来る事速やか(すみやか)にして、念々の間に止まらず(とどまらず)。」(第74段)

「人々はアリのように朝から晩までせわしく動き回り、あくせく働いて 人生に何を望んでいるのか。

待ち受けるのは、老いと死だけである。老いや死は あっという間に来て 逆戻り出来ない。」

兼好に「待ち受けるのは、ただ老いと死だけ」と言われると、「我が人生に悔いあり」であってはならないと、気持ちを新たにさせられます。

ただ、なんだか話のスケールが大きいような気もしないではないし、今から、最後を考えるのも、普段は、確かにあまりしないことかもしれません。

でも、大きく考えるのは悪くないし、それに、どんな人にも終わりは確実にやってきます。

どんな風な人生にしたいか、その原点を持っていれば、今後の選択の基準にもなります。

自分の価値観などとともに、普段から、意識の中にいれておきたいことのひとつです。

そこで活用したいのが、SMARTな目標です。

新しいことに挑戦することは、人を成長させます。

特定の目標を達成するかどうかにかかわらず、挑戦して成功したり、失敗したりする勇気が、レジリエンスや個性、そして、キャリアを前進させるためのエネルギーを生み出すことに繋がっていきます。

SMARTな目標は、自身の計画を立てたり、パフォーマンスに関する現実的な期待値を設定する便利な方法です。

SMARTな目標には、

具体的 (Specific)、

測定可能 (Measurable)、

達成可能 (Achievable)、

現実的 (Realistic)、

期限がある (Time-bound)

の、5つの特徴があります。

個人のミッションステートメントが完成したら、それをたたき台にして、SMARTな目標を設定してみては如何でしょうか。

「今日が人生の最後の日のように生きよう!もしかしたら、そうかもしれないから。」ロビー・ベンソン(俳優)

「毎日自分に言い聞かせなさい。今日が人生最後の日だと。あるとは期待していなかった時間が驚きとして訪れるでしょう。」ホラティウス(詩人)

殆どの人は、追い込まれて、現実的になるまでは、真剣に考えないないのかもしれません。

もし、本当にそうなると思えば、貴重な時間を無駄にすることはできないですよね。

究極の状態に追い込まれれば、本当に、何が大事で、優先すべきかも見えてくるはずだし、常に、その発想で考えていれば、時間の大切さと優先順位もわかってくるはずです。

もし、前述の人生についてのミッションステートメントがうまく書けない場合、ちょっとしたエクササイズを試して、文字通り、終わりから始めてみて下さい。

まず、現在から5年後や、10年後など、未来の時点を選び、その時点にいるのだと考えてみる。

そして、未来の自分の視点で、現在のあなたに宛てて、日記や手紙を書いてみる。

書く内容は、成功したこと、苦労したこと、希望などを伝えて上げるのが良いと思います。

未来から、今を振り返って書くこのエクササイズを行うと、既に、今後、数年を経験したという仮定で書いていることになりますので、人生のミッションステートメントを書くプレッシャーは少し軽くなると思います。

それを何度か試してみることで、人生の優先事項やキャリアの目標、将来の夢を、よりはっきりと思い描けるようになるはずです。

人生のミッションステートメントを書くことができれば、今できることを、後悔しないためにも、先延ばしせずにすぐにやってみる。

いま最優先すべきことが何かを考えて、時間を有効に使っていく。

いまやらなくてはいけないことは何ですか?

いま最優先で考え、実行することは何ですか?

あなたの最後に感じたい思いとは、どんなものでしょう。

実際に、そうなれるようにするには、今から何を始めますか?

【今日の名言】

「並外れた結果を出すのに、並外れた努力はいらない。ただ、日々の、普通の物事を、完璧にすればいいだけだ。」ウォーレン・バフェット(投資家)

「私たちはある限られた時間だけしか生きられず、しかもほとんどの時間働いているということを認識しなければならない。したがって、最優先しなければならないことの一つは、すべきこと、できることは何でもするということだ。」ビクター・キアム(実業家)

「毎日自分に言い聞かせなさい。今日が人生最後の日だと。あるとは期待していなかった時間が驚きとして訪れるでしょう。」ホラティウス(詩人)

「困難に陥った時、切り抜ける手だてになるのは自分の意志だけだ。」アラン(哲学者)

「人生における最優先事項は、成し遂げたい目標を持って事にあたることだ。」パブロ・カザルス(チェロ奏者)

【今日の芸術】

兵庫県立美術館で、

2023年10月18日(土)から11月26日(日)まで「注目作家紹介プログラムーチャンネル14 吉本直子 いのちをうたうー衣服、痕跡、その祈り」が開催されていましたね。

「注目作家紹介プログラム チャンネル」は、兵庫県立美術館が、2010年度より、毎年度開催してきたシリーズ展です。

担当学芸員の方が紹介したいと考える注目作家を取り上げているそうです。

運よく鑑賞の機会が与えられた14回目となる2023年度の 「チャンネル」では、兵庫県加西市出身で、西脇市在住の現代美術家、吉本直子さんの作品でした。

彼女の作品は、人が着用した白い古着を使った立体作品で知られる作品です。

同館スタッフは、「とても荘厳で儚く、見る者に、生と死を感じさせます。

人々が生きた記憶を留める古着の作品を通して、命に向き合い、風に立ち向かい、大空に羽ばたく鳥の作品を通して、困難な状況のなかでも、決して失われない希望の光を感じることができる」

と話されています。

過ぎ去った時を紡ぎ直して、新たに糸へと生まれ変わっていく、不思議な世界でした(^^)

【今日の短歌】

終わりを思い描くこと。

それは、畢竟。

私達の無意識の地平を越えた地点に、もしかしたら、あるかもしれませんね。

そうではなくて、私自身で、あるかもしれない。

常に、今日という日が、人生の最先端であり。

常に、隣り合わせに死があることを、考えさせられる一句たちだなと、そう感じられた歌を集めてみました。

「A god has a “life file”, which is about the collapse of my cool core. (罪色の合わせ鏡のその奥の君と名付けた僕を抱き取る)」
(中島裕介『Starving Stargazer』より)

「あと何を買ったら僕の人生は面白くなり始めるのかな」
(辻井竜一『遊泳前夜の歌』より)

「いのちあるすべてのものを同胞としたり若冲、ダ・ヴィンチもまた」
(田村よしてる『いとしきもの』より)

「けし、あやめ、かうほね、あふひ、ゆり、はちす、こがねひぐるま夏の七草」
(高野公彦『河骨川』より)

「つひにゆく道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思はざりしを」
(在原業平『古今和歌集』巻16哀傷歌861より)

「とりあへず「括弧」でくくりかなしみの方程式は解かずに置かう」
(豊島ゆきこ『りんご療法』より)

「ヒルティを枕に置きて話し出(い)ず人のひと生(よ)のよろこびの淵」
(中川佐和子『卓上の時間』より)

「ゆふぞらを身ひとつで行く鳥たちは陽の黄金(わうごん)につつまれて飛ぶ」
(小島ゆかり『馬上』より)

「救ひなき裸木と雪の景果てし地点よりわれは歩みゆくべし」
(中城ふみ子『乳房喪失』より)

「牛乳が切れたら次の牛乳をあぶない橋をわたるみたいに」
(山中千瀬『さよならうどん博士』より)

「五分ほど遅れてをれば駅ごとに日本の車掌は深く深く詫ぶ」
(齋藤寛『アルゴン』より)

「身をひとつ左へゆるい坂道にめぐらせゆけばそこが海です」
(大久保春乃『まばたきのあわい』より)

「人として生れたる偶然を思ひをり青竹そよぎゐる碧き空」
(志垣澄幸『日月集』より)

「朝くらき花屋の土間に包まれて仮死せるごとき白百合の束」
(さいとうなおこ『キンポウゲ通信』より)

「頭とは何ぞと問ふにジャコメッティ端的に応ふ胸の付け根」
(玉城徹『われら地上に』より)

「念校は人生のためあるのだろう想い出広がる冬の草はら」
(中川佐和子『春の野に鏡を置けば』より)

「白き雲流れゆくなり 雲梯を這って渡ったこと一度ある」
(野田光介『半人半馬』より)

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【参考図書】
「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」フェルナンド・ペソア

「新編 不穏の書、断章」(平凡社ライブラリー)フェルナン・ペソア(著)澤田直(訳)

「ペソア詩集」(海外詩文庫)ペソア(著)澤田直(訳)

「フェルナンド・ペソア伝 異名者たちの迷路」澤田直(著)

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