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【提言】国内マラソン大会を海外にもっと開放すべし

これは、フランスを中心に欧州でマラソンを走り感じた自身の経験に基づく、日本のマラソンの更なる発展のための提言。

日本のマラソン大会を海外により開放し、魅力発信、レベルアップのため、参加資格を日本陸上競技連盟登録、日本国籍、在日の有無ではなく、参加希望意思及び過去の実績のネットタイムを中心とすべき。

1 You're qualified for a spot in the 2025 Age Group World Championships!


3月20日、一通のメールが目にとまった。

You're qualified for a spot in the 2025 Age Group World Championships!!

送り主はAbbott World Marathon Majors。

内容は、2月のセビージャで出した2:34:58は、40~44歳台の年代別世界選手権の資格タイム2:35:00以内を満たしており、2025年の選手権(開催地は未定)の資格を与える、というもの。

本選手権の歴史はまだ浅くたいした権威もないと思っているものの、世界大会に招待されたこと自体は大変光栄であり、またセビージャのラストを諦めなくてよかったと改めて感じた。日程、開催場所次第で参加を考えたい。

以前の私の記事を読まれた方はお気づきかもしれないが、このメールを見て、日本とは違うと感じた。

セビージャのタイムは、グロス(オフィシャルタイム=スタート号砲からのタイム)では2:35:04で、ネットタイム(スタートラインを通過してからのタイム)では2:34:58。

2 福岡国際マラソンは国際マラソン?

以前の記事に書いたように、自身のセビージャの目標タイムは、2:35:00切りだった。

上記の年代別世界選手権のことは全く意識しておらず、存在していたことは知っていたものの完全に失念しており、毎年12月第1日曜に開催される福岡国際マラソンのBグループの参加資格を意識していた。

(1)福岡国際マラソンの参加資格

福岡国際マラソンの2023年度の参加資格は、以下のとおり。

(1)2023年度日本陸上競技連盟登録者で、2020年12月1日以降、申込期日までに国内外の公認競技会において、日本陸上競技連盟競技者として下記の公認記録を出し、大会当日満19歳以上の男性競技者
【Aグループ】
①マラソン 2時間27分以内(申込者の記録上位100名程度)
②ハーフマラソン、③10kmロードレース (略)

【Bグループ】
①マラソン 2時間35分以内(申込者の記録上位400名程度)
②ハーフマラソン、③10kmロードレース (略)

(2)主催者が推薦する男性競技者

(3)主催者が招待する男性競技者

上記の世界選手権や欧州でこれまで参加してきた、参加を検討してきた大会と、福岡国際マラソンの参加資格を比較して、2つの違和感があった。

ア  福岡国際は、日本陸上競技連盟登録者が必須だが、世界選手権らはいずれかの国の陸上競技連盟登録を要求していない(注)。

イ    福岡国際は公認記録(グロスタイム)、世界選手権らはネットタイム。

(注)大会ウェブページ

アについて
「日本陸上競技連盟登録者」については、日本陸上競技連盟のウェブページに登録会員規程に以下のとおり記載されている。

i 登録会員規程に基づき登録した者を日本陸上競技連盟の登録会員とする。

ii 登録会員は、法令、本連盟またはワールドアスレティックスが定める規程及び日本アンチ・ドーピング・規程を遵守するほか、会員規程に定める行為をしてはならない。

iii 登録手続きは、団体登録、個人登録、中学校登録、高校登録、大学登録、在外登録(海外に居住する日本国籍を有する者であって、本連盟が特に認めた者が個人でおこなう登録)

iv 登録は毎年4月1日に始まり翌年3月31日に終わる。

v 登録会員は、本連盟登録料を納付しなければならない。当該年度末日に19歳以上の者:1000円/人、当該年度末日に19歳未満の者:500円/人。

vi 日本に居住している外国人は、本連盟の登録会員となることができる。外国人は、本来所属すべき国またはテリトリー(領土)の陸上競技連盟の事前承認なしに本連盟に登録することはできない。

福岡国際は、海外に居住する外国籍を有する者には開放されておらず、また、私のように海外に居住する日本国籍を有する者であっても、所定のタイムを出しても、日本陸上競技連盟登録者でなければ出場はかなわない。

(2)フランス陸上競技連盟登録

自身及び妻は、フランスの陸上競技連盟(FFA)に登録している。

理由は、私や妻が所属しているランニングクラブはFFA加盟クラブであり、入会することは、所定額を支払い、FFAに登録することを意味する。

FFAウェブサイトを調べてみると、2019年8月の登録者は316,000人、40%は16歳未満、加盟クラブは2500。

加盟クラブのメリットとして、2500ものコミュニティに参加が可能となり、コミュニティからの信頼の獲得、選手権をはじめとする公式大会への参加、補助金の獲得、自治体や地元の専門家の助言、保険契約の恩恵、トレーニングプラットフォームの利用などが掲げられている。

自身は1クラブメンバーであるが、その恩恵を最も感じるのは、フランス選手権をはじめとする公式大会への参加の点。

FFA加入の条件の詳細までは確認できていないが、FFAサイト上は、外国人はフランスのクラブ加入によりランセンスを取得可能、一部の国はフランスと出身国の両方でライセンスを取得することを拒否、ライセンスを持っていればフランス選手権にも参加可能(タイトルはフランス人に授与、二重国籍者は権利あり)、となっている。

日本陸上競技連盟登録規程と同様の扱い。

一方、日本選手権に外国人がオープンで出場することは長距離、マラソンではあるが、通常は考えがたい。

自身は過去に10kmのフランス選手権やクロスカントリーの地区選手権、妻も10km、ハーフ、マラソン、100kmのフランス選手権に、外国籍でもありオープンで参加したことがある。

また、ともに地区のクラブ対抗選手権にも出場している。個人では、フランス選手権の参加資格タイムが、国籍は関係なく、年代別に設定されており(過去記事参照)、クラブ対校選手権のような団体でも、国籍関係なく、参加可能であった。後者については、日本に来て活躍しているケニアの留学生や実業団選手のようなものと同じ印象。

(3)国際マラソンとは?

上記(1)の参加資格を設けている福岡国際マラソンは、「国際」マラソンと呼べるのだろうか。

以前の記事にも少し書いたが、自身の福岡国際の参加資格の可否を確認するために、福岡国際マラソン事務局に直接メールで問い合わせてみたところ、福岡国際マラソンは日本陸連主催大会であり、陸連の基準が優先される、在外の日本陸連登録には詳しくないので陸連に問い合わせてほしい、公式記録はオフィシャルタイム(グロスタイム)でありネットタイムではない、在外からの問合せは初めて、との連絡があった。

ならばと、日本陸上競技連盟に電話してみると、下記に示す国内の主要大会の参加資格を示しつつ、問い合わせてみると、窓口の方は、私の意見に感謝を示しつつ、内部で共有、検討する、とのことであった。

そもそも「国際マラソン」の定義もないが、歴史と伝統ある福岡国際マラソンが掲げる「国際」マラソンの位置付けは不明であった。

「国際」と名乗る大会を調べてみると、後述の大阪国際女子マラソン、KIX泉州国際マラソンの他に、湘南国際マラソン、千歳JAL国際マラソン、仙台国際ハーフマラソン、三浦国際市民マラソンなどが発見できた。

湘南国際マラソンについては、2013年に参加したことがあるものの、国際色豊かな大会という記憶はない。

近年の状況は分からないが、大会ホームページを見ると、英語、タイ語、中国語が準備されており、海外国籍、国内在住海外国籍を対象とした海外枠が設けられていた。

世界で初めての「環境配慮型のマイカップ・マイボトルマラソン」を実現し、この取組を国際的に普及させたいといったねらいもあるようにも推察する。

3 海外に最も平等、公平で開放的な国内大会は

上記の事実を知ったとき、これは福岡国際のみなのか、と疑問に思った。

(1)大阪国際マラソン

前回私の妻のことを書いたが、妻は、日本陸上競技連盟主催の大阪国際女子マラソンの出場を目指す、と言っていたので、調べてみた。

大阪国際女子マラソンの2023年度の参加資格は、以下のとおり。

2023年度日本陸上競技連盟登録者で、2022年1月1日以降、申込期日までに国内外の公認競技会で登録者として下記の公認記録を出した大会当日満19歳以上の女性競技者
イ.マラソン 3時間07分以内
(マラソン以外、略)

○招待競技者
日本陸上競技連盟が招待する国内外の女性競技者

○「ネクストヒロイン」競技者
日本陸上競技連盟が招待する国内の女性競技者

○準招待競技者
上記「イ・マラソン」の項目で2時間45分以内の女性競技者(招待、ネクストヒロインを除く)

福岡と同じであった。

両国際マラソンの共通点は、主催者が日本陸上競技連盟であることくらいか。

(2)福岡国際、大阪国際女子以外の国内主要大会

日本陸上競技連盟主催の2つ大会以外の主要大会について調べてみることにした。

国内のマラソン大会は非常に多いので、国際的に認知されている以下の(i)と(ii)の大会を調べた。
(i)世界陸上連盟(World Atheletics)が認定する2024年の世界ロードレースラベルに位置付けられている10レース

(ii)AIMS(国際マラソン・ディスタンスレース協会)に登録されている24レース

(i)World Atheleticsの10レース
World Atheleticsが、出場選手のレベル(マラソン・他のロードレース・10000mの世界ランキングの人数)、ラベル別に定めた賞金、ラベルの沿った料金納付等の条件に沿って、全4段階として、
プラチナ(全15レース)
ゴールド(全39レース)
エリート(全64レース)
無印(全133レース)
に分類している。

実際は、大会側が、World Atheleticsの定める基準を満たすべく選手のレベルや賞金をセットしているのだろう。

本ラベル分けでは、大会規模、参加要件、ネットタイムの扱い出場者の国籍等への言及はなし。

World Athleticsホームページ


全10レースのラベルは以下のとおり。
プラチナ;大阪国際女子、東京、名古屋ウィメンズ
ゴールド;大阪、岐阜(ハーフ)
エリート;別府大分、防府読売、丸亀(ハーフ)
無印;北海道、神戸

なお、福岡国際は、2023年はゴールドだったが、2024年からはランク外となっている。要因は不明。

(ii)AIMS
AIMSの日本語サイトでは、AIMSは120以上の国と地域にわたる450を超える世界的な長距離レースで構成される会員制組織であり、その目的は以下の3つ。
・長距離レースを世界中に広め盛んにすること
・世界陸上競技連盟(WA)と連携して国際ロードレースの運営に携わること
・協会の会員間で情報や知識、専門技術を交換、共有すること

加入メリットとして、
・120カ国以上にわたる450を超える世界的な大会との国際ネットワーク
・大会の国際的認知アップと、スポンサーや開催地、ランナーへの知名度向上
・海外エントリーの増加と対内投資機会の創出
・世界中の大規模なロードレースに配布されるディスタンス・ランニング誌(現在発行部数:年間40万部以上)へ毎年の無料広告の掲載
等が挙げられている。

日本の加盟大会は以下のとおり。ランク付けなどはない。このうち、World Athleticsのラベルレースは太字、フルマラソンは○を付ける。
愛媛マラソン○
香川丸亀国際ハーフマラソン
別府大分毎日マラソン
青梅マラソン
北九州マラソン○
京都マラソン○
高知龍馬マラソン○
大阪マラソン・びわ湖毎日マラソン統合大会(ホームページ未更新):(現)大阪マラソン
東京マラソン
KIX泉州国際マラソン○
名古屋ウェイメンズマラソン
とくしまマラソン○
長野マラソン○
ぎふ清流ハーフマラソン
サロマ湖100kmマラソン
北海道マラソン
金沢マラソン○
富山マラソン○
神戸マラソン
富士山マラソン○
福岡国際マラソン○
※World Athletics の2023年度ゴールドラベル
防府読売マラソン
奈良マラソン○
大阪国際女子マラソン

AIMSホームページ(日本語サイトも存在)


AIMSの24レースは、World Athleticsレベルの10レースを包含。そのうち、フルマラソンは全20レースで、そのマラソンの参加資格要件などを調べてみた。

(3)閉鎖的なマラソンランキング

各大会の2023または2024年度の大会ホームページで参加資格要件などを調べてみると、大会によって大きく扱いが異なることが判明。

以下では、一定のタイム基準を設けたエリート枠を有する大会と、有しない大会に分かれたため、2カテゴリーに分けて整理する。

あくまでもホームページで確認できた範囲での自身の独断と偏見での判断であり、また確認漏れもあるかもしれず、事実誤認があるならば、教えていただきたい。

上位であるほど、閉鎖的な大会であることを意味する。

◯一定のタイム基準を設けたエリート枠を有する大会
1位 福岡国際(男子のみ)
・主催者推薦、招待を除き、実質陸連登録者のみ。
・英語のサイトは存在しない。
※2010年他2回参加

2位 大阪国際女子
・主催者推薦、招待を除き、実質陸連登録者のみ。
・英語のサイトは存在。

3位 別府大分
・陸連登録者は2:59(公認記録又はネット記録)以内ならカテゴリー1~3で出場可。
・陸連未登録者は3:30(公認記録又はネット記録)ならカテゴリー4で出場可だが、参加者はカテゴリー1~3の応募者数によって変動(応募多数の場合は抽選)。
・英語のサイトが存在しない。
・一発スタートの模様(記載なし)。
※2015年他1回参加、そのときのスタート順はカテゴリー1,2,3,4の順。

4位 北海道
・エリート枠(男子は2:16(公認記録かネット記録かの記載なし))は、陸連登録のみ。
・在外枠は500人(先着順)/全体20000
・2段階ウェーブ(分け方不明):招待・エリートら→実績3:30以内(公認又はネット)→予想タイムの順。

5位 金沢
・エリート枠(男子2:30、女子3:00(公認記録))は、陸連登録のみ。
・在外枠は1000人(先着順)/全体15000人。
・ウェーブスタート:エリート(第1ブロック前方)→詳細不明

6位 名古屋ウェイメンズ
・エリート枠(女子2:50(公認記録))は、陸連登録のみ。
・在外枠は3500人(定員を越えると抽選)/全体20000人。
・一発スタート。エリート→一般の順?

7位 大阪
・エリート枠(男子2:28、女子3:00(公認記録))は、陸連登録のみ、男女計300人程度。
・在外枠はなし/全体32000人。一般枠は定員を越えると抽選。
・ウェーブスタート順と整列ブロック
招待選手・エリート→自己ベスト(公認、ネット)→予想タイムの順。

8位 東京
・エリート枠(男子2:21、女子2:52(公認記録))は、陸連登録のみ、男女計150人。
・準エリートの海外枠(男子2:32(公認記録)、陸連登録不要)は男女合計50人。
・在外枠はなし/全体37500人。一般枠は定員を越えると抽選。
・一発スタートの模様。
※2014年他4回参加、そのときのスタート順は、エリート→準エリート→一般(詳細不明)。

◯一定のタイム基準を設けたエリート枠がない大会
1位 北九州
・在外枠は100人(先着順)/全体11000人
・完走予想タイム及びベストタイムを参考にスタートブロックを設定。スピードランナー枠(3:30以内、1000人)は前方ブロック。スピードランナー枠とその他の枠のスタート順は不明。

 2位 神戸
・在外枠は2000人/全体20000人(定員を越えると抽選)
・2段階ウェーブ(分け方不明)。スタート順は不明。

3位 愛媛
・在外枠はなし/全体10000人。
・アスリートエントリー(先着3000人):公認記録で男子3:30、女子4:00。
・ネットタイムアスリートエントリー(先着200人):ネットタイムで男子3:30、女子4:00。
・参加料金差が相対比較すると大きい(日本人12100円、外国人20000円)。
・一発スタートの模様。スタート順は不明。

4位 京都、徳島、富士山
・京都:在外枠はなし/全体16000人(定員を越えると抽選)。※2012年参加。
・徳島:在外枠はなし/全体8000人(先着順)。
・富士山:在外枠はなし/全体4500人(先着順)。
・スタート順は不明。

5位 高知龍馬、長野、富山、奈良
・高知龍馬:在外枠はなし/全体12000人(先着順)。
・長野:在外枠はなし/全体10000人(先着順)。※2013年参加
・富山:在外枠はなし/一般枠10000人(先着順)/全体13000人。
・奈良:在外枠はなし/一般枠10000人(先着順?:記載なし)/全体12000人。
・全て:スタート順は、陸連登録問わず、申告タイム順。

6位 防府読売
・在外枠はなし/全体4500人。
・一般枠(3000人。陸連登録の有無問わず、男女4:00以内(公認又はネット))。
・エリート枠(定員なし。男子のみ2:26(公認又はネット))。
・一発スタートの模様。エリート→一般。
※2019年参加。

ランク外 泉州:2023年度はオンラインのみ

(4)ランキングに対する見解

全部で14の大会を確認したところ、欧州の主要大会の要件、運用と比較すると、防府読売がもっとも欧州の大会に近い方法といえる。

私が知る多くの欧州の大会は、参加者のタイムを、陸連登録問わず、ネットタイム可で提出させて、それに基づき、エリートと一般に分けて、スタートする。

上記の大会の多くは、日本陸連又は都道府県陸連主催し、かつ海外に開かれた大会としてWORLD AthleticsやAIMS公認大会であるとの共通点を有しているにも関わらず、大会要項はバラバラの印象。

国際的なマラソンとしてどういった大会要綱が適切と考えるかのガイドラインがあっても良いように感じた。

4 日本のマラソン大会への提言

福岡国際などの参加資格要件では、招待又は推薦を除き、日本陸上競技連盟登録者であることを要件として、日本陸上競技連盟登録は、外国籍者は、在日に限定している。

(1)参加資格を日本陸上競技連盟登録者に限定する意味、必要性

上記のとおり、日本の主要マラソンは、とりわけ、一定水準の記録を有するエリート枠については、日本陸上競技連盟登録が重要な意味を有している。

自身は、フランスに来て、フランスの陸上競技連盟(FFA)に加入したところ、フランス以外のマラソン大会の出場において、FFA加入が制約となって出場を断念せざるを得なかったことは一度もない。

また、記録毎にスタートブロックが分けられるときに、開催国の陸上競技連盟に登録していないことが不利に働いたことも一度もない。

クラブメンバーらから、そんな話を聞いたことも一度もない。唯一、妻からローマは陸連登録していたことによってエリートゾーンからスタートしたという優遇措置を聞いた。

日本の大会主催者側が、大会の参加資格や大会に設けるエリート枠を、日本陸上競技連盟登録者に限定する意味、必要性はどこにあろうか。

日本陸上競技連盟のウェブページでは
・登録者数は約40万人(2022年度は、中・高生が約30万人、大学・一般約10万人)
・登録料(19歳未満:500円、19歳以上:1000円)
となっており、2023年度の収支予算書では、経常収益約18億円、うち登録料収益2.6億円で、約15%を占めていた。

あくまでも仮定であるが、陸上競技連盟の事業、各種マラソンに参加する以上、陸上競技連盟の活動に賛同する者として登録料を納めるべき、という意味合いではないかと考える。

事実関係は不明であり、すでに実施済みかもしれないが、例えば、日本陸上競技連盟が主催する福岡国際マラソンなどの参加要件に陸上競技連盟登録者とするのではなく、在外の外国籍で陸上競技連盟に登録していなくても参加可能となるよう大会参加費に一定額を付加すればよいのではないか。

在外の外国籍者に門戸を開くメリット、デメリットについて考えてみた。

メリット
・日本の大会のレベルアップ
・日本の大会の海外への魅力発信機会の獲得、拡大
・大会開催自治体をはじめとする経済効果

デメリット
・英語サイトの創設や英語が話せるスタッフの準備等、大会運営が複雑化
・トイレなどのルールを守らない海外ランナーにより、地元民にとって迷惑となりうる
・日本国籍ランナーの出場枠の減少

デメリットの1点目は国際マラソンとする以上避けては通れない道。

2点目もそうした行動はある程度想定できるので過去の教訓を基に対策するしかないと思われる。

3点目は全体の出場者数を増加させたり、外国籍ランナーの出場枠を制限することで対応が可能となろう。

自身としては、外国籍ランナーの出場枠を制限することにはネガティブ。

駅伝でネニアからの留学生や実業団ランナーの区間配置に制限が設けられているが、そうした団体種目とは異なるマラソンでは、国籍ではなく参加希望意思、参加者の実力で公平、中立に判断すべきと考えている。

そうすることによって、外国人ばかりとなって、観客としてはつまらないとなる可能性があるが、日本の競技レベルは市民ランナーも含めて相当高いので、心配ご無用かと思う。

自身の出場は危うくなるが、全体を考えれば、そちらの方がプラス面が大きいようには思う。

仮にボストンやフランスの年代別選手権のように、年齢に応じて参加資格タイムも分けることも有効だろう。自身としては、その方が可能性が広がるのでありがたい。

(2)外国人ランナーは日本のマラソンに出たいか?

昨今の円安傾向により、多くの外国人が日本を訪れている中で、マラソン大会もよい呼水になるだろう。

昨年12月の福岡国際マラソンの2位と6位が中国人であったり、今年3月に開催されたびわ湖マラソンの優勝者が中国のインフルエンサーであったりしている中で、中国をはじめとしたアジアのランナーが、より一層日本のマラソンに関心を示す可能性は高いと予想する。

そのときに、もし現状の日本陸上競技連盟登録者を優遇するような措置を取っていたときにどう思うだろうか。

福岡国際や大阪国際女子では、日本陸上競技連盟の推薦や招待がなければ出場すらかなわない。

他の大会でも、外国人の参加人数がかなり制限されていたり、仮に同じタイムを持っていたとしても、日本陸上競技連盟登録者は前方からスタートできる一方、在外の外国人は後方からの同時スタートで、最初数キロは大渋滞の中を走り大きくタイムをロスしたり、順位は公式タイムが採用されたりする。

タイムなど全く気にせずに、東京や大阪などの街を観光しながら楽しく走りたい、という動機ならば問題ないだろう。

海外にまでに走りに行くほどの熱心なランナーの多くは、エリート枠に入れるか否かに拘わらず、少なからず自身のタイムには感心があり、自己新記録を出したいと思うのが普通だと思う。

そこで理不尽な措置を取られた場合、日本にまた来たいと思うだろうか。

少なくとも、私はいい印象は持たない。

マラソン大会に出場する目的は人それぞれであろうが、参加ランナーの待遇を分ける最も公平な中立な方法は、過去の実績、記録を根拠にするのが良いだろう。

また、過去の記録も、公式タイムではなくて、ネットタイムとして、エリート枠に入れない、つまり前方からスタートしづらいランナーの実力がより正確に反映される形にすべきである。これは、自身が知る欧州のマラソンの標準である。

しかし、エリート枠の資格タイムを有する外国人などが、同じタイムの日本人と同様に扱われていない場合でさえも、日本で出場したいと思う大会として東京マラソンを掲げる者は多いと予想する。

その理由は、東京が、6大メジャーマラソン(ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク、東京)の1つだから。

自身も含め、マラソンを愛するランナーの多くは、6大メジャー完全制覇を目指しており、欧米から遠く離れた東京を目指して多くのランナーが挑戦している。

東京を走って、もう一度東京というのもよいが、東京を走って、日本のマラソンに関心にもって、東京以外の別の大会を走ってみたい、その後、日本を観光したいという声を増やすためにも、エリート枠ランナーや、エリート枠には入れないが、自身のタイムに拘るランナーの要望に添った運営にして欲しい、と思う。

(3)中国のマラソン熱の高まりに抱く危機感

近年、中国のマラソン熱が向上していると聞く。

ネットによると、記事の事実関係は不明だが、中国の陸上競技協会が、3月23日、2023年末までに、少なくとも250万人、フルマラソン(64万人)又はハーフマラソン(186万人)を完走しており、2022年に比較しても、それぞれ14万、50万人増加していること、プロとアマチュアのレベルも大きく向上し、昨年12月の福岡国際マラソンでも男子の国内記録が更新され、約12000人がサブスリーを達成した、と発表している。

(引用元)


ランナーズ2023年10月号によると、日本では年間約30万人がフルマラソンを走る、とされている。過去からの累計の中国と、単年の日本との違いはあれど、中国にランニングブーム到来とも考えられる。

中国の脅威は、ランニング人口、そのレベル向上だけではなくて、上記のWorld Atheleticsが認定した2024年ロードレースラベルが68レース(日本10レース)にのぼることからも、言えよう。
プラチナ;2(日本3)
ゴールド;16(日本2)
エリート;23(日本3)
無印;27(日本2)

ロードレースラベルは資金力がものを言うようにも思うが、中国国内のランニング人気がなければ資金が集まるとは考えがたく、アジアのマラソンは、今後より一層中国を軸に進展していくことが予想される。

(4)国内マラソン大会を海外にもっと開放すべし

自身としては、バレンシア@スペインやベルリンのように、世界のトップと、欧州を中心とする市民ランナーのトップ層から完走目的のファンランナーまで、参加する全てのランナーを魅了する大会を、ぜひ日本で作って欲しいと思っている。

その最有力は日本のマラソンで海外ランナーに最も関心を集めている大会は、6大メジャーの東京であろう。

その大会運営、例えば、エリート枠の資格記録を有していても招待、推薦でなければ出場不可、準エリート(海外枠)も男女合計50名かつ公式記録のみ可、ウェーブスタートなしの1発スタートでトイレ、荷物預けもスタート時間のかなり前での長時間待機、とあれば、比較対象として適切ではないかもしれないが、バレンシアに劣る点は相当あろう。

また、致し方ないが、天気も2月、3月で雪や雨となれば、さらに魅力的ではなくなる。

個人的には、大会運営の観点では、6大メジャーの1つであるベルリンよりも、そうでないバレンシアの方が優れていると感じており、ぜひ東京や大阪にはそこを目指して欲しいと思っている。

日本のマラソンの代表格の東京さえよければよい、ではなく、日本全体として策を練っていくべきと考える。

日本のマラソン大会の良さであろうきめ細かく安全な大会運営・道路、温かいボランティア、開催地独自のエイドや参加賞などは、海外ランナーをも魅了するだろう。

そのためにも、日本の常識、伝統を大切にしつつ、国際標準も踏まえ、エリート枠を含めて海外ランナーを魅了する大会運営を追求して欲しい。

このための私からの提言は以下のとおり。

日本のマラソン大会を海外により開放し、魅力発信、レベルアップのため、参加資格を日本陸上競技連盟登録、日本国籍、在日の有無ではなく、参加希望意思及び過去の実績のネットタイムを中心とすべき

これによって想定しづらいが、外国人ランナーばかりになって困るという状態となれば、外国人の参加割合を設定をすればよいだろう。定員割れするマラソン大会が増える中で、そういう状態になれば、嬉しい悲鳴であろう。

かつてのホノルルマラソンにように、ここは日本ですか、という外国人だらけの大会が日本に生まれるのも良いのではないか。

昨今の日本の大会運営は不明だが、上記に加えて、欧州では一般的に実施されている、人・地球にフレンドリーな運営として、大会の詳細、受付等はメールで連絡することとし、関連書類送付を止めたり、QRコードで大会受付をしたり、完走証の配布や送付を中止しネット配信のみとしたり、する等の取組を進めていくことも良いように考える。

質問、意見などがあれば、コメント欄にご記入いただければ幸いです。

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