バットマン:梟の街 ネタバレあり感想・あらすじ解説
OWL TO BAT!(フクロウVSコウモリ!)
バットマン翻訳コミックの感想第2回は『バットマン:梟の街』です。
概要
前作『梟の法廷』の続編です。
主にバットマンの視点からの梟の法廷と刺客のタロン達との闘いと複数の視点・時代での事件が描かれています。
内容的に前作『梟の法廷』のネタバレが含まれますので注意してください。
あらすじ
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各章を簡単にまとめてみました。
1章~2章
バットケイブに侵入したタロン達とバットマンとの闘い
3章
タロンの1人であるカーバー視点で描かれるタロンの生涯の物語
4章~5章(前半)
梟の法廷・タロンとの一旦の決着をつけるバットマンの闘い
5章(後半)
アルフレッドの父視点のブルースの幼い頃時に起きた梟の法廷との事件の物語
6章
電気技師の女性ハーパー・ロウの視点で描かれるバットマンの姿
7章
ミスター・フリーズの視点で描かれる過去と復讐の物語
また、今作とほぼ同じ時系列でのバットファミリーと梟の法廷・タロンとの闘いは『梟の夜』で描かれています。
余談ですが翻訳本の発行順ですと前作の『梟の法廷』と今作の『梟の街』の間に
『ダークナイト:姿なき恐怖』
というのが発行されていて本編とは別に今作の3章のみ収録がされているのですがなぜかShoProBooksさん翻訳のDCコミック一覧からも消えているという黒歴史みたいな扱いをされています。
個人的には有名ヴィランとヒーローが大集合なので好きなのですが・・・
絶版のようで中古のみの販売ですが安いので気軽に買えるのも良いと思ってます。
登場人物(若干ネタバレ有り)
バットマン(ブルース・ウェイン)
主人公。ダークナイト。世界一の名探偵。
前作に続き梟の法廷を追いタロンと対峙する。
やられっぱなしに近い前作から変わり重厚なスーツを纏いタロンと対等以上に戦う。
梟の法廷が両親の生きていた時代からの因縁があると知る。
アルフレッド・ペニーワース
ブルースの有能な執事。
バットマンと共にバットケイブでタロンを迎え撃つ。
アルフレッドもまた父親と梟の法廷との因縁を知ることになる。
バットファミリー
アルフレッドの通達を受けて梟の法廷のターゲットを守りに向かう。
彼らの活躍は『梟の夜』にて描かれる。
7章ではナイトウィングとロビン(ダミアン)がミスター・フリーズと対峙する。
リンカーン・マーチ
前作に続いて登場の市長候補。
相変わらず梟の法廷に狙われている。
ジャービス・ペニーワース
本編の数十年前の話で登場。
アルフレッドの父親でブルースの両親が健在の頃に執事をしていて幼いブルースの面倒も見ていた。
アイアンマンの執事のジャービスとは無関係。
トーマス・ウェイン、マーサ・ウェイン
同じく本編の数十年前の話で登場。
ブルースの両親。梟の法廷に狙われる。
ハーパー・ロウ
ゴッサムで電気技師として働く女性。双子の弟のカレンと住んでいる。
前作でバットマンを電気ショックで蘇生させた。
この時バットマンはハーパーのことを知っていたが今作の話でバットマンとの出会いが描かれる。
ヴィラン
梟の法廷
ゴッサムを裏で支配していた闇組織。
前作のラストでゴッサム中に配下のタロン達を解き放ち有権者をターゲットにしてゴッサムを弱体化させて支配力を強めようとする。
タロン
梟の法廷に育てられた暗殺者。梟モチーフのコスチュームを着ている。
不死身のような肉体と治癒力を持つ強敵。
前作のラストでタロンが1人ではなく複数居ることが明かされた。
梟の法廷に洗脳されているが自我が無いわけではないので意外とそれぞれ性格に個性が出ている。
タイガーシャーク
トラを飼っている海賊。なのにゴッサムの地下を根城にしている。
顔の上半分を赤い布で覆っているがたぶん見えてる。
プレジャーボートに乗ってる現代的な海賊。
ミスター・フリーズ
冷凍銃を駆使する冷凍人間。
映画やゲームで有名なヴィラン。
彼の母親との回想から7章の物語は始まる。
妻のノーラの治療の為に犯罪をしていると言われているが・・・
ペンギン
暗黒街のボス。特殊能力もなくただの人なのに存在感の大きいヴィラン。
ミスター・フリーズに協力して冷凍銃を渡す。
感想(ネタバレ注意)
お、面白い!
前作は探偵パートがあり梟の法廷の存在が謎に包まれていて徐々に盛り上がる感じでしたが今作は最初からクライマックスと言わんばかりに戦闘パートが盛りだくさんです。
前作から登場のタロンの正体や生い立ちにも焦点があてられ、そこにも深みがありました。
今作は各章ごとで視点や時系列が変わるので各章ごとに感想します。
1章~2章
バットケイブに侵入したタロン達とバットマンとの闘い
前作のラストでゴッサムの有権者を狙ってタロンを解き放った梟の法廷はブルース・ウェインを狙ってウェイン邸を襲います。
タロンのセリフ的にブルース=バットマンと知らされてなかったようですが大勢のタロンが来てるあたり梟の法廷は知っていたか疑惑を持っていたようです。
前作とうってかわって生身のままでもタロンを退けていくバットマン。
タロンは最近冷凍から目覚めた割には元気でペラペラ結構しゃべります。
バットマンはアーマーのような重厚なスーツでタロンを迎えます。
タロンは不死身と知っているので容赦ありません。
バットモービルで逃げるタロンを轢いたりもします。
タロンから奪ったデータを読み取ると梟の法廷のターゲットの一覧がずらり。
その中にはゴッサム市警本部長のジム・ゴードンやアーカム・アサイラム署長のジェレマイア・アーカム、ミスター・フリーズ、リンカーン・マーチ、ルシアス・フォックス、オズワルト・コブルポット(ペンギン)の名前もあります。
一部のターゲットの話は次回作の『梟の夜』で描かれます。
バットマンはターゲットの中のリンカーン・マーチを守りに行きますが時すでに遅しで襲撃された後でした。
彼の死によりバットマンは梟の法廷に対する怒りをより高めます。
3章
タロンの1人であるカーバー視点で描かれるタロンの生涯の物語
リンカーン・マーチを襲ったタロンであるアルトン・カーバーの視点で彼の生涯が語られます。
かつてディック・グレイソンも所属していたヘイリーズ・サーカス団に居たアルトンは梟の法廷によりタロンに選ばれて暗殺者として活動していました。
しかし肉体の衰えが有り、後継者の候補として同じくヘイリーズ・サーカス団に居たディックの存在を知り任務中にディックを見に行きます。
ここでタロンがただの洗脳されて指示だけに従う暗殺者ではなく人間味があるキャラクターであるのがわかりますね。
また、かつてアルトンはバットマンと対峙をして逃げていたことも明かされました。
そしてバットマンに恐怖を感じるタロン。
リンカーン・マーチの襲撃現場で再びバットマンと出会いアルトンは恐怖します。
「この男には勝てない」
とバットマンへの敗北を認めました。
ラストには復活の伏線を仕込んでます。
4章~5章(前半)
梟の法廷・タロンとの一旦の決着をつけるバットマンの闘い
ついにバットマンの方から梟の法廷に迫ります。
梟の法廷のアジトを探してゴッサムを飛び回るバットマンがすごくかっこいいです!
そして梟の法廷のアジトを突き止めたバットマンですが
そこには集団自殺をした梟の法廷のメンバーの死体があるだけでした。
しかし本当に自殺なのか疑うバットマン。
両親の写真を見てあることに気づきます。
そして向かった廃院となったウィローウッド児童養護施設で待ち構えていたのは死んだはずのリンカーン・マーチでした。
彼の正体は梟の法廷のメンバーで有り幼い頃から梟の法廷に育てられ作られた存在でした。
梟の法廷を裏切り殺したのも彼でした。
そして彼は自分はブルース・ウェインの弟だと語りますがバットマンは否定をします。
彼はタロン用の最新スーツを身に纏いバットマンと1対1で対峙します。
「ゴッサムのために決着をつけようじゃないか。ウェインVSウェイン」
「お前は狂ってる・・・」
「兄VS弟」
「OWL TO BAT!(フクロウVSコウモリ!)」
ここのシーンでバットマンのコミックが好きになりましたね。
かっこよすぎる。
ライバル関係、兄弟関係も好きなので。
バットマンとリンカーンは激しく殴り合い、それぞれのスーツとガジェットも活用しながら闘います。
闘いの最中リンカーンは一方的にバットマンに語り続けます。
ゴッサムとブルースに対する恨みが見られますね。
お互いボロボロになりながらも闘い続け、決着は建築中のタワーでつきました。
そのタワーはかつてブルースがゴッサム再建のシンボルとして示したもののひとつでした。
リンカーンは爆発倒壊するタワーに取り残されましたが死体は見つかりませんでした。
これで一旦は梟の法廷との決着がつきましたが梟の法廷も逃げたタロンもまだ居るのでこれからも闘いが続くことが示唆されました。
ディックがブルースの元を訪れます。
前作でブルースに理不尽に殴られたことは忘れていません。
自分には確かに死んだ弟がいたこと、ディックの中には光があるからタロンになることはなかったはずだとディックにブルースは伝えます。
梟の法廷がまた動くならば戦う意思を示してバットマンと梟の法廷との最初の闘いは終わるのでした。
5章(後半)
アルフレッドの父視点のブルースの幼い頃時に起きた梟の法廷との事件の物語
物語は本編の数十年前に遡り、アルフレッドの父親で当時ウェイン邸の執事をしていたジャービス・ペニーワースが息子のアルフレッドへ書いた手紙としてかつてウェイン家を梟の法廷が襲った事件について語られます。
それはリンカーン・マーチが語ったブルースの弟が梟の法廷の放ったタロンに襲われた母マーサが事件により早産して亡くなった時の話でした。
ウェイン家は呪われている、ウェイン家には仕えるなとジャービスは息子のアルフレッドに手紙を書きましたがジャービスもまたタロンに襲われて殺されるのでした。
時は現代に戻り、ジャービスの墓の前でアルフレッドとブルースがジャービスの死の真相について語るのでした。
梟の法廷が昔からゴッサムを支配していたこと、生前のブルースの母マーサの人柄が描かれたエピソードでした。
6章
電気技師の女性ハーパー・ロウの視点で描かれるバットマンの姿
ゴッサムシティの中でも貧民街であるナロウズ地区で電気技師として働き双子の弟と生活をしているハーパー・ロウが主人公。
チケットが当選してウェイン家のパーティーに招待されますがお菓子をバッグに詰め込んでるところアルフレッドに見つかります。
ハーパーはブルース・ウェインの語るゴッサムシティの再建計画を夢物語だと本気にしていませんでした。
家に帰ると弟のカレンがいじめっ子達に暴行された後でした。
カレンはゲイのようでそれが理由のようです。
髪を切りカレンと似た髪型にして一緒に登校するハーパー。
ハーパーとカレンはいじめっ子達にからかわれ喧嘩になり、自家製スタンガンで対応しますが7対2という不利な状況でナイフも使われそうになります。
危険な状況の中、突然辺りが暗くなり煙が巻かれます。
バットマンが現れいじめっ子を倒し𠮟りつけ去っていきます。
「マジでカッコ良すぎ。こんなの初めてみた。」
思わず口にするカレン。ハーパーもすっかりバットマンの虜になりました。
個人的にはゴッサムの子供や若者に好かれるバットマンの話が好きなのでここのシーンは良かったです。
まあこんなカッコ良い姿見たらみんなバットマンを好きになりますよね。
バットマンのファンになりバットマンの動画を見漁るハーパー。
しかしその動画の中でバットマンの監視システムの秘密に気づきます。
そしてバットマンへの恩返しとしてシステムの改良を施しました。
バットマンの居場所も追跡できることをカレンに話していると信号が消えました。
信号が消えたところに行くとそこにはタイガーシャークと戦うバットマンの姿がありました。
それを見たハーパーはバットマンの手助けをしてタイガーシャークは倒されるのでした。
後日、バットマンはハーパーの元を訪れてもう余計なことはするなと忠告をします。
ハーパーはバットマンに自分と弟を助けてくれたことの感謝を伝え、ゴッサムシティでの未来に光を感じるのでした。
ゴッサムシティの一般市民から見たバットマンのエピソードでとても良かったですね。
7章
ミスター・フリーズの視点で描かれる過去と復讐の物語
ミスター・フリーズ、本名ビクター・フリーズの過去の母親との思い出から物語は始まります。
氷の上を歩くビクターと母親。
母親は氷が割れたことにより冷たい水の中に沈んでしまいました。
現代になり、ビクターはタロンの蘇生技術を使って冷凍されている妻のノーラを蘇生させようとしたことを尋問されていました。
ビクターは収監されていた部屋の空冷システムを改造して脱獄します。
冷却液を口に含んで吐き出して人間を凍らせるというとんでもない技も披露されます。
脱獄したビクターはペンギンに会い、冷凍銃を受け取るのでした。
ビクターの回想が語られます。
ビクターはかつてウェイン産業の研究所で冷凍技術のラボの責任者をしていたのでした。
しかし研究所を訪れたブルース・ウェインは研究の内容に疑問を持つのでした。
冷凍されているノーラの蘇生に固執するビクター。
研究所に行きノーラに会いに行きますが別人にすり替えられていました。
そこにナイトウィングとロビンの2人が来てビクターと戦いますがビクターの方が優勢になるのでした。
そこにブルースとしてビクターを呼び出すバットマン。
回想が入り、ビクターがミスター・フリーズになる経緯が語られます。
バットマンとミスター・フリーズの闘いは始まります。
闘いは拮抗し、ミスター・フリーズの冷凍ボールで凍らされてもバットマンは自力で氷を粉砕をします。(かっこいい)
ミスター・フリーズは夫婦の邪魔をするなとバットマンに怒ります。
そこにバットマンは真実を告げます。
「ノーラはお前の妻じゃない」
ノーラの正体は数十年前に治療の為に冷凍睡眠をした女性でした。
ビクターは彼女に執着するあまりノーラを自分の妻だと空想して思い込むようになってしまったのでした。
バットマンはミスター・フリーズが本当に執着しているのは氷だけだと告げるのでした。
アメコミというのは時に設定が変わるものですがこの設定の変更は驚きましたね。
ミスター・フリーズといえばヴィランの中でも犯罪を行う動機が愛する妻を蘇生する為という比較的まともなヴィランのイメージがありました。
映画やドラマゴッサム、アーカム・ナイトシリーズでもその点が強調されていました。
ちなみにゲーム『バットマン アーカム・ナイト』のDLコンテンツの追加シナリオでは蘇生したノーラとバットマン、ミスター・フリーズの会話が見れます。
そのシナリオが良いものだっただけにミスター・フリーズがただの狂気のヴィランに変わってしまったのはちょっとショックでしたね。
まあノーラの為とはいえ無関係の人を殺しすぎではありましたが。
ラスト、バットマンに敗れたビクターは母との思い出を浮かべます。
事故の後、母親は精神に異常をきたしてしまいました。
そんな母親を車いすのまま再び氷の水の中に突き落とすのでした。
というわけで『梟の街』でした!
ブルースはゴッサムシティはバットマンの街でも梟の街でも無い、みんなのものだと語りましたがディックは
「少しはバットマンの街だろ」
と返しました。
たとえ梟の法廷に支配をされていてもバットマンを知る人達にとってはゴッサムシティはバットマンの街なのかもしれません。
次回は本作の外伝的作品の『バットマン:梟の夜』の感想を書きます。
読んで頂きましてありがとうございました!
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