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【最近買った書籍・2019年7月編 1/2】

『Vinex Atlas』

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図解や情報の整理が参考になる本
少し前に印刷博物館で行われていた、「世界のブックデザイン2017-18」。世界各国の優れたブックデザインを一堂に集めたもので、その中でもこれはすごい!と思った本をみつけました。とにかく図解、表組みが綺麗でクオリティが高い。

ヨーロッパで様々な賞を受賞していたのが、この『Vinex Atlas』。特色を多用しながら、抑えたトーンと緻密できれいにまとめられた図解がすばらしかったです。発行部数も多くないようですが、どこかでみかけたら手に取ることをお薦めしたいです。

オランダの語源「ネーデルランド」は「低い土地」という意味らしく、国土が水に囲まれ、海抜が非常に低いオランダは古くから総合的な国土政策が行われてきたとのこと。
本格的な国土計画は50年代後半から。戦後の経済復興によって都市部の人口密度が上がり、生活環境が悪化した状況を打開するために行われた第1次〜3次計画は期待された効果を発揮できなかった。
そこで1985-94年に行われたのが第4次国土計画。本書は、この「第4次計画」について詳細にまとめたもの。

コンパクトシティ化を目指して実施された、第4次国土計画の都市住宅供給策「Vinex location」について、豊富な図解を用いてまとめてある。Vinex地区の90年代中頃からの空撮資料、地勢図、実地写真などの膨大な資料と論文などと一緒に、この都市計画プログラムの全体像を俯瞰でき、なにより図解や表組みがとても綺麗。どのページも高いクオリティが一貫して維持されていて、眺めるだけで楽しい。

メタリックの特色や、蛍光イエローといった派手な特色が使われている。色味だけをみると派手になりすぎるように思うが、きちんと情報が整理され、注目して欲しい箇所にだけ、効果的に使用しているのはとても勉強になる。

表組みの文字があふれたときの処理も興味深い。個人的には文字間の詰めやほんの少し長体をかける、みたいな調整をしてしまいそうだけど。縦方向のレイアウトラインや、蛍光イエローのハイライトの幅なんてものは関係ない!と潔いこの組みはすがすがしいですよね。

アムステルダムを拠点に活動するデザイナー、 #JoostGrootens さんによるデザインとのこと。他の作品も綺麗。

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『Modern Matter』

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年二回発行されているアート&カルチャー誌『Modern Matter』の15号。

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Cool VHS のパッケージを模した、というかほぼそのまま、の厚みのあるブックデザイン。右側の三角に切れ込まれた部分は抜いてあるのかと思ったらそこはただの印刷だった。

PPが貼られた厚紙の外函の中に辞書みたいな雑誌が入ってる。本と函の縦方向のクリアランスが大きすぎて不安になる。
中身はRemastered というテーマからか、広告まで全く同じ内容が二回繰り返されるというポプテピピック仕様。

今回取り上げたアーティストに因んだ、ピンクの特色一色で印刷されたページもあって、レイアウト面白い。意図的に組んであるセリフ書体の詰めすぎ見出しが特徴的だなぁと思いました。

『習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法』

【より小さな円を描く】学習の効率を上げたり、新しいスキルを身につけるために何か指針になる本が無いかと探していて、とりあえず目についた『習得への情熱』という本を読みました。著者はチェスの世界王者であり、なおかつ太極拳推手でも世界選手権の覇者になったという異色の人。そんな彼自身がチェスと太極拳を身につけるために試行錯誤した習得技法を紹介しています。

2つの全く異なる分野にも関わらず共に世界一になれたのは、先天的な才能というよりも学習プロセス、学習態度といった習得のメソッドに依るところが大きいのでは、という仮説に基づいて著されている。自叙的な趣が強く、彼の成長物語を追いながら習得のメソッドを理解しいくような構成。自身の性格によると思うが、一貫した内省的な眼差しと、理路整然とした話し口で読みやすいのは読みやすい。

具体的なメソッドで興味深かったのは、
1)数を忘れるための数
2)より小さな円を描く
3)引き金を構築する

といったもので、それぞの章で事細かに説明されている。

1)「数を忘れるための数」は、知識として知るだけではなく、体得し、思考を伴わなくても直感的に認識、感じる事ができるようになること。知っているというだけではなく、それらを実践して時には失敗も繰り返しながら、考えなくても認識できるようになるまで基礎的な鍛錬を繰り返しましょう、みたいなことかな。

2)「より小さな円を描く」達人の思考や動きなどを詳細に観察し、できる限り小さな要素に分解して同じ動作・思考ができるようにする。その後それぞれを少しずつ小さいモーションに変換しながら、「より早く少ない動作で」行えるようにすること。
この粒度は他人の目から見れば全く感じ取れないほど、小さなディテールにフォーカスする必要があるとのことで、ことばで読むよりも遙かに難しそうなメソッドですね。1)みたいにある程度できたかどうかを自覚できなさそうで、しかも円の小ささには終わりが無いという、、、本書の中で最も興味深いメソッドな気がします。
円を描くというのはもちろん比喩的なものですが、例えば描くという一見単純に見える動作を、仔細に観察して「分解」しながら「理解」し自ら「再現」する、という学習ループをつくりあげる感じですかね、、、

3)「引き金を構築する」自分が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を自覚し、それを自ら高精度で再現できるプロセスを持つ。いつも緊張してしまう会議の前にヨガをして瞑想して、、、みたいな5つくらいのステップからなる例が紹介されてました。これはどんな人でも導入しやすそうですね。前提としてあくまでメンタル面でのサポートのためという感じでしょうか。心の持ちようが変わるとパフォーマンスも変わるよね、という感じ。

読み物としては面白い、「習得」という点にフォーカスするなら、もう少しコンパクトにまとめられたのではという気がしなくも無い。

『The Night Life of Trees』

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TARA BOOKS の『The Night Life of Trees』。インドのゴンド族という民族の、聖なる木にまつわる神話をモチーフにした物語。真っ黒な手漉きの紙にシルクスクリーンで手刷りされている。繊細で力強い世界観を表現している。世界各国で翻訳されていて、言語や版毎に表紙のイラストやインク色が異なる。
シルクスクリーン印刷 / ハンドメイド上製

紙から印刷、製本まで全て手作り。手製本とは言われないと気づかないほどモノとしてはしっかり出来てる一方、紙はページによって目の方向や粗さが違って、表情が面白い。

左ページに白インクで説明文、右ページに大きなイラストという構成だが、ページ毎に紙の裏表が異なる。テクスチャーが強い方はインクの乗りが悪いので、エッジが荒れてるところもある。裏表とか紙目の方向とかはあんまり気にしてない印象。

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