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良いグラスを、ひとつ。

「家飲みするのに良いグラスをひとつ欲しいんですけどオススメありますか?」

これはこのコロナ禍になってから聞かれる質問である。いや、その前でも聞かれていたけど現在ほどの頻度では聞かれなかったと言うべきか。

結論から先に言うと、別に良いグラスを購入する必要はないです。
もちろん個人的に良いグラスで家飲みしたいからどうしても、というなら止めはしないけど僕は別に百均のグラスでも気にやしない。どころか、むしろそちらをチョイスする(欲しいから聞いたのはわかるが、聞く相手を間違えている)。

なぜか?
答えは簡単。割るのだ。ほぼ間違いなく、どこかのタイミングで絶対に。
これは保証する。
されたくない保証だろうけど。

「思い切ってバカラやラリックを買った」と話をされた方で1脚もブリック(割る)したことがないと言う人を聞いたことがない。

原因は大体こうだ。
大事にしているグラスほど飲み終えたらすぐ洗いたくなるのが人の心情らしい。綺麗にしておきたいのだろう。
だが、考えてみて欲しい。
アルコールの入った状態で洗うのとそうでない状態で洗うの、どちらがより安全性が高いか。
こんなの火を見るより明らかじゃないか。にも関わらず多くの人は洗い、手を滑らせる。グラスは無情にもシンクか床へ落ち−シンクならまだ助かる可能性があるからマシだ−それはそれは綺麗な音を立てて儚くブリックするか、リム(飲み口)をチップさせてしまう。
そして後悔するのだ。
「嗚呼、明日にすればよかった」と。
−余談だけど、”バカラは割れる時がいちばんステキな音がする”とは良く言う話である。

だいたいみんなこの経験を一度はしている。そして、それでも懲りずに再度購入する人と諦めて拘らなくなる人とに分かれる。−つまりこれは”良いグラス”を所有するにあたっての通過儀礼−もしくは分水嶺−みたいなものだ。

でも、この話を「良いグラスが欲しい!」と思って質問してくれている方にはしない。
それよりむしろ「生活感溢れる、見慣れた光景の部屋で良いグラスで飲んでもその酒はあまり美味しくならないと思う」という話をします。
教訓じみた話の方が合理的で説得力もあるとは思うけど、それはあまりに無粋ではないか。それよりなにより後者の方がBARとバーテンダーの回答らしい(完全に内側本意)。

ちなみに僕はフルート型のシャンパングラスで気に入ったのを見つけて買ったのはいいけど2脚やらかしている。
懲りずに3脚目も購入した。が、トラウマになってか飽きたのか或いはその両方なのか、もう10年近く使っていない。
けっきょく執念を以て購入し直してもこうなったりする。
本人次第だけど、やはり環境に合ったものの方がリラックスできるし気兼ねなく使えるし僕はいいと思うのだな。








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