古民家の 扉ひらけば 異空間
初夏の一句が完成し、あとは夏が夏をたらしめるばかりであろう。
西八王子という町は「外観」「雰囲気」「料理」、それぞれ別の意外な角度から攻めてくる店が多く立ち並ぶ印象だ。
住宅街に、「こつ然と現れる○○!」というパターンが幾度も繰り返される町並み。
民家の駐車場っぽいところがいきなり中古車売り場だったのが一番驚いた。いきなりステーキだって、まずはサラダから出してくるだろうに。
今回訪れたのはアルカディアという一見、古民家風のカフェ。ここもまさしく、こつ然とその姿を現す。
車の往来がそこそこあったので全体の外観は撮っていない。というか早く中に入りたかった。暑いし。
30年以上も続く老舗で、夜からBAR営業のお店にニンジン色の短パンでイン!
情報量が多い。
でも、ここまでだったら、まだ予想できる店内かな?天井が高くて落ち着く。という感じなんだけど、奥の小上がりがあって。
この意外な奥行と、意外な世界観の提供。
天井を改装し、くり抜き、窓を据えている。店内には雄々しいカントリーミュージックが程よいボリュームで流れており、バーのほうにいくと、開放的なガレージで一杯引っ掛けてるような気分になれそうだ。
キッチンのカウンターには、店の創業開始から等しく年を重ねたであろうマスターがいる。しかしバーカウンターにも、お兄さんがマスターのようにカクテルを振っている。
キッチンマスターのほうはまさしく「主(あるじ)」なんだけど、バーマスターのほうは「え?サラリー・・マスター?」といった感じで、なぜここで勤務?マスター?しているのかが謎である。
Wマスター体制なのか。それとも雇用主と被雇用主の関係なのか。そして創業以来の名物となっているカ・・カレー?え!カレーがあるんですか?知らなかったなあ。
まずは僕のチキンスパイシーカレー。
最近のカレーへの偏りを発揮していなければ、あるいはくじけていたかもしれないレベルの辛さ。
しかし、今の僕はすっかり美味しくいただけた。成長を褒めたい。チキンがほろほろなのですよ。思い出しても辛いけど。
次に妻の頼んだキーマカレー。
チキンカレーとは少し違った、まろやかな辛さ。前者が「シビれる辛さ」ならば、こちらは「シャキッとした辛さ」といったところか。
ヒヨコ豆も、辛さを中和する良いスパイスになっている。やってしまった。あえて消さずにおく。
辛さを中和する役割に、スパイスという表現を用いてしまうだらしなさ。穴の開いたポケット。締め忘れた蛇口。賞味期限が4日切れた牛乳パック。食堂の片隅で醤油が凝固し中身が注がれない容器。
アルカディアはそんな退廃的な感じとは無縁に、正しく円熟している居心地の良い店である。
今度はバーのほうに座り、お兄さんに話を聞いてみたい。あなたはなぜこのお店で?
店を出ると日が暮れて、アルカディアだけくっきりと夜にポップアップしていたのであった。
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