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「文章力より、コンテンツ力」 -note for shopping プロデューサーに聞く、「お店のnote活用方法」

せっかく始めた「ネットショップ」。その運営については様々な悩みもあります。

その中でも「集客」「接客」については、多くの方が悩まれるポイントです。

今回は、noteで「note for shopping」プロデューサーを務める最所あさみさんにインタビューを行い、最近の「モノの売り方」に関する考え方や、noteの魅力やネットショップにおけるnoteの活用方法などについてお話を伺いました。

最所あさみ(さいしょ・あさみ)/Retail Futurist・noteプロデューサー
大手百貨店入社後、ベンチャー企業を経て2017年独立。ニューリテールにまつわるコンサルティングや執筆、コミュニティマネジメント、イベントプロデュースを行う。
またnote有料マガジンを通して独自の考察や海外事例の紹介、小売や店舗を軸にしたコミュニティ運営を行う。
2019年7月よりnoteプロデューサーに就任。ブランドや店舗オーナーがnoteを通して発信し、顧客とコミュニケーションをとる活動全般を支援する。

最所さんについて

――リテイル・フューチャリストとして活動され、2019年7月1日から「note for shopping」プロデューサーに就任された最所さんですが、現在の主な活動内容について教えて下さい。

私は日頃から、モノを売っている人たちが、「自分の考え・ストーリー」を、「自分で語る」ことをサポートする活動を行いたいと考えています。
そのための具体的な活動として、自身のnoteアカウントを通じた日々の情報発信に加え、学びのコミュニティ「Nサロン」で受け持つ講座(※編集部注・現在は申込終了)では、お店・ブランドが発信し続けるための習慣作りを支援したり、お店・ブランドが書いたnoteを読んだ読者がスムーズに買い物できる機能「note for shopping」の利用促進を目的としたサービス連携の推進を行っています。

――もともとは百貨店勤務からキャリアをスタートされたと伺いました。なぜ百貨店で働こうと思ったのでしょうか?

もともとモノを売るということに興味があったのですが、それに加えて、「Webでの購買が当たり前になるほどリアルの店舗の価値が上がる」のではないかと感じていたのが理由です。

私がキャリアをスタートした当時は、まだECが広がりはじめたぐらいのタイミングで、企業がFacebookをはじめとしたSNSの活用を始めたばかりの時期でした。自分自身も大学時代からSNSやインターネットに親しむ中で、Webは物理的な制約がないので無限にページが作れてしまうため、ネットショップを作るプレイヤーが増えれば増えるほど見つけてもらうための労力が大きくなると感じていました。

一方で地球の面積は有限なので、見つけてもらう確率を考えたらWebが盛り上がれば盛り上がるほどリアルの価値が上がるのではないか。
そんな逆張りの発想でリアル店舗に興味を持ち、百貨店に入社したんです。

――なるほど。そこから、現在の「オンライン」により近いお仕事に転身されたのは何か理由があったのでしょうか?

「オンライン」と「オフライン」の両方の力をつける必要性を感じた、というのはあります。

百貨店で働く中で、やはりIT技術の活用は絶対に必要だと感じるようになりました。そこで、一度外に出て「オンライン」の力をつけることで、百貨店の「オフライン」に活かせるのではないか?と考えました。

また、「どうやったらお店の価値が上がるのか?」「何が顧客にとって最も嬉しいことなのか?」ということを自分なりに考えてnoteで発信し続けた結果、小売の未来について相談したいという方が増えてきて、今に至るという形になります。

わざわざ「見つけに行かなくても」情報が入ってくる時代

――最所さんは、これまでのお仕事を通じて、「お店」や「小売」という領域に関わり続けていらっしゃいますが、この5年間の間に、「お店」の情報発信のスタイルや、「購入者」の購入動機にはどんな変化があったと思いますか。

まず「購入者」としては、SNSの利用が増えた結果、自分から情報を探しに行く必要がどんどん無くなっている傾向にあります。

ご自身の生活を振り返ってみて、何かが欲しいと思って検索したり雑誌を読んだりすることが減り、なんとなくSNSを眺めていて目に止まったものを欲しいと感じたりそのまま購入したりすることが増えたように感じませんか?
さらに、情報を知った後に覚えておく必要もなく、すぐにその場でオンライン購入できてしまうという環境にもなってきましたよね。さらに、オンラインで見た商品を実際試すために店舗に出掛けてみるような行動も増えています。

つまりお店自身が「オンラインの情報流通」に乗っていかないと、購入者に見つけてもらえないようになったという変化があります。ですので、お店が自ら顧客が集まるところへ出向き、コンスタントに情報を発信していく必要がでてきたということだと考えています。

昔のように、ホームページにお客様が来るのを待っていれば検索してたどり着いてくれるという時代ではなくなり、SNSを通して情報の接触頻度をあげる必要がでてきたということだと考えています。

――なるほど。そう考えると、確かにだいぶ変わりましたね・・・

私はこうした状況を、「ブランドとメディアの境目が無くなってきている」という言葉で、これまでも継続的にお伝えしてきました。

これは購入者側の視点で言えば「情報を得ること」と「買うこと」の距離が縮まってきているということだと思います。

数年前に「メディアコマース」という言葉が流行しましたが、最近だともうあまり聞かなくなってきているのは、ブームが終わったからではなくむしろメディアとコマースの一体化が当たり前のことになったからではないでしょうか。

似たような価値観の人と、noteで出会う

――note では、既にたくさんの「お店」が自分のお店や商品を紹介されていると思います。これまで、どんな記事が話題に上がってきましたか?また、どんな記事が話題になりやすい傾向にあると思いますか?

色々ありますが、例えば最近だと中川政七商店さんの記事などでしょうか。

「お店」が書くnoteで話題になりやすい記事は、商品そのものの説明よりも、その商品やお店・ブランドの「裏側」を見せるようなものが多いです。
商品の説明はネットショップのページに書いてあることも多いですし、売るためのページを読もうと思う人はなかなかいませんよね。それよりもブランド立ち上げのエピソードや日々のちょっとした気づきのような「人柄がわかるコンテンツ」がよく読まれる傾向にあります。

また、お店やブランドの裏側にまつわるnoteを書いた後にTV・雑誌・オンラインメディアなどの取材に繋がったケースもよく聞きます。こうした記事があると、媒体側もお店・ブランドの「仕組み・考え方」を事前に理解しやすいので、取材しやすいのかも知れません。

――取材のきっかけにもなっているとは・・・貴重な情報ありがとうございます(笑)。最所さんが考える「noteのよさ」 って、どういうものだと思いますか?

まず、単なる「情報の発信」だけではなく、note上でコミュニケーションの手段がいくつかある点ですね。例えば、記事に対して「スキ」がつけられたり、「フォロー」をすることができるSNSのような機能はもちろん、気に入った記事に投げ銭ができる「サポート」機能や購入後に特におすすめしたいものに「オススメ」をつけられる機能もnoteの特徴です。ただ読んで終わりではなく、そのあとのコミュニケーションが発生するのは良いところだと思います。

また、noteを通じて似たような価値観の人と出会えるというのも、魅力です。note上では決してハッキリとした領域分けがされているわけではないのですが、ハッシュタグや記事の引用などを通じてグラデーションのようにコミュニティが形成されています。
コンテンツをベースに出会った人とイベントなどで直接会ってコミュニティが広がっていくのもnoteのユニークな点だと思います。

――「意外と似たようなこと考えているなあ、この人」 という発見ができるということですよね。

はい。今は「顧客」が「作り手」でもある時代なので、例えば異業種同士であっても、お互いの考え方を知る機会や、繋がる機会としても活用されています。また、そうやって繋がった人々の中から、新しいものが生まれていくケースもあります。

例えば「ひとり料理の楽しみ方(有賀薫×山口祐加)」というイベントは、「食」という同じテーマでnote上で人気だった二人が、トークイベントを一緒に実施した事例ですが、双方がnoteを使っていなかったら実現していなかったイベントではないでしょうか。

――そんな事例まであるんですね・・・面白い!

「お題投稿」なら、書くネタに困らない

――一方で、作り手側の人には「SNS」や「note」のような情報発信ツールに対して、まだまだ及び腰の人も多いかと思います。こうした状況に対して、noteならではの解決方法やメリットはありますか?

noteに限らず、SNSのようなツールは「毎日投稿しなければ効果が薄い」のようなことを言われがちで、それがかえって書けない時の罪悪感に繋がってしまうケースもあるような気がしているんですが、私個人としては人によって最適な頻度が異なると思っています。。もちろん、毎日書けるに越したことはないのですが、例えば寡黙な人に「もっと話した方がいいよ!」と急に毎日数分のスピーチを課したりしませんよね。おしゃべりに最適なテンポがあるように、発信も自分に合ったペースでOKで、頻度が少ないことで罪の意識を感じる必要はないと思います。

――それは勇気を貰えるコメントですね!(笑)。あと、書き始めると「何書けばよいか分からない」問題もよく聞くのですが・・・

noteの場合は、「お題投稿」という形で、定期的に書くきっかけを用意しています。様々なお題がありますので、是非こちらを活用して記事を書いてみていただければと思います。

またnote記事は、編集部のおすすめとしてnote公式SNSなどでピックアップされ紹介される可能性もあります。ここでピックアップされる基準はフォロワー数や知名度ではなく「内容」をもっとも重視しています。なので、仮に1本目の記事であっても、質の高いものであればおすすめの紹介されてたくさんの人の目に触れる可能性もあります。他のSNSだと、フォロワーを100人・1000人増やすところまでが大変だったりするのですが、いいコンテンツを素早く発掘することで早く成功体験を得てもらうことはnoteが大事にしていることのひとつでもあります。

――確かに、1本目から沢山の方に読まれるチャンスがあるのは魅力ですね。

ネットショップオーナー向け!note の活用方法

――我々「BASE」が日々ショップオーナーの方々とお話しする中で、よくある質問が「集客」に関する内容です。その中でも、SNSについて多い質問が「なにを書けばよいか分からない」というものです。冒頭のお話にもあった通り、モノの売り方・買い方が変わってきている時代ですが、いま購入者の方は、どんな情報を求めていると思いますか?noteの記事がどんな内容であれば、読んでもらいやすくなると思いますか?

「モノ」そのものに関する内容よりは、「自分の話」をいかにしてもらうか、が重要ではないかなと思います。

そもそも何でそのブランド・モノづくりをはじめたのか?だったり、作っている裏側、どこが大変なポイントなのか、どこがコダワリなのか、という「自分の考え」「自分らしさ」の方が、実際には読者の興味を惹き、読んでもらえるチャンスが高まるのでは?と思います。

こういった内容は、どんな人でも普段から絶対に考えている内容だと思うんです。はじめて会った人から「どういう仕事をしているの?」「なんでこれをやっているの?」と聞かれることがありますよね。そこで答えていることを改めて文字にするという感覚で書いてみてもらえればと思います。。
もちろんすぐに言葉にしきれないケースもあるかもしれませんが、自分の考えを書き出して改めて言葉という「枠」に入れることで、「自分はこんなことを考えていたのか!」と新たな気付きが得られることもあると思います。

――確かに、考えていないわけではなく、文章としてアウトプットしていないだけですもんね。ただ、そうは言っても、人に伝えるためには、文章力・構成力が求められるのでは?と不安という人も多いのではないかと思うのですが・・・

私は常々、「文章力より、コンテンツ力」だなと思っています。
例えば、山奥で30年、木彫りの熊を作り続けていたお爺さんがいたとします。これを聞いた人って、木彫りの熊そのものより、「なんで30年、ひたすら木彫りの熊を作っているの?」「なんで修行が必要だったの?」という方に興味が行きますよね?こうした、その人が培ってきた「コンテンツ力」こそが、その人やブランドの魅力のはずです。

そして内容さえ面白ければ多少文章力が低くても読んでもらえますし、むしろ自分の言葉で書かれた内容だからこそ得られる共感もあるはずです。
それをきっかけに、取材を受けることになれば、プロとして改めてしっかりとした文章力で書いてくれる人を見つけられるかもしれないですしね。

――なるほど、これも文章がニガテな人には勇気が貰える言葉ですね(笑)。

あとは、実際に書き出した場合に、「結論」が書けなくて悩む人も多いですよね。書きたいことがあったとしても、「結論がまとまっていないから、もうちょっと考えてから書こう」と考えているうちに数ヶ月経ってしまって…という声もよく耳にします。。でも実は私も結論を決めずに書き出すこともありますし、はじめに考えていた結論とは違うかたちで着地することも多いので、結論が見えていなくてもとりあえず書き出してみるのも大切だと思います。

途中まで書いて保存しておくと、思考が可視化されている状態なのでバックグラウンドで思考が動いて急に結論を思いつくこともありますから。

――テクニック的な部分で悩まれているようであれば、最所さんがNサロンで行なっている講義を有料マガジンにまとめた 文章を「届ける」ために意識したいことを読んでみるのも良いかも知れませんね。

使わないのは損!「note for shopping」

――noteでは、note上でECの商品を表示できる機能「note for shopping」が提供されていますが、この機能のメリットはどういったところにあるでしょうか?

note for shoppingは、note記事内に商品情報をカードとして簡単に埋め込める機能です。商品URLを記事内に貼り付けるだけで、商品名、価格、商品写真、購入ボタンが表示される機能です。

記事を読んでいる人は書き手が思っているほど記事内のリンク先には遷移しません。

例えば、記事でどんなに素晴らしい商品の紹介がされていても、価格や他の色、商品写真といった情報がなければ、購入を検討するための素材が揃っていないので買おうというスイッチが入りづらく、読んで終わりになってしまうんです。

つまり記事から商品ページに飛んでもらうには、記事のページ内で「ちょっと欲しいかも」と思ってもらう必要があり、そのためには購買で必要な情報が揃っていることが重要なんです。

note for shoppingの商品埋め込み機能を使っていただければ必要最低限の情報が記事内に表示されるので、購入者に対する「リンク先に飛ぶ前の信頼感・安心感」に繋がり、リンク先に飛んでもらいやすくなる効果が見込めます。「別の写真ないかな?」ですとか、「もうちょっとだけ低価格なモノが無いかな?」といった気持ちでリンクに飛んでいただけるようになると、購入までのハードルも少し下がるのではと思います。

また、あくまで「カード」として自動的に表示される仕組みなので、noteに直接情報を入力するよりも自然に商品をアピールできるのもポイントですね。

「買ってくれた人」に向けた記事を書いてみよう

――我々としても、「BASE」のショップオーナーの皆様には、是非noteを活用して自身のブランドについて語ってもらいたいと考えています。最所さんとしては、どのような記事を期待しますか?

その人にしかかけないコンテンツが「その人の言葉」で書かれている記事を期待しています。「世の中にこれを訴えかけたい!」とか「これが私たちの哲学です!」といった大げさな内容でなくても良いので、「自分のお客さんに伝えたいこと」を等身大の言葉で書いていただくのが無理なく続けるコツだと思います。

また、購入者がSNSなどで簡単に感想を投稿できる時代だからこそ、商品を買ってもらった「後」がブランドとしての始まりだと私は考えています。なので、「買ってもらうための記事」だけではなく「買ってくれた人との距離をもっと縮める記事」も増えていって欲しいなと思います。

どこかのお店で、たまたまた買ってくれたお客様がすごく気に入って調べてnoteを発見して、「こんなこだわりがあったのか」と気づいたり「これからもっと応援したいな」と感じてもらえるような記事がたくさん溜まっていると、それを広めたりリピートしてくれたりと健康的な循環ができていくんじゃないかと思うんです。

――我々「BASE」としても、こうした記事は是非たくさん読みたいですね。本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

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いかがでしたでしょうか。

○お店に人を呼び込むため・顧客との関係を作るために、「お店」が自ら情報発信をすることがマストな時代
○普段自分が考えていることこそがコンテンツになる。まずは書いてみることが大切
○ noteには、「お題投稿」があるので、書くネタに困りにくい。また、公式SNSにピックアップされる可能性もある
○「note for shopping」は、note記事からBASEのショップページに自然に遷移させることができる便利な機能

最所さんの「文章力よりコンテンツ力」という言葉の通り、まずは自分の思っていること・考えていることを発信してみるところからスタートすればよいというのは、非常に勇気を貰える言葉ではないかと思います。

まだnoteにチャレンジしていないBASEのショップオーナーさん、これを機にnoteをスタートしてみてはいかがでしょうか?




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