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[ベトナム考察] 人間関係の構築と南北の違い

北ベトナムはシャイな人が多いと思う。

いや、シャイというのは語弊があるかもしれない。日本人が人付き合いする時の距離感に近いと言えば、分かりやすいだろうか。

初対面で打ち解けるということは少ない気がする。それがお酒の席であれば、アルコールの魔法で、その場だけは何となく分かり合った風になるものの、翌日にはなんだかお互い恥ずかしくて、あまり言葉を交わさないこともある。

そのあたりの心の機微が、なんとも日本人に通じている気がする。

では、どうすれば良い関係を築けるのか。それはもう、回数を重ねるしかないというのが、現時点での結論だ。食事にしろコーヒーにしろ、ベトナムでは「誘った方が支払う」というのが基本だ。

だから、こちらから食事なりコーヒーなりに誘うと、相手に心を許しているという意味になり、大抵は喜ばれる。そして、次は逆に誘われるようになる。そんなことを繰り返し、徐々に互いの距離を詰めていく。本当に日本人みたいだ。

一度、現地人と良い関係を作ることができれば、異国の地で暮らす外国人にとって、こんなに心強いことはない。

時々、初対面からやけにフレンドリーに接してくる人もいたりするけれど、大抵は良からぬ魂胆が透けて見える。というか、それをうまく隠せないor隠そうとしないのも特徴で、それはそれで見ていて面白い。

一方、南のホーチミンは、そんなハノイとは違い、南国気質とうか、開放的な性格の人が多いという。ハノイとホーチミン両方に住んだことがある人に聞くと、「同じ国だけれど、人との付き合い方はまるで違う」らしい。

過去には、南北に分断され、互いに銃を向け合っていた世代がまだ存命している国だから、南のホーチミン人は北のハノイ人を「優しくない」とか「金の亡者」と揶揄し、ハノイ人はホーチミン人を「あまり働かない」と苦笑いする。

たしかに、ハノイの人の金銭感覚はシビアというか、所得の多い少ないに関わらず、給料の何割かをしっかり貯蓄に回している印象がある。

四季があり、冬場はそれなりに冷え込むので、「蓄える」という文化が根付いているのだろう。

僕は、ホーチミンには旅行でしか行ったことがないので、これはハノイ人から聞いた話になるのだけれど、ホーチミンの人は、あまり貯金をしないらしい。その月の給料は、きっちりとその月に使い切るのだという。

そのことを話している時のハノイ人は、なんとも楽しそうな、羨ましそうな表情をすることが多い。

心のどこかで、「自分たちにないもの」を持っているホーチミン人に、憧れに似た感情を抱いているのかもしれない。

その憧れの対象は、宵越しの銭は持たないという気っ風の良さなのか、一年中温暖で食料に困らない肥大な土地なのかはわからないけれど。

いつか機会があれば、南ベトナムにも住んでみたいと思っている。その時、ホーチミン人はハノイ人にどんな感情を抱いているのか、本音を聞き出したい。





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