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ダメパパが私立小学校受験に挑んでみた5 ~面談編~

【3行でわかる前回のあらすじ】

娘は

じゃんけんが

強い

【ダメパパ私立小受験記まとめ】

【イトー家の紹介】

〈僕〉
30代後半。都内勤務のサラリーマン。最近遊戯王カードにハマり中。

〈妻〉
僕と同い年。某私立小学校の卒業生。小受のいいだしっぺ。

〈娘〉
4歳の年中。幼稚園に在園。将来の夢はアイスクリーム屋さん。

〈息子〉
1歳。動きが激しすぎてついていけない。

〈その他情報〉
神奈川県在住。ローンありの持家に住む。世帯年収は900万円ほど。

【本編】

とある日、お教室の先生からこんなことを言われる。

「もうそろそろ新年長になります。新年長ではいくつかコースがわかれています。現在の志望校をもとに、どのコースにされるか、面談を通してお話させていただきたいと思いますのでよろしくお願いします」

どうやら面談があるらしい。でも、はて……新年長とは?

小受マン「説明しよう!都内の私立小学校の受験は、毎年11月が活発である!そのため幼児教室では受験本番から逆算し、ちょうど1年前となる年中の11月からを新年度とし、新年長と呼称しているのだ!」

僕「なるほど!そうなんだ!ありがとう!小受マン!」

ということらしい。季節は9月。年中の娘も、あと二か月たったら新年長になるというわけだ。

いよいよ受験本番に向かっての動きが活発化するようだ。お教室からの説明時に手渡されたプリントを見てみる。そこには新年長からの色々なコースが書いてあった。難関小学校を目指すコースなど、多様なコースの説明が書いてあるが、要するに授業時間を増やすことが出来るらしい。

現在娘は週一で1時間半のコースに在籍している。もちろんそのままでもいいのだが、それだけだともの足りない!もっと子供にあれもこれもを詰め込まないと!そうでなきゃこの受験戦争は乗り切れないの!という猛烈なパパママのために2時間コースとか3時間コースとかが用意されているようだ。

うちはどうだろうなー。確かに2時間とか3時間とかあったら今まで以上に楽しい遊戯王カードライフが行えるだろう。しかしそれは完全に僕だけの都合でしかない。娘にそんな体力があるのかわからない。幸いにも、娘自身はとても楽しそうにお教室に通っている。塾に入って2ヶ月ほど経つが、行くことを嫌がることがない。だからといって、僕の遊戯王ライフのためにこれ以上娘に負担を強いるのもよくないだろう。

そんなことを考えながら、今日のお教室での出来事を妻に報告した。

「コースを変えるかは志望校次第な気もするから、とりあえずうちの志望校を伝えたうえで話を聞いてみようよ」

ごもっとも。

「そうだね。じゃあお願いね」

「は?あんたも一緒に面談するんだよ」

いつものやり取りをし、僕らは面談の日を待った。

***

面談日がやってきた。

ZOOM面談をするためにiPadを準備していたら

「その恰好で面談するの?」

と妻から突っ込まれた。

その日の僕の服装はなんてことない、ただのトレーナーにジーパンだった。某演歌歌手のようにガンギマリの服を着てたなら、指摘を受けてもやぶさかではないが、ごくごく普通のイケてないおじさんスタイルで臨む気まんまんだった。

「そうだけど?」

「やめてよ。舐められないようにもっとちゃんとした格好をして」

「えぇ……幼児教室の先生との面談でそこまで気をつかわなくても……」

「そういうところ、先生は見てるよ。ちゃんとしてる親かどうかって。それでお教室側の対応が変わるんなら安いもんでしょ」

全くもって正論である。社会人として、こういう考え方はとても重要だ。妻は営業マン向きかもしれない。ただ、お教室に対しそこまで気を遣うほどやる気がないのが僕である。ぶっちゃけお教室の先生に舐められるとか、どうでもいいのだ。

「じゃあ舐められないように細川スタイルで……」

「真面目にやって!」

僕はすぐさまジャケットとパンツ姿になり、ZOOM面談がはじまった。

「こんにちはー。早速ですけど志望校はA校だけですか?」

画面に映った先生から早速質問を受けた。

「はい。A校だけです」

「どうしてA校志望なんですか?」

「妻が別のキリスト教系の小学校出身で、妻が受けたキリスト教教育を娘にも受けてほしいと思ったので志望校としました」

キリッっと答える僕。実は事前に妻から、先生の質問には僕が全て回答するような指示を受けていた。あらかじめ、聞かれるであろう質問の回答は頭にインプットしてある。これも舐められないようにする秘訣らしい。妻ではなく男性である夫が受け答えをすることで、この家庭は両親揃って教育熱心であるということをアピールできるらしい。いつもふにゃふにゃしている僕だが、妻に怒られるのが怖いがために、この日の僕はパーフェクトガンダム並みに完璧に仕上がっていた。

「えぇ!?そうなんですか!なぜお母様の出身校を志望されないのですか?」

やばい、想定外の質問をされた。まずいぞ。

「えぇっと……つ、妻の出身校だと難関校すぎて……高望みかなぁーって思いまするぅ?あ、あと経済的にも無理っすね、へへへ」

急に不穏な空気をだすパーフェクトガンダム。隣で鬼の形相をしている妻を、僕は直視できずにいた。

「そうなんですね……でももったいないですよぉ。せっかくご出身のご家族がいるなら、狙うべきですよ。それに娘さんはとても良い子だから、可能性は十分にありますよ!」

「そうですかね?」

先生の巧みな話術により、妻も乗り気になっているように見えた。本心かはさておき、子供を褒められると、なんでも受け入れようという気持ちになってしまう。

しかしながら、本来、志望校というものはしっかりと家庭で話し合い、娘にどういう教育を受けさせたいかという軸をもってして決めるものである。決して、お教室の先生におすすめされたからといって、それだけで決めていいわけではない。……と今になって考えるとそう思うが、この時は完全に先生のアゲアゲな口八丁にのせられていた。

「それでしたら妻の出身校も志望するということで考えてみます」

簡単に陥落する我々夫婦。ちょろすぎる。

「わかりました。志望校はご検討いただくということで。では新年長になってからのコースはどうしましょう?お母様の出身校は難関校なので、難関校を目指すためのコースのご用意もありますがいかがいたしましょう?」

事前にもらっていた資料を見てみると、難関校コースは週一の授業が2時間以上もあるコースだった。しかも、金額が今までの費用より1.5倍もあがる。お教室に通い始めた時ですらお小遣いを下げられたのに、さらに下げられる恐れがある。だからこればかりは何としても阻止しなくてはいけないのだが……

「やっぱり難関コースの方がいいですか?」

妻が食いついてしまった。

「そうですねぇ……今のままでも、もちろん良いのですが、娘さんなら難関校コースでも十分についていけると思いますよ」

「そうですか。では難関校のコースでお願いします」

「この夫婦ちょろすぎwwww(わかりました、では難関校コースでお手続きしますね)」

こうして先生が話すことを、まるで大好きな彼氏をもつ彼女のごとく全て受け入れ、新年長のコースと、B校という追加志望校が決まった。お教室の先生にいいように扱われてしまったのだ。これで不合格だったとしても、お教室は何もしてくれないのだ。自分に依存している彼女を、遊び尽くしてから捨てるような彼氏と一緒だ。一緒なのだか、小受対策の術をもたない我々はそこに頼るしかない。褒めるべきはその営業トークである。

こうして意思の弱い我々夫婦の今後の方針が決まった。A校ですら難関と言われているのに、さらにその上の倍率を誇るB校までも志望校にいれてしまった。もうなるようになるしかない……

続く

【次回予告】

娘とのバトル



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