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Negroni Sbagliato

※このnoteは当店のInstagramにアップしたカクテル解説になっています。

国内でこれを知っている人は飲み手、バーテンダー含めでどれくらいいるのだろう?
僕は先日のカンパリセミナーで紹介されるまで存在すら知らなかった。
“Negroni Sbagliato”。
訳すと「間違えたネグローニ」。
つまり本来のネグローニと何かが違うということですね。
ではレシピ。

Negroni Sbagliato
<Build / Baloon glass>
イタリアンビターリキュール 1
スウィートヴェルモット 1
スプマンテ 2
オレンジスライス(ガーニッシュ)

非常にシンプル。
ジンがスプマンテになっただけ。

発祥はミラノのBAR Basso。
目も回るような忙しい中、ネグローニのオーダーが入った際にジンと間違えてスプマンテで作ってしまったところ、好評を得てon menuされたのが始まり。
いくら忙しくて間違えるってもそれはなかろうと思うのだけど、そういう時は何をしでかすかわからないからそんなこともあるのだろう。

さてこのカクテル、レシピ通り作れば「正しい」ネグローニより度数は低いし、飲み口は確実に軽やかになるからスルッと飲める。
ところがジンの代わりが泡。
これは間違いなく危険なヤツだ。
おそらく世が世ならレディキラー(今どきこの呼び方知ってる人はそれなりの年齢でしょうな…)として重宝された類いだろう。
ま、そんな下衆な話は横に置くとして、兎にも角にも作ってみました。

個人的にはレシピ通りだと飲みにくい。だからグラスも変えたい。
その理由は材料の管理温度帯の差異。
泡もヴェルモットも冷やしてあるから問題ないものの、イタリアンビターリキュール(つまりカンパリです)を冷蔵しているところはそう多くないだろうし(当店もそうだ)、全てのグラスを冷やしているわけでもない。
材料のどれかひとつでも冷えていないモノを使い、それを冷えていないグラスでビルドすると液体の温度がどうなるかは書く必要もないと思う。

先日のnoteでも書いたように、コイツはリキュールと言えどもけっこう繊細だ。扱い(この場合は温度帯)を間違えると飲めたものじゃなくなる。
冷やしていないそれを−いくぶん冷やしたとはいえ温い−グラスへ注ぎ、スプマンテを添加となると些か香りが開きすぎる。
しかもスウィートヴェルモットも入っているからバルーングラスでサーブすると想像以上に香りが開く。
華やかというよりさながら統一性のないFestaだ。
やたらと香りが騒がしいだけのものになってしまう。
もうちょっと落ち着いてほしいし、調えたい。
そう思って作ってみたのが以下のレシピ。

arranged Negroni Sbagliato
<Shake / Goblet glass>
イタリアンビターリキュール 0.75
スウィートヴェルモット 1
オレンジリキュール 1tsp
レモンジュース ~2tsp
スプマンテ 2
オレンジスライス(ガーニッシュ)

まさかスプマンテまで入れてシェイクするような人はいないと信じたい。
いちおう書いておくけど、そんなことをしたらシェイカーが爆発して悲しいことになるから気をつけましょう。

オリジナルの作り方で香りが暴れるなら力づくでも大人しくさせればいい。
どうも言い方が穏やかじゃないな…。
要するに温度を落とせばいいのだから、シェイクして閉じ込めてしまえばいいのだ。
そしてバルーングラスのように膨らんだ香りを集約させる形状のグラスは避けて放出するものにする。
あとはやや真ん中を膨らませるようなイメージでオレンジリキュール。アクセントとまとめ役にレモンの酸味。
これで狙い通りのデザインに着地。
結果的にとてもありがちなレシピに落ち着いたけれど、調えようと思うとやはり古くからあるものになる。
生き残っている手法というのはやはり偉大だ。

ちなみに本来の指定通りに作るならInstagramにアップしたものと同等かそれ以上のグラスサイズ、それに冗談かと思うくらい大きな氷を一つ入れてサーブするそうだ。ボリュームは推して知るべし。
それをミラネーゼは「クイクイ飲む」との事。


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