幸せな国を巡り巡って見えてきたわたしの結論(2024年4月10日)
※2024年4月1日に開催したイベントのレポートです。
幸せって、どうしたらつくれるの?
その答えを探すため、世界一周の旅に出かけた堂原有美さん。
世界各国の幸福度を示すランキングの上位国を中心に27カ国を巡り、書籍『脱!しあわせ迷子―世界の幸福国を旅して集めた幸せのヒント―』を出版。
現在は株式会社WTOC代表として、教育分野での国際交流サービスを展開しています。
堂原さんが旅の中で見つけた答えを伺いました。
なぜ幸福な国を巡る旅へ出たのか
堂原さんの前職は広告代理店。
年間26億円もの経済効果を生んだ「名古屋おもてなし武将隊」の立上げメンバーであり、歴史と旅のBAR IAPONIAとしては、なんだかご縁を感じる経歴をお持ちです。
しかし、活躍の一方で、心には迷いが生まれつつありました。
「人を楽しませたり、幸せにしたいと思って就いた仕事ですが、『果たして本当にそれができているのか?』と悩むようになりました」
その頃訪れたのが、「幸福度の高い国」として有名なフィンランド。
「フィンランドで、『どうして幸せなんですか?』って聞きまくる旅をしたんです。そしたらひとつ気付きがあって。みんな、『教育がいい』と言っていたんです」
幸福と教育に関係が…?ヒントを掴みかけたものの、結局その旅ではハッキリとした答えは出ず。
5年後、意を決して会社を辞めた堂原さんは、世界一周の旅へと出かけます。
旅のテーマは、世界中の幸福度ランキング上位国を巡り、「幸せのために大事なことって?」を探求すること。
実は、世界に複数存在する幸福度ランキング。その中で堂原さんが注目したのは、国連によるものとスイスの調査機関「Gallup」によるものです。
<堂原さんが旅に出た2019年の幸福度ランキング>
2つのランキングを並べてみると、びっくり。上位の顔ぶれがかなり違います。
「これ、それぞれ何を調査した結果のランキングだと思います?」とほほえむ堂原さん。
国連によるランキング上位は北欧やヨーロッパが中心。いわゆる豊かな国、先進的な国というイメージを抱く顔ぶれではないでしょうか。
対する「Gallup」の上位国。治安がよくないといわれる国や、あまり裕福ではない国も入っています。
違いが気になった堂原さんは、旅の主な目的地を、この2つのランキングの上位国としました。
国連ランキング上位の幸福国で見つけた幸せのヒント
フィンランド、デンマークなどの北欧を中心とするヨーロッパ諸国。そして、ニュージーランド、カナダといった多様性国家。
「驚いたのが、これらの国々では理想社会が実現していたことです」
その一例が、国民が政治を信頼しているという点。
「投票率は7~8割が当たり前。自分の声が届くから、投票に行くんです。若い人たちの政治への関心度も高いし、友だちに政治家がいるひとも多い」
「政治が身近な環境なんです。すごく理想的な、声が通る社会ができています」
バランスのとれた働き方も重要なポイント。
「17時以降に仕事をしていたら、『お前何やってるんだ』と言われるし、夏休みも1ヵ月くらいある。日本からしたら羨ましいですよね」
大人のための学校が充実しており、キャリアブレイクやキャリアチェンジへのハードルが低いところも日本と違っています。
また、フィンランドでの経験から、教育に注目していた堂原さん。幸福な国では、「個」が重視されており、それぞれの好きなことを伸ばす教育が行われているという点にも気が付きました。
「オランダだと、授業はもちろん、自分のいく学校まで小学生のうちから選べる。それだけ選択肢が多いんです」
学歴は、あまり重視されていません。どんな学校を卒業しているかよりも、その人が社会に対してどんな貢献をしているかが注目されます。
「社会に出てから必要なことも教育を通して学べるんです。フィンランドではエコに関する授業や、模擬選挙なども取り入れられています」
そのほかにも、女性にとって生きやすい多様性のある社会であること、社会福祉制度が充実していて立場の弱い人も守られていること、エコ活動が進んでいること…などなど。
「社会全体がすごく効率的。いい循環で社会がまわるようになっているんです」
これらの特徴から、国連ランキング上位国は「自己決定ができる社会」であるとみた堂原さん。
「老若男女、どんな人でも『これをやりたい』と思ったことができる社会ができているんだなと思いました」
実際に国連が行った調査基準は、生活の満足度。GDPや社会支援制度、健康寿命、職業選択の自由などが評価の項目となっています。
Gallupランキング上位の幸福国で見つけた幸せのヒント
一方、フィジー、メキシコ、ベトナム、フィリピンなどのGallupランキングの幸福国の特徴とは。
「こちらの国々では、家族やコミュニティの近さと依存度に驚きました」
たとえば、フィジーにある”ケレケレ”という文化。小さな島国であるフィジーでは、島全体が家族のような空気感があり、他人同士でも貸し借り=シェアをする場面がよく見られます。
堂原さん自身も、バスに乗車した際、足りない運賃を乗り合わせた現地の人に払ってもらう経験をしたそう。
家族をことのほか大事にするのがメキシコ。毎週末家族で集まり、親子同士、恋人同士、ペットにまでスキンシップ多めのオーバーな愛情表現をします。
「メキシコは、自殺が少ないことで有名。いつも誰かが周りにいるから、見捨てられないというか。すぐに相談できる、守られる環境ができているんです」
家族や周りの人と密につながり、辛いときにも頼れる存在がすぐそばにいること。それが、幸福をつくる要素のひとつだと堂原さんは考えます。
Gallupランキングの選定基準は、純粋幸福度。国民の主観です。
決して裕福であったり、治安がいいわけではない国でも、自分たちのことを「幸せ」だといえる。人とのつながりが心に与える影響の大きさについて、考えさせられます。
世界一周で出た答え、そしてそのあとに
2つの幸福度ランキング上位国を巡り、その国の人たちから幸せのヒントを集めた堂原さん。
しかし、中には「幸せではない」という答えを返してきた人もいたそう。
理想的な社会とみえたスウェーデンですら、ほかの家のクリスマスプレゼントを羨ましがる子どものエピソードから、恵まれているからこそ満たされないものがある…という側面があらわれました。
堂原さんは考えます。じゃあ、果たして何が幸せなんだろう?
「色々考えて出した結論が、幸せというのは結局、自分で決めるんだなっていうことです。幸せそうな人は、自分のことを幸せだって思っているんですよ」
じゃあ、どうしたら幸せになれるのか。
「立ち止まって考えてみる。何をしているときが幸せなんだろう、自分の好きなものはなんだろうって。日本の人って、走りっぱなしで、なかなか立ち止まる機会がないと思います。まずはそこから、考えてみるのがいいなと」
世界を巡る旅で感じたのが、外からの日本への評価の高さ。同時に、日本という国の課題も見えてきました。
「旅の中で注目していたもののひとつが各国の教育だったんですが、日本においては”個”の尊重や、選択肢の少なさが問題だなと思いました」
そこで堂原さんが立ち上げたのが、「教室から世界一周!」プロジェクト。
日本の学校と世界の学校をつなぎ、子どもに国際交流の機会を与える教育プログラムです。
「とにかく若い頃からいろんな世界をみてもらって、たくさんの選択肢をもったうえで、幸せになれる生き方を見つけてほしいと思った」
「世界には、社会をよくするヒントがめちゃくちゃ落ちているんです。それを若い人に拾ってきてもらって、『自分で社会を変えて行こう』と思うようになってほしいなと」
そして最近、このプロジェクトの中で、堂原さん自身が新たに得た知見があります。
「日本の子どもとオランダの子どもで、ウェルビーイングについて話し合ってもらうというプログラムを行いました。オランダは、ユニセフの子どもの幸福度ナンバーワンの国です」
「何がウェルビーイングで、何がイルビーイング(ウェルビーイングの反対)か。また、サステナブルなのか、一時的なものなのか…ということを議論するなかで、子どもたちから、『一時的にイルビーイングに見えるものでも、最終的にはよい結果につながるのではないか』『ウェルビーイングにつながらないものはない』という気付きが生まれたんです」
「この答えが、子どもたちから生まれたことが面白いなと思って。頭で考えたわけじゃなくて、感覚的に思ったことから出てきた答え。子どもたちの可能性を感じました」
堂原さんが世界一周旅の軌跡をつづった書籍『脱!しあわせ迷子 ー世界の幸福国を旅して集めた幸せのヒントー』
https://www.amazon.co.jp/dp/4866072512
「教室から世界一周!」プロジェクトの詳細はこちら
https://wtoc-edu.com/
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