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バイアウト(M&A)ってなに? ~IPO以外の出口戦略を知る~

BAMBOO INCUBATORは、スタートアップ起業家の情報格差解消を目指し、起業家、エンジェル投資家、弁護士、弁理士、会計士、税理士、司法書士及び社労士で運営されている任意団体です。

このnoteでは、当会が開催している無料ウェビナーのレポートを投稿していきます。今回は、2021.10.28に開催された「バイアウト(M&A)ってなに?IPO以外の出口戦略を知る」のレポートです。

「スタートアップは出口戦略を考えておけといわれるけどどういう意味?」
「IPO以外の出口ってあるの?」
「バイアウトってなに?どうやって進めるの?」
「起業家にとって得なの?気をつけるべきことはなに?」
「誰に売るべきなのor売ってはいけないの?」

こんなお悩みをお抱えの起業家の皆さん、ぜひご一読ください。

バイアウト(M&A)とは?

前提として、スタートアップのEXIT(出口戦略)には、IPOとバイアウトの2種類があります。今回はバイアウトについて説明します。
バイアウト(M&Aとも呼ばれます)とは、会社を買主に売却して株主がキャピタルゲインを得るEXITの方法です。その具体的な方法としては、株式譲渡、吸収合併、事業譲渡の3つがあります。

【株式譲渡】
株主全員の100%の株式を買主に売却する、もっともシンプルな方法。

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【吸収合併】
買手会社が対象会社の株主に対して買手会社の株式を交付し、その対価として、対象会社のすべての権利義務関係を買手会社に承継すること。完了した後には対象会社は消滅します。

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【事業譲渡】
対象会社のいくつかある事業の内、一部の事業だけを買手会社に売却すること。

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スタートアップのバイアウトって一般的なの?

米国と比較すると日本では依然としてM&A EXITは少ない状況にあります。
しかし、ファンドサイズが小さいファンドであればM&A EXITを前提として投資がなされることもあります。反対に、ファンドサイズが大きいファンドであれば、IPOを前提に投資されることが多いでしょう。

具体的なバイアウトの事例

最近日本で話題になっている例としては、米国の決済大手ペイパルホールディングスが、上場目前だったpaidyを約3000億円で買収したものがあります。

バイアウトの進め方

以下の順序でバイアウトは進んでいきます。

①ティザー(ノンネームで案件の概要を開示)
②NDA締結
③基礎資料開示
④値決め(バリュエーション)、基本合意(MOU)
⑤デュー・ディリジェンス(DD)
⑥最終契約
⑦クロージング(着金)

買主はどうやって見つけるの?

現状、スタートアップのバイアウトに関して買主探索の方法論は確立されていません。
起業家が見つけてくることもあれば、VCが見つけてくることもあります。また、メインバンクから照会を受けることもあります。手数料はかかりますがM&Aプラットフォームに依頼することもあります。

バリュエーションはどうやって決める?

基本的には、当事者間の相対取引で決まります。基準としては、シナジーや直近のファイナンスの株価を見ることが多いです。
全く肌感がない人はFA(ファイナンシャル・アドバイザー)に相談や依頼をすることも検討してください。

既存株主(VC)はバイアウトを嫌がる?

一般論で言えば、日本のVCは嫌がることが多いです。前述の通り、日本のVCはIPOによるEXITを前提として投資をしているためです。しかし、VCが参画したステージやファンドサイズによっても異なりますので、具体的には投資を受けたVCにまずは相談をしましょう。

デュー・ディリジェンス(DD)ってなに?

バリュエーションが決まり、基本合意に達した後に、買主が雇った弁護士や会計士などから様々な角度で質問を受け、資料開示に応じる手続きです。本当に値決めしただけの価値がその会社にあるのかを調べる、人間で言うところの健康診断のようなものです。
DDに要する時間は、一般的には1~2か月程度です。
DDには、少なくても200~300万円程度の費用がかかり、買主がこれを負担します。

DDでよく問題になること

【株主構成】

株式100%を買主が取得するケースでは、株主の誰か一人でも売却しないと言えば買収が実現できなくなります(なおスクイーズアウトという手続がありますが今回は説明を割愛します)。これを防ぐためにも、創業のタイミングで、M&Aの際に売却に応じる旨等を定めた株主間契約を結んでおくことが重要です。

【労務問題】
よくある問題として、未払い残業問題があります。未払残業代だけで買収対価に大幅な変動が生じる事例も珍しくはありません。問題が検出された際の対応法としては、買収対価の調整の他に、将来従業員から請求を受けた場合にはその分を補償するといった条項を最終契約に挿入するなどがあります。

【コンプライアンス問題】
規正法上の許可に違反する行為があるといった問題や、製品プロダクトの不正を隠ぺいしているといった問題があります。
株主総会や取締役会の議事録が一切ないといった問題も頻出です。法律上作成が必須であるドキュメントは、適宜作成・保管しておきましょう。

【知的財産権の問題】
ライセンス契約を結んでいる場合はライセンス条件によってはバイアウトの障害になることもあります。

以上はほんの一例です。業種業態ごとに、DDで検出される問題群には様々なバリエーションがあります。一例としてご参照ください。

最終契約での交渉

DDで検査した事項を表明補償しても良いのかなどを決めます。表明補償期間内に違反があった場合には、買主は補償請求(金銭請求)をすることができます。逆にいうと、補償期間を過ぎてしまうと、買主は基本的に何も請求できなくなります。その意味で補償期間やその内容はよく交渉の対象となります。

まとめ

スタートアップ起業家にとってのバイアウトの意義は、買主会社によってプロダクトが加速的に広まったりだとか、大企業のアセットを活用して更なるシナジーが生まれることが最も大きいでしょう。

また、キャッシュを手に入れることができるので、起業家にとっては大きな予算を活用して新たなチャレンジができることも魅力です。

バイアウトによって求めているものが実現できるのであれば、出口戦略としてバイアウトすることも選択肢の一つとなるでしょう。



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執筆協力
billage OSAKA
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