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書を集め夜に篭る。~2021 強制的冬の読書

“ヒマである。全くもってヒマだ。
19:00でラストオーダー、20:00クローズなんて商売上がったりどころでは無い。
通常営業ならまだスタンバイすら終わっていない時間に開け、スタンバイできた時間に閉める。
つまり開ける前に開けて閉めているのだ。シュールとしか言いようのない状態である。

現在、当店は月曜~金曜は予約が入らない限り休業としている(土曜は予約の有無に関わらず15:00~20:00 / L.O.19:00にて営業)。”

…という前回と変わらぬ前置きに「なんだ同じこと書いているのか?」と思って閉じる方がいたらおもしろいな、と思ってやってみました(性格が悪い)。
まあそんな熱心な読み手がこの徒然な読み物についているとは到底思えないのでヒマつぶしに読んでもらえれば嬉しいです。

今回はタイトル通り、久しぶりに選書ネタ。
これは各季節1回限り、その後はしないつもりだったけど、「夜篭もりしろ」などと言われると手酌の酒だけではどうにも時間を持て余す。
このあからさまな飲食狙い打ち、どこまで影響があるのか / あったのか、しっかり検証してもらわないと納得できない。カネを出せばそれで良いと思っているならふざけたこと言うのもいい加減にしろよって話だし、そもそも役にも立たない政治屋がどこぞのクラブで飲んでて何を言っているのかという…いけないいけない。
アタマに血が上り切る前に閑話休題としよう。

けっきょく、読んだ記憶に残るか残らないかは横においても、読書というのは独り過ごす夜に最良の友と言えなくもない(パートナーがいる方は楽しく語り合って過ごせば良いと思う)。
ただ飲んで過ごすより、少しでも知識を頭の片隅に定着させられたら悪いことはない。そんな殊勝な思いを持って最近は酒のお供をしてもらっている。
案の定、翌日にはほとんど何ひとつ覚えていないのだが。
前回書いたように、基本は店で日が回るくらいまで何かしているのだけど、「たまには自宅でゆっくりしよう」と何か買って帰ってきても、飲んで食べるだけでは手持ち無沙汰なのだ。なにより楽しくない。
でも飲みながらやれることはとても限られているし、迷惑も被害も最小限にしたいと考えると読書は最良である。
なにしろ被害があるのは自分の時間だけだ(酔ってグラスを割ったりボトルの中身をぶちまけたりしなければ)。

というわけで今回は人が読んでも(おそらく)面白いとは思いづらいものばかりの選書。
個人的には宿題という部分含め、こういう時期に読み進めるに最適かつ極私的なモノを紹介します。
いってみましょう。

よくわかるフランス料理の歴史 / エドモン・ネランク、ジャン=ピエール・プーラン
中世ヨーロッパ 食の生活史 / ブリュノ・ロリウー
幻覚剤は役に立つのか? / マイケル・ポーラン
一般言語学講義 / シャルル・バイイ、アルベール・セシュエ編(フェルディナン・ド・ソシュール講義)
利己的な遺伝子 / リチャード・ドーキンス
20世紀ファッション:時代を作った10人 / 成実 弘至
パロマー / イタロ・カルヴィーノ

ざっと挙げてこれくらい。
ひとつでも引っかかるものがあっただろうか?
…無いだろうなぁ。
無ければとても良い導眠剤ばかりだ。

こういう時に毎度挙げている”利己的な遺伝子”なんてもう諦めれば良いのでは?と自分でも思うのだが、内容が面白いだけに読み切れないどころか出だし100pに届かず毎回止まるのがとても悔しい。しかも気づいたら最新改訂版も出ている始末。たぶん今回も返り討ちに遭うのは明白だ。おそらく、”一般言語学講義”と”パロマー”も同じ目に遭うのはわかっている。
他は自分の集中力次第だろう。

本の厚みはかなりだけど、”幻覚剤は役に立つのか?”は面白いです(と、書いては見るもののこれも出だし100p程度で現在ストップしている。去年の10月くらいに購入してるのに…)。
あとファッションに興味があれば”20世紀ファッション:時代を作った10人”はオススメですね。コレ読んでから各ブランドの服を見ると視点が変わります。
章立てで簡潔にまとめられていて、コーヒー片手に愉しめる内容。

以上、サラッと紹介したこの2冊以外、殆どの人は手を出さないんじゃないか。
専門的書物やら実験小説やらなんて眠くなるわ、読むの疲れるわ、「ただ文字を追っただけ」になる可能性高いわで読後に何も得られないリスク満載。

ただ、冒頭に戻るような話だけど、この手のややこしいのを読み込むのに時間が割けるタイミングってそう多く無いんですよね。普通ならリタイア後というイメージしか僕はない。
それが今は幾らかある(幸か不幸かはさて置き)。この時間をそこに全て割けるかって言うとさすがにできないにせよ。
そしてなにより、難解な本ほど若い内に読んでおかないと最終的に放り出す。
まあ”若い“と言う単語、45を迎えようとするおっさんが使うのに疑問を持たれるかも知れないけど、この先考えたら今この瞬間がいちばん若い。
カクテルとかの実質的な部分の試行錯誤や技術維持はもちろん、こういう時間の遣い方もしておいた方がいいと思うのだ。
僕の場合は積ん読の切り崩しという意味合いの方が強いのだけど。

なんてこれを書いている最中にまた買ってしまったのがヘッダーの本。
いつもの葉巻屋さんへ仕入れに行ったら、カウンターの上に無造作に置いてあった。帰り道に調べてみたらとても面白そうだったのでついうっかり。
何冊も並行して読んでいるせいで内容が混ざっているところへ中米・南米文学特有のカオスな話と文体と捲し立てるテンション(あの寓話的というか、神話的な世界観はなんなんだろう?アフリカ系の作家にもよくみられる傾向な気がする)。そんなこんなで、タイトルよろしく”煙に巻かれて”いる今日この頃である。


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