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バットマン:ザ・カルト ネタバレあり感想・あらすじ解説


ダークナイトは、敗北の灰から蘇る



バットマン翻訳コミックの感想第11回は『バットマン:ザ・カルト』です。

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概要

本作はバットマンとカルト教団の対決を描いた作品です。
元々は1988年の作品ですが日本では昨年2023年の3月にShoPro Booksさんから翻訳されて出版されました。

作者のジム・スターリンはあのマーベルコミックのサノスを生み出したすごい人。

拷問と薬物で洗脳して信者を増やし教団外の人間は容赦なく殺害するカルト教団の描き方はかなり過激でバットマンも容赦なく肉体も精神も傷つけられて病んでいく描写がありますし血も死体もかなり出てくるのでかなり大人向けの内容です。

また、解説によると本作はクリストファー・ノーラン監督の映画『ダークナイト ライジング』のプロットに影響を与えたとのことで後半の話の展開が似ているところがあります。

ヴィランとしてはジョーカーとトゥーフェイスがバットマンの幻想に出てくるだけでカルト教団のリーダーのブラックファイアがメインとなります。

主な登場人物もバットマン、ロビン(ジェイソン・トッド)、ジム・ゴードン、ブラックファイアと多くないので分かりやすいです。

本作はジェイソン・トッドが2代目ロビンとしてちゃんと活躍してる数少ない貴重な翻訳本だと思います。(あとはデス・イン・ザ・ファミリーくらい・・・)

ちなみに自分はブラックファイアをゲーム『バットマン:アーカムナイト』で知ったのですがカルト宗教のリーダーという点以外は見た目も結構違うし性格も異なる印象です。

イラストアートは1980年代ということもあり少し古めですが読み辛かったり見辛かったりはしませんでした。

あらすじ

カルト教団に誘拐され、洗脳されたバットマン。闇の騎士が彼らの前に跪く時、ゴッサムの破滅が始まる……。 巨匠ジム・スターリンが、カルト教団とバットマンの死闘を描く。今読まれるべき問題作の邦訳がついに登場!

凶悪事件が絶えなかったゴッサムシティの犯罪率が、ある日急激に低下し始めた。街に溢れていたはずの路上生活者、ポン引き、ドラッグの売人、街娼たちも姿を消し、市民やマスコミはその状況を歓迎する。しかしそれと同時に、ゴッサムの守護者であるはずのバットマンが行方不明になってしまう。一見するとかつてないほどに平和になったゴッサムだったが、それはカルト教団による、恐るべき陰謀の序章にすぎなかった……。

バットマン:ザ・カルト | ShoPro Books|邦訳アメコミ|DC

物語は冒頭からバットマンがカルト教団に捕まっているところから始まります。

ゴッサムからバットマンは消えましたが同時に犯罪もほとんど無くなりゴッサムは平和になりました。

捕まったバットマンはカルト教団のリーダー、ブラックファイア助祭によって拷問と薬により洗脳されていきます。

カルト教団の目的とは?ブラックファイアの正体とは?

バットマンとカルト教団の対決の行方が描かれます。

登場人物(ネタバレ有)

バットマン(ブルース・ウェイン)

主人公。
ゴッサムシティの大富豪ブルース・ウェインがバットマンとして犯罪者を取り締まっている。
バットマンとしての活動を始めて10年目。
ブラックファイア助祭の率いるカルト教団に捕まり洗脳されてしまう。

ロビン(ジェイソン・トッド)

バットマンのサイドキック。ジェイソンは2代目のロビン。
行方不明になったバットマンをゴードンと協力して探す。

ジェームズ・ゴードン

ゴッサム市警の警視総監。通称ジム・ゴードン。
バットマンとは10年の付き合いがあり親友。
カルト教団により起きているゴッサムの異変に気付いていくが想像以上の勢力に押されていく。

アルフレッド・ペニーワース

ウェイン家の執事。
ブルースのバットマンとしての活動を支える。

ジョゼフ・ブラックファイア助祭

カルト教団の導師(シャーマン)でリーダー。
地下世界に潜み洗脳したホームレスたちを束ねて掌握している。
バットマンを洗脳して味方に引き入れゴッサムの地上世界を支配しようと画策する。
何故か100年以上生きている記録が存在する。
後の作品では『ディーコン・ブラックファイア』と呼ばれる。
ちなみにディーコンとは「助祭」という意味。

ラットフェイス

カルト教団の一員。
バットマンを拷問する。
カルト教団には自発的に入信した為、薬で洗脳されていない。

ジェイク・ベイカー

カルト教団の一員。
バットマンを含め洗脳された狂信者を監視する。

ジョーカー

トゥーフェイス

バットマンの宿敵のヴィラン。
洗脳されたバットマンの前に幻想として現れる。

解説・感想(ネタバレ注意)











CAPTER1 神判

物語はバットマンであるブルース・ウェインの悪夢から始まり、悪夢の中ではブルースは少年でジョーカーが出てきます。
ブルースは少年の姿からバットマンの姿に変貌して斧を持ちジョーカーを怒りに任せて惨殺します。

悪夢と自覚したバットマンが目を覚ますとカルト教団の巣窟である地下世界で両手を拘束されて血まみれで吊られていました。
この状況は1週間以上続いているとのことです。

カルト教団の一員であるラットフェイスとリーダーであるジョゼフ・ブラックファイア助祭はバットマンをカルト教団の仲間にしようと洗脳をかけます。

一方でゴードン警視総監とロビンであるジェイソン・トッドは行方不明のバットマンと住人が次々と消えているゴッサムシティについて話すのでした。

また、ゴッサムシティの犯罪は減り、市民やテレビキャスターはこの状況を喜んでいます。

ブラックファイアはバットマンの不殺主義を強く批判し、拷問と薬によって弱ったバットマンは神の力の宿るトーテムの像を見せられカルト教団の洗脳に屈してしまうのでした。

CAPTER2 虜囚

バットマンは幻想の中で機関銃を持ち、トゥーフェイスを殺害しますがだんだんとトゥーフェイスの顔が親友のゴードンに変わっていきます。

目を覚ますとバットマンの周りでカルト教団の信者達がマフィア達を殺害していました。
バットマンもカルト教団の為に何か行動をしようとしますが結局何も出来ませんでした。

地下世界に戻り一人になったバットマンは朦朧とする意識の中でラットフェイスに声をかけられ地上に出ます。
ラットフェイスは個人的な恨みで殺人を行い、目撃した警官を殺害しようとしますがバットマンがラットフェイスを殴り倒して警官を助けます。
警官は様子のおかしいバットマンを心配しますが洗脳されているバットマンは警官も殴ってしまうのでした。

バットマンはそのままカルト教団から逃亡し、一方でゴッサム市警に捕まったラットフェイスは洗脳されていない為ゴードン達警官にカルト教団の実態とブラックファイアの目的を話すのでした。

ブラックファイアの目的とカルト教団の実態が報道されましたが報道陣は既に教団の支配下にあり一般市民は犯罪者が減ったことで教団を支持する報道をしてバットマンも教団に加わっている報告があると語るのでした。
ブラックファイアも既に巨大な勢力を手にしていたので焦っていません。

時間が経ち、バットマンの洗脳は解けかけていました。
このまま逃げればもうバットマンとしては生きられないと思ったバットマンはブラックファイアと対決することを決めました。

ブラックファイアは教団の信者を演説で煽り、ゴッサムの支配権を手にすると宣言をします。
その隙にバットマンがブラックファイアの私室に忍び込むと中は他の陰気な地下世界とは異なり豪華な装飾が施されていました。
バットマンはブラックファイアを詐欺師だと確信し、警察を連れて来ようとしますが再び教団に捕まってしまいました。

ゴッサムの地上世界では教団が動き市長や市長候補の議員が暗殺されます。
さらにブラックファイアの資料をゴードンが調べると資料は19世紀末からのものが含まれていました。

教団に連行されていたバットマンは隙を見て水路に逃げ込み、こっそり忍びこんでいたロビンもそれを追って水路に入ります。
ロビンがバットマンを追うと真っ暗で不気味な空間に出て、ロビンは恐怖の中ライトを点けるとそこは死体の山でそこにバットマンも居て「地獄へようこそ」と繰り返すのでした。

CAPTER3 脱出

ロビンはバットマンを正気に戻し、共に脱出を試みます。
バットマンはブラックファイアへの敗北を認めます。
ロビンは自分たちでブラックファイアを止めるんだろと問いますが、バットマンははっきりとは答えませんでした。

ゴッサムではブラックファイアを支持する層が増えていき、さらにゴッサム外からもブラックファイアの勢力に加わろうとするホームレス達が集まってきていました。

ブラックファイアは教団幹部のジェイクにかつて犯罪や政治活動を行っていたが最終的には支配の手段として宗教しかないと悟ったと語ります。

バットマンとロビンは地下を脱出する中で例のトーテムを見つけますがバットマンが見たときと異なり実際は小さく、薬の幻覚で大きく見えていたのでした。

ゴッサムシティではカルト教団の活動が凶悪に過激化していき、兵器庫を襲い武器を奪い武装化します。

ゴードンが会見をしていると銃で狙撃をされてゴードンは倒れました。
州知事は州軍をゴッサムシティに派遣することを決めるのでした。

バットマンとロビンが地下を進んでいくとブラックファイアが生贄となった人の血を浴びていてこれが不老不死の秘訣だと語るのを見かけます。
バットマン達はジェイクに見つかり、信者達に追われます。
監禁と洗脳でバットマンはすっかり戦う力を失っていました。

地上では教団の信者が報道スタジオを占拠してブラックファイアを声明を流すのでした。

バットマンとロビンは信者達に追い詰められますがバットマンは戦えずロビンが1人で奮闘しますが1人ではどうしようもなくロビンはバットマンに助けを求めます。
やがてバットマンの表情がだんだんと怒りとなっていき力を爆発させて信者達をなぎ倒していきます。

ここの力を取り戻したバットマンはかっこ良く、表紙のイラストもここのシーンとなっています。

一方でゴッサムに派遣された州軍はカルト教団の信者達によって全滅させられてしまいました。
これにより州知事によってゴッサムシティは災害地域となり市外への避難を呼びかけられました。

ブラックファイアは勝利を宣言し、カルト教団の信者達は地上世界に上がってきました。

バットマンとロビンも地上世界に戻りますが既にゴッサムシティがカルト教団に乗っ取られたことを知ります。
迎えに来たアルフレッドの車に乗り、帰る途中バットマンはゴッサムはブラックファイア助祭のものであり二度と戻らないと語ります。

ゴッサムのためにできることは何もない

全て終わった

我々は敗北したんだ


バットマンが敗北を認めて諦めるという珍しい姿にロビンもアルフレッドも戸惑います。車はゴッサムの外に駆けていくのでした。

CAPTER4 戦闘

ウェイン邸に帰ったバットマンは悪夢の中で死んだ両親にブラックファイアから逃げたことを責められます。
目を覚ましたブルースばゴッサムに戻りブラックファイアに立ち向かうことを決意しました。
アルフレッドにも背中を押されブルースはこれまでのバットマンとしての活動とブラックファイアへの敗北を振り返り改めて闘いへの意思を燃やします。

ダークナイトは、敗北の灰から蘇る

震撼せよ、ブラックファイア!

バットマンがやってくるぞ!


ゴッサムシティではブラックファイア率いるカルト教団が州軍を圧倒し勢力を広げていました。
ブルースとジェイソンは麻酔弾の銃の特訓をしていました。
銃を使うことに違和感があるジェイソンに目的に合わせて武器を選ばなければとブルースは言います。
そこにコウモリが現れてジェイソンは幸先が良いと言います。

ブルースはそのコウモリを見て両親が目の前で殺された時のことを思い出します。
呆然とするブルースにジェイソンはどうしたのかと問います。


私はずっと自分を騙してきた・・・

両親の仇をとるためバットマンになり・・・犯罪と戦う

それは嘘だ

本当は恐怖に打ち勝つためだった


犯罪者もコウモリもブルースにとっては恐怖の対象。
コウモリを纏い犯罪者に立ち向かうことで恐怖を克服したかったのですね。

ゴッサムシティではブラックファイアの手によってゴッサムに通じる橋が爆破され、さらにゴッサム市外に脱出しようとした市民が皆殺しにされるという事態にまで発展していました。

このゴッサムシティに市民が捕らわれ脱出できず助けも来れない状況は映画『ダークナイト ライジング』に似ています。

ゴッサムを支配したブラックファイアは救世主としての殉教、つまり死を望んでいました。

銃で撃たれたゴードンは入院しており、バットマンが訪れました。


「・・・待っていたよ。随分と長くかかったじゃないか」

「ちょっと忙しくてね。今夜、ゴッサムに戻る。

 私たちの街を取り戻す時だ」

「そいつはいいな・・・

あのクソ野郎をぶちのめしてくれよ?」

「任せておけ、友よ」


2人の長年の友情が感じられる良い会話ですね。
このシーンもちょっと映画『ダークナイト ライジング』に似たシーンがあり、あちらも好きなシーンです。

バットマンとロビンは新型の巨大なタイヤの重装甲のバットモービルを駆りカルト教団の要塞を突き進みます。
麻酔弾のマシンガンとミサイルを駆使して武装したカルト教団の信者達を倒していき、最後の一人にメッセージを与えます。


ブラックファイア助祭に伝えろ

・・・バットマンが狙っているとな


バットマンとロビンはバットモービルでブラックファイアを目掛けて目の前で救えなかった市民の死や数えきれないほどの吊られた死体に心を痛めながらも進みます。

地下世界に2人は入りますが信者達の猛攻にロビンは動けなくなり、バットマンは1人でブラックファイアの元に向かいます。
地下にもブラックファイアの生贄となった信者達の死体が吊られ、バットマンはこの死と狂気の連鎖に終止符を打つこと決意します。

地下の奥のアリーナでついにバットマンはブラックファイアと対峙します。
信者達に囲われる中でブラックファイアはバットマンに自分を殺すようにけしかけますがバットマンは拒否しブラックファイアを気絶させないように痛めつづけます。

痛めつけ続けられたブラックファイアは耐えられなくなりたまらずバットマンにやめるように懇願します。
神のように慕っていた存在の弱き姿に信者たちは呆然とします。

ブラックファイアは信者達にバットマンを殺すように呼びかけますが失望し裏切られた信者達はブラックファイアを囲い惨殺するのでした。

ブラックファイアは死に、カルト教団の幹部たちは拘束されゴッサムには平和が戻りつつありました。

バットマンは1人地下に潜り、トーテムであった木の塊を燃やすのでした。


こうしてバットマンとカルト教団の対決は終わりました。

冒頭から既に捕まっているバットマン。
さらに洗脳されて屈してしまい、一度は完全に敗北して退散するという珍しい展開でした。
そこからの復活からの逆転は王道ですが燃えますね。

興味深いのはゴッサムの最大戦力だと思われたバットマンが洗脳されて信念を失った瞬間カルト教団にとってホームレス以下の役立たずのお荷物になっていたことですね。

バットマンの強さの源はゴッサムや弱者を守るという信念からきているというのが良くわかります。
それでも人殺しだけは必死に抵抗して行わなかった所はとてもバットマンらしいですね。

ブラックファイアは一応生き血を浴びて不老を得ていたという人外の存在なのですがやってることはホームレスを誘って薬で洗脳して支配しているだけで本人もまあまあムキムキですがバットマン相手には手も足も出ずボコボコにされて許しを懇願するという大物なのか小物なのかよくわからないキャラクターです。
最後は支配していた信者達に失望されて殺されるという末路も皮肉があって良いですね。

そういえば結局ブラックファイア達はバットマンの正体がブルース・ウェインだということを知らなかったと思うのですがマスクを取ろうとは思わなかったんですかね?
バットマンのマスクには仕掛けがあって他人には取れないらしいですが洗脳状態なら外せられたと思うのですが正体に興味無かったんですかね?
それか実はブラックファイアはマスクを取って正体を知ったけれどブルース・ウェインだと信者達に知られたら妬みや逆恨みで殺されると思ったから教団内ではマスクを取らないようにしたとか・・・どうなんでしょう。

まとめ

バットマン対カルト教団という異色の作品ながらバットマンの敗北と復活ゴードンとの友情ロビンとの名コンビが描かれるという王道もののストーリーであり地下世界から始まりやがてゴッサム全体を戦場へ変えるという話のスケールの大きさも有り、読み応えのある作品でした。

というわけで『バットマン:ザ・カルト』でした!

読んで頂きましてありがとうございました!

次回の感想についてですが本作でも活躍した2代目ロビンであるジェイソン・トッドの死が描かれる『バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー』を書こうと思います!

また読んで頂けると嬉しいです!

よろしくお願いします!

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