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📓話しかける側に必要な意識|相手を困らせないために。

こんなことを考えるようになったんだ、私も年を重ねたもんだと思う出来事だった。

四月に入ってピカピカの新入社員を迎えた。数カ月は研修を受け、その後に配属される予定である。新しい環境、仕事に早く慣れなければと思っているのか、顔を合わせるたびに緊張している様子が伺える。どうにかリラックスして過ごしてほしいと思う日々だ。

就業時間内で新卒社員たちが安心できるのは、唯一昼休みだろうか。同期同士で話が盛り上がり、仕事の最中とは違う本来の姿が垣間見える。その様子を見ると、どうしても声をかけたくなってしまうが、私は敢えてそれをやめている。


彼(彼女)らには彼らの世界がある。


私の話をしよう。承知の通り、土日は野球観戦に明け暮れている。大学野球へ行けば、選手たちは全員年下だ。それどころか、私はコーチと同じ年齢くらいである。彼らからみた私は、れっきとした大人だ。

もちろん、それなりに信頼関係を築けている人もいる。しかし、彼らは私に多大なる気を遣っている。私自身が親しみを抱いていたとしても、彼らにそれは通用しない。気分よくコミュニケーションが取れるのも、彼らの配慮あってこそだ。それを忘れてはいけない。

これは何も野球の世界だけに限らない。会社でも同じことがいえる。新卒社員くらいの年齢の選手と話をすることが多いと、どうしても親しみを感じてしまう節がある。しかし、それはこちら側の勝手な思い違いである。

自分が学生の頃、先輩に付きっ切りで話しかけられてどうだっただろう。それはそれは嫌ともいえず、気を遣うしかない。早く時間が経ってしまえばいいのにと思っていた。会社でも同じである。どれだけ信頼をしている上司だったとしても、仕事に関係のない長時間の会話は気疲れしてしまう。


こちらが対等だと思っていても、世間では対等とみなされない。


礼儀に上下関係はないと私は考えている。相手が年長者であっても年少者であっても『敬い』の気持ちは忘れてはいけない。そして、誰に対しても丁寧に接する。人としての基本である。しかし、どうしても年齢的要素は拭えない。矛盾する思考ではあるが、対等でありながら、対等でないことを肝に銘じる必要がある。

先日の会社帰り、新卒社員たちが私の前を歩いていた。ああ、今週も仕事を終えてきっと気持ちが軽いだろうな。来週も元気に出社してくれたらいいな。そんなふうに思っていた。色々考えた結果、私はペンギンのごとくノロノロ歩くことを選択した。出来損ないの私の最大限の配慮である。

彼らの世界を壊してはいけない。


きっと話しかけたとして、露骨に嫌がりはしないだろう。それを理解しているからこそ、私は姿を消したかった。むかしむかし、先輩に付き合わされた苦い思い出を頭に浮かべながら。ただただ、ゆっくりのんびり帰ってほしかった。

コミュニケーションは何も話すことだけではない。話さないことも、時には大切なのだ。人の世界を邪魔してはいけない。かつて自分がされて嫌なことを、どうしてこうも繰り返そうとしてしまうのだろう。自分がその年齢になったのに、なぜわからなかったのだろう。気づかせてくれて本当にありがとう。これから先も、改めて考えていかなければと思い知った。

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誰もが平等に年を重ねていきます。私自身も心はまだまだ学生気分が抜けないこともあります。しかし、もういい大人です。

大学野球で様々な年齢の方々と交流すると、それを強く感じます。学生時代の自分を懐かしみながら選手と接すると、どうしても親しみが沸いてしまいます。ついついたくさんの話をしてしまいますが、彼らは物凄く気を遣っているのです。ストレートな言い方をすると『迷惑』になるのです。

会社で上司と話をすると、どんなに信頼をしていてもしんどいと思うことがあります。それと同じような気持ちを抱いて当然だと、私は考えるのです。年を重ねたからこそ、対等でありつつ、そうでないという矛盾を知る必要があります。

それはSNSの世界でも同様です。様々な世代の人々と交流することがありますが、その際には細心の注意を払います。特に大学野球の投稿が多いですから、彼らと同世代のフォロワーが自然と増えていきます。過剰に気にしすぎて壁を作るのはいけないですが、彼(彼女)らの気持ちを優先して交流しなければなりません。どうしたら心地良いやり取りができるのか。それらを念頭に置く必要があります。

私は見本となる大人には程遠い存在です。だからといって『できません』は通用しません。見本や手本は大袈裟にしろ、年少者に配慮しつつ、自分という存在を確立しなければならないと思っています。

さあ、とても難しい年齢に突入しました。いつまでも若者気分ではいられません。年少者を気遣い、年長者を敬う。いや、いつなんどきも人を尊重する。そんな人間であり続けたいです。


いただいたサポートは野球の遠征費、カメラの維持費などに活用をさせていただきます。何を残せるか、私に何ができるかまだまだ模索中ですが、よろしくお願いします。