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【お題・シナリオ】食べ物(3,367字)【投げ銭】

【前回のお話】

――放課後の教室。

生徒A「んー! このタピオカドリンク最高! タピオカドリンクってなんでこんなにウマいんやろなぁ!?」

生徒B「いやタピオカドリンクて。一昔前のブームやん。今更かよ」

生徒A「何で!? べつにブーム過ぎても味が変わるわけないやろ! タピオカドリンク好きやから飲んでんねん! 悪いか!」

生徒B「ああ、いや、別に悪くはないけど、恥ずかしくないのかなと思って」

生徒A「てかオマエが飲んでるその緑色の飲み物は、あれか! 2021年のいま流行りのメロンソーダか!? そんなのオマエ、去年まで飲んでたか!? 流行りに合わせて自分の趣向をコロコロコロコロ変える方が恥ずかしいと思うんですが違いますか!?」

生徒B「それは確かに、ぐうの音も出ません」

生徒A「ぐうの音ってなに!?」

生徒B「えっ。言うやん、ぐうの音って。知らんの?」

生徒A「いや、馬鹿にすんなよ! 知ってますよ慣用句でしょ! でもおかしくないか、『ぐう』つったら腹の音やろ、生理現象! 生理現象の音すら出なくなるってなんなん、体調に異変きたしとるやん!」

生徒B「いや、違うから。ぐうの音の『ぐう』っていうのは、反論できなくて息が詰まったときの音よ」

生徒A「息が詰まったときの音!? それを『ぐう』って言うの!? 変だろ、ふつうに。今の時代で息が詰まったときに出る音って言えば、『くっ……』やろ! だから正しくは『くっ……の音』にせんとおかしいやろ!」

生徒B「うーん、わからんでもないけど慣用句は慣用句やからな……そうそう簡単に変えられないと言うか」

生徒A「何で!? 流行りはすぐに変えられるクセに! タピオカ捨てて簡単にメロンソーダなんぞに手を出しやがって! どうせオマエあれだろ、あんだけガチ課金してた『ロマ〇ガRS』も捨てて、今や『ウ〇娘』に財布の中身ぜんぶつぎ込んでウマピョイウマピョイしとんのやろ!」

生徒B「ギクッ……いや、けどええやん、ゲームなんやし、人が好きなもの遊んだら。別に誰かに迷惑かけるわけでもなしに」

生徒A「迷惑かかるんだよ! オマエのせいで『ロマ〇ガRS』のサービスが終了したらどうするんだ! お布施しろお布施!」

生徒B「うわっ、うぜえ! 信者マジうぜえわ! 好きを他人に強要すんなよ。そういうこと言ってると嫌われるぞ。てか、他の信者からしても、そういう強引なやつは疎んじられるからな」

生徒A「どうせ俺は嫌われ者ですよーだ。道歩いててもアサシンからナイフで切り付けられたりアーチャーから弓で狙われたりするし。そのうちバーサーカーから大剣で脳天かち割られたりして、どうせ人知れずタヒぬんだ」

生徒B「うわ、二つ前の話の設定まだ引きずってたんか。てかオマエは一度すでに大剣で脳天かち割られてたよな。それでもタヒななかったじゃん、大丈夫だよきっと、生きてるよ」

生徒A「そんなん何の慰めにもならんわ! 人はタヒぬんだよ! タピオカや『ロマ〇ガRS』と一緒じゃ! 飽きられたらそこで社会から、もういないものとして扱われて、やがてひっそりタヒんでいくんじゃ!〝いつまでも いると思うな 親と推し〟」

生徒B「いや、タピオカはまたどうせブームくるだろ。そして『ロマ〇ガRS』もいろいろイベント打ったりして頑張ってるわ。逆にオマエ自身は、いつからファンが付くほど有名になったんだよ。ただの生徒Aだろ?」

生徒A「そうでした。このクソ創作シナリオの作者と同じでまったく無名の底辺でした」

生徒B「おいそこで作者イジるのやめろや。てかその台詞書いたのも作者やろ。どんな心境で書いてんねん」

生徒A「読んだ人が、笑えばいいと思うよ、って気持ちで」

生徒B「急にシンジ君が綾波に言った名セリフをそこで出すなや、気持ち悪い」

生徒A「あぁ~有名になりてぇな~! 誰か俺のことをイラストにしたり漫画にしたりアニメ化してくれたりしねえかなー!」

生徒B「他力本願やめろや。そんなに有名になりたかったら営業しろ、オーディション行け。そこでしっかり自分を売り込め」

生徒A「何でー? なんの才能もない、刃物や弓でいつも狙われている、こんな底辺の俺が出れるオーディションなんてあるわけないやろ」

生徒B「いや、それだけの設定あったらむしろ出れるやろ。どんだけダメージ与えてもピンピンしてる、タヒなない。これもう、完全にビックリ人間やん」

生徒A「そもそも人間なのか俺は」

生徒B「むしろ人間じゃなかったらもっとスゴいやん。『ターミネータ』みたいな感じやろ。てか、それでイケるじゃん。未来からやってきた人型ロボット。それで売り出そう」

生徒A「いやいやいや、作者差し置いて勝手に俺の設定書き換えんなし!」

生徒B「オマエだって、俺の設定、勝手に変えてたやん。第一回目で」

生徒A「うわ、根にもっとんのかこいつ。さすがロビセロロドリゲス35世、通称ゲス」

生徒B(ゲス)「おいゲス言うのやめろや。おっ、丁度いまネットで、オマエに合ういいオーディション見つけたぜ。これに出てみんか?」

生徒A「な、なんですと……!」

――一週間後、放課後の教室にて。

生徒A「聞いてくれ! 先週受けたオーディション、結果が出たぜ!」

ゲス「おお、結果ってもう出るんだ、早いな。どうだった?」

生徒A「採用やて! 有名監督の映画に出演決定や!」

ゲス「そうかー、残念やったな今回は……って、え!? 採用!? マジで!?」

生徒A「はははははは! 今回はオマエのそのノリツッコミを逆に期待しとったわ! どや、もっと驚け! 採用やぞ採用!」

ゲス「マジか!! 凄いなぁ……で、どんな映画なん?」

生徒A「まぁ、あらすじしか決まってないけどな。特別に教えよう。いいか、ここだけの話だからな。ちょっと、耳貸してみ」

ゲス「おう、わかった」

生徒A「……実はな、巨大ロボット映画でな」

ゲス「えっ、巨大ロボット映画!?」

生徒A「シーッ! ……声が大きいやろ」

ゲス「おお、すまんすまん……で、続きは?」

生徒A「通称、二ーヴァーっていう巨大ロボットなんやけど、それに乗り込むのは14歳の少年」

ゲス「おお!」

生徒A「彼は父親の命令で乗れと言われて、最初は嫌がるんだけど、じゃあ代わりにこの子に乗ってもらおうって、同い年くらいの女の子が全身ボロボロで担架に運ばれてくるんよ」

ゲス「……」

生徒A「それを見て、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだって自分に言い聞かせながら、少年はニーヴァーに乗り込むことを決意するんよ」

ゲス「……『エヴァ』やな、それ」

生徒A「え、ちゃうで、ニーヴァーや」

ゲス「いや、どう考えても『エヴァ』の第壱話やん。てか、ロボットの名前も何となく寄せてきてるやん。なんやねん『ニーヴァー』て。『エヴァ』やろ。完全にパクリやん」

生徒A「パクリちゃうて! その続きを言うとな、少年がロボットに乗り込むと、ぜんぜん命令通りに動かなくて、ぶっ倒れたりしてな。それで敵にフルボッコにされるんやけど」

ゲス「はいはいはい、知ってる知ってる! それで暴走するんやろ」

生徒A「ちゃうて。主人公はタヒぬ」

ゲス「え! タヒぬの!? まだ序盤でタヒぬの!?」

生徒A「それで、異世界に転生するわけよ」

ゲス「は!? 異世界転生モノなん!?」

生徒A「で、転生した先でロリ顔の美少女Vtuberとして売り出していくことになりながら、南の島で無人島生活を」

ゲス「いや、設定滅茶苦茶やろ。流行りのもんぜんぶブッ込んできたな。最悪やん。そんな映画誰が観るの? てか、お前、流行りが嫌いじゃなかったの?」

生徒A「流行り、大好き! 映画に出られるんだったら何でもするのがワタクシ!」

ゲス「完全に権力に抱かれたみたいになってるけど、てかそこよ。お前、絶対騙されてるて。本当に映画に出れるの?」

生徒A「出すって言われたんです! ちゃんとこの耳で聞きました! 40万円の出演料払えば出してくれるって言われました!」

ゲス「いや、騙されてるやん! 完全にカモられてるパターンやん! なんやそれ40万出せって。やりがい搾取やろそんなの」

生徒A「何言われようと俺は出るからな! とにかく出演料の40万稼ぐために、今日からバイト始めるわ」

ゲス「いやぁ、辞めとけって言うても聞かないんだろうなぁ……で、何のバイト?」

生徒A「駅前にできる唐揚げ屋さん。オープニングスタッフ募集中だって」

ゲス「唐揚げかよ! 完全に流行りに乗っかったな!」

(つづく)


※本作は、「食べ物」というタイトルで作品を作るというお題のために制作した書き下ろしシナリオ作品です。

【作品、全文無料公開。投げ銭スタイルです】

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