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睡眠の基礎:うつ病も炎症が関連してるってマジですか?

 最近、中途覚醒や早朝覚醒が増えたので、原因を探って勉強していたら可能性の高いストレスに繋がり、飛躍してうつ病に飛んでしまって、結局炎症と関係があるようなのでシリーズに追加。脳内の炎症とうつ病っていうのは関係あるよって話はすこしだけ聞いたことがありますが、肉体的な病気だけでなくメンタルも悪化させるんですね。もはや人類の大敵ですな。
※個人的なメモになりますので参考程度にどうぞ。

【なぜ眠くなるのか】

 そもそも、なぜ夜になったら眠くなるのかってことを整理。
聞いたことがあると思いますが、1日のリズムをサーカディアンリズムだったり、概日リズムと言ったりします。
人間のリズムは「きっちり24時間ではなく、だいたい24時間」だそうです。
このリズムに睡眠圧というものが加わって、睡眠と覚醒が決まっているのですが、睡眠圧とはいわゆる眠気のことですね。
アデノシンという物質が脳内で増えるから眠気を感じると言われております。起きてから徐々に増え始め12~16時間がピーク。

それから、明暗刺激で松果体からメラトニンが分泌されて寝る準備が始まります。開始のスイッチは日が沈んでからとか、目に光が入ってから大体14~16時間後くらいなんて言う人もいます。
そんな大切なメラトニンですが、作られるにはセロトニンが必要で、セロトニンにはトリプトファン(必須アミノ酸のひとつ)が必要。
なので、食事でトリプトファンを摂取せねばなりません。運動によって血中のトリプトファンが脳内に入っていくとセロトニンになるようなので、健康的な睡眠をしたいと思うのなら栄養状態と運動にも気を使わないといけないわけです。

【覚醒の仕組み】

 そもそも、どうやって人間は起きているのかという仕組みもわかってる範囲で整理。
さっきメラトニンの話が出てきましたが、メラトニンは太陽光が目に入ると分泌が止まります。これは瞼を閉じていても光を感知できれば止まるらしいので、これにはびっくり。
朝方になるとほとんど測定できない量になり、アデノシンも睡眠により減少。これに概日リズムが合わさって覚醒という流れ。

【うつ病と炎症の関係】

 うつ病っていうのは気分障害(精神疾患)のひとつでありますが、大体の症状として気分の落ち込みや意欲の低下、眠れないか寝過ぎてしまう、疲れやすい、動悸などの身体症状が出て日常生活に影響が出ている状態ですね。抑うつ状態が重度の状態ですが、炎症と関係があると最近言われるようになりました。炎症ってなんなの?って人は過去に書いてある記事をお読みくださいませ。

 さて、うつ病と炎症の関係ってどうなのよって話ですが、うつ病患者の末梢血中では好中球や単球などのミエロイド系細胞が増加しているそうな。ミエロイド系細胞は免疫系を活性化させる役割ですが、ストレスにより出てくるコルチゾール(グルココルチコイド)がスイッチとなります。コルチゾールを放出する過程は、HPA(視床下部-下垂体-副腎)軸の活性化です。これはストレスで活性化します。

ですので、ストレス→HPA軸活性化→コルチゾール放出→末梢血中のミエロイド系細胞の増加の流れですかね。
ここまで勉強して、コルチゾールって天然のステロイドホルモンだから抗炎症で働くんじゃないの?って感じになりましたが、どうやら慢性的な状態になると受容体の感受性が低下して炎症抑制効果が減弱するのだそう。何年か前に副腎疲労とかが有名になったと思いますが、慣れってやつですかね。

他にもミクログリアの活性化とうつ病の関連もあるよーって言われています。脳内で炎症が起きているのではないかってことなので、神経変性疾患でうつ症状が出るのはこういう事でしょうか。ミクログリアっていうのは中枢を担当する免疫細胞と言われております。

【睡眠とストレス】

 ストレスを感じるとなぜ睡眠の質の低下に繋がるのか。これは自律神経系との関わり。ストレスを感じるとHPA軸が活性化しますが、他にもノルアドレナリンが放出されます。
交感神経を活性化させるホルモンなので、ストレスが長期化・慢性化すると眠れなくなるのはなんとなくわかります。
ノルアドレナリンは血糖値や血圧を上げる効果があり、好中球や単球の増加も促進するので必要以上に放出されると悪い方に働くみたい。
他に放出されるストレスホルモンは、コルチゾールとアドレナリンですね。結果的に、心拍数・血圧・呼吸数が上昇することになります。
それから、慢性的なストレスの積み重ねで副交感神経の働きが低下するので、これで睡眠の質の低下や寝つきの悪さ、中途覚醒が増えるのでしょう。
質の低下っていうのはあんまり感じませんが、睡眠不足っていうのは自覚しにくいらしいですから。

【睡眠とうつ病】

 うつ病の症状のひとつに不眠がありますが、うつ病の方はノンレム睡眠が短く、レム睡眠の時間が長い特徴があるそうな。
他にも入眠からレム睡眠に至るまでの時間短縮、総合的なレム睡眠の時間が延長するなどがあるとのこと。
ノンレム睡眠は記憶の形成に関わるので、うつ病になると記憶力だったり、認知機能が低下するのはこういうメカニズムですかね~。アルツハイマー病との関連もわかってきているっぽいので、テスト前に徹夜しても1週間後にはぜーんぶ忘れてるのは睡眠不足のせいかと納得。
ところで、脳内で炎症が起きているのなら記憶に関係のある海馬とか大脳皮質が萎縮しているのではないでしょうか。怖すぎる。

最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

参考文献
谷口将之.北岡志保.古屋敷智之:ストレスによる炎症応答のメカニズムとその役割.生体の科学75(5),389-392,2021.
睡眠こそ最強の解決策である:マシュー・ウォーカー著 SBクリエイティブ株式会社
相澤秀紀:うつ病の睡眠障害における神経回路の役割.生体の科学71(1),50-53,2020.
脳を鍛えるには運動しかない-最新科学でわかった脳細胞の増やし方-:ジョン・J・レイティ/エリック・ヘイガーマン著 NHK出版
高田明和.清水史子.高尾哲也:総説 うつ病とトリプトファン代謝.BRAIN and NERVE70(9),1025-1031,2018.

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