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マネジメントを楽にする!組織のコミュニケーションを変えるチームコーチングの知恵(GTC修了生インタビュー:企業内マネジャーに聞いてみたVol.1)

今回はプロセスワークを応用したチームコーチング講座「ジェネレーティブ・チームコーチング(GTC)」に参加いただいた3名の企業内マネジャーとの対談企画をお届けします。

約4ヶ月間のGTC講座を終え、組織・チームマネジメントに携わる方々がチームコーチングを学ぶ意義、組織づくりや部下育成、部門間コミュニケーションでの実践についてお聞きしました。

オンラインインタビューの様子

<インタビュー参加者>
鈴木美咲さん:鈴木(美)
決済サービス系企業 セールスグループ シニア・アカウントエグゼクティブ
大野千尋さん:大野
大手IT系企業 技術部部長 兼 プロコーチ
鈴木大元さん:鈴木(大)
不動産リノベーション会社 営業企画部 兼 市場戦略推進部 部長
<モデレーター>
宮本大輝:宮本
ジェネレーティブ・チームコーチング(GTC)トレーナー

本インタビュー記事は前編(Vol.1)・後編(Vol.2)で構成されています。
「前編」は3人がGTCを受講した理由、学びの実践と気づきついてお話ししています。

後編(Vol.2):組織の葛藤・対立を超える!マネジャーの新たな武器としてのチームコーチング活用法



チーム・組織の新たな可能性を求めて


ーーまずGTC講座を受講した理由を教えてください

鈴木(美):
当時の自分のテーマを思い出すと、会社の文化として「会社としての成功・幸福」と「個人の幸せ」の両立を掲げていて、1on1や丁寧めなコミュニケーションなどもしっかりやってるのですが、「会社としてやってほしいこと」と「個人のWill」が重なるところを見つけるのが難しいと感じてました。

今の働き方として多くの人が1つの会社にずっといるわけではなく、特に若手メンバーなどからは本人のWillが今の会社と交わらないみたいな話が出てきます。それを応援したい自分も半分いますし、でも折角なら一緒に働く道も見つけたい。もちろんその2つが交わるところを探すんですが、マネジャーの帽子を被った時にどう振る舞うのが正解か結構迷うことがあります。

正直、その「本当のWill」を応援することによる会社への罪悪感みたいなものもあって、私のような立場ではパーソナルコーチングや1対1の関係性に閉じてしまうことで、結局は会社でやれることの重なりを見出すことができず、キャリアサポートへの限界を感じていて、今までのやり方や知識だけでは解決できないこともあると思っていたところで、タイミングよくチームコーチングの世界に誘われた感じでした。

鈴木(大):
仕事では所属する部署と営業部がよりお互いの意見を遠慮することなく率直なコミュニケーションをとり合える関係になるにはどうしたらよいだろうか、という所に関心がありました。同時に、僕は日本と韓国のハーフなんですが、お互いがお互いの国をちょっと極端に見てるなと小さい頃から気になっていたこともあり、自分の人生の中で対立してるような所に架け橋を掛けられたらいいなという地続きのような想いもあったように感じます。いつかチームコーチングのようなものを学んでみたいと思っていたこともあり、良いタイミングだと思って受講しました。

大野:
昨年5月にTHE COACHの全コースを修了し、次に学びたいことが2つありました。1つがプロセスワーク、もう1つが集団に対するコーチングでした。後者はチームスポーツに関わっていてその支援が何かできないかという文脈だったので、正直仕事として使うイメージはあまりなかったんですが、プロセスワークとチームコーチングをいっぺんに学べるやつがある!となり、参加しました。

「個人」ではなく「フィールド」の力に意識を向ける


ーーGTCでの学びは組織マネジメントにどのように役立っていますか

鈴木(美):
仕事のモチベーションが上がらないみたいな相談を受ける時、それは本当にその人のせいかという視点を持つようになったことです。そういう声が出てくるタイミングってなんとなくみんな同じこと言うと感じていて、そこには「フィールド*」の力が働いてると気づけるようになりました。頑張れないのは自分の責任って結構みんな思っていて、とにかく自分が頑張ればいいだけだとどんどん落ちていく構造になりがちですけど、実は周囲の影響を受けていることを最初はわかんないんですよね。

例えば「会社の雰囲気が今ちょっと元気ないように見えるんだけど、そういうことを感じないか」とか伝えてみると、「そう言われてみれば」とちょっとだけ視野が開ける感覚が出てきます。GTCでの「フィールド」みたいな考え方を伝えていくのは難易度が高いので、言い方は工夫してますが、「あなただけのせいじゃないんだよ」という風に説明することが増えたなと思います。

*GTCでは集団の中で起きていることを「個人」「関係性」「フィールド」「システム」の4つのレベルで捉えます。「フィールド」とは集団(今回の場合は主に所属しているチーム・会社)の文化や雰囲気、無意識に影響を与えている存在や事象などを指します。

引用:Generative Team Coaching®︎

宮本:
モチベーションが低い、主体性が低い、当事者意識が低い、という話は組織課題としてよく出るテーマですよね。そして、それはその人のせいだ、だから育成が必要だ、という考え方が主流ですけど、そうじゃないかもしれない。フィールドで起きていることを紐解く、という視点を持つことで見え方や関わり方も変わってきますよね。

鈴木(美):
実際には「モチベーションが落ちている」すらも言い出せないことも起きているし、それは必ずしも自分だけの問題とは限らず、構造上の話だよと言うのは伝えていきたいです。例えば「なんかみんなちょっと疲れた表情してるよね」とか「会社の過渡期ではあるけど、退職者も一定数出てきてるよね」とか客観的な視点を与えることで、組織的な問題と自分の話を整理できます。モチベーションが低い原因が何なのか、実は見当もつかないと感じてる人はまさに「フィールド」の影響を受けてるということだと思うんですけど、何かの力が働いてるのかもしれない、会社の雰囲気に飲まれてるかもしれない、みたいな気づきを得られると少しずつ変わっていきます。

「なぜできないか」ではなく「何がそうさせているか」を知る


宮本:

そういう意識を持つ中で何かご自身の変化はありましたか。

鈴木(美):
私自身もどこまでが自分要因で、どこからが自分以外の要因なのか、ちゃんと切り分けることはかなり意識しています。自分自身も組織の一員としてその影響を少なからず受けているので、自分がそこに飲まれないというか、自分の中で1回要因を分析して断ち切っておかないと、周りにいるメンバーにも気づかないうちに伝播してしまうことがあると思います。ある程度影響を与えてしまうのは組織の仕組み上も仕方がないですけど、少なくとも自分がどういう状態か、自分に影響を与えてるものは何か、の解像度はできるだけ上げておく方が、関わるメンバーにとって良いことなのではと意識するようになりました。

大野:
私もそういう見方ができるようになることは自分にとって癒しにも繋がると思います。自分もなぜかずっと憤りみたいなものを感じて過ごしている自覚があって、何に怒っているのかよくわからずに過ごしていた時期が1ヶ月ぐらいあったのですが、自分が「非主流派*」だということへの憤りなんだと気づいた途端にちょっと楽になりました。マイノリティだから必死に気合入れてやっていかないと流されてしまう、踏ん張らないといけない感覚があり、自分の中からエネルギーを沸かさないとやってられない感じがあって、必死だったんだと思えるようになると自分の気持ちも変わっていきますね。

*「主流派・非主流派」とは集団で働くダイナミクスを扱うプロセスワークのフレームワークです。組織内には、役職や部署、年齢・性別、経験・スキルなど様々な要因により、相対的にパワーを持つ人・グループ(主流派)と、持たない人・グループ(非主流派)が存在し、関係性における葛藤や対立を生み出していると考えます。(詳細は以下記事)

大野:
他にも、例えばマネジャーがマイクロマネジメントしてて、「マネジャーとしていけてないよね」と言われてるのを聞くことがあります。言ってる人たちは、あの人のマネジメントスキルが低いから何とかしないといけない、誰かが教えないといけない、みたいな感じなんです。それもあるかもしれないが、あの人も何かに突き動かされてマイクロマネジメントしてる可能性があるという見方もできます。

そう思うと、その人よりも上の組織の偉い人から影響を受けて、やりたいかやりたくないか自分でもわかんないけど、そうなるしかなくなっている、そうせざるを得なくなっているということだったりもするんですよね。管理される側も細かく報告するしかなくなって、なんかわかんないけど、みんな疲れてるみたいな状態になってるように私からは見えるんです。そこでマネジャーをマネジメント研修に放り込むみたいなことやっても余計疲れちゃうだけだなという感じがします。それで本当にベストソリューションなのかという目線を持っていると、文句を言ってる人にその視点を投げかけることができるようになりました。

宮本:
たしかに、あのマネジャーはうまくできてないよね、と言うのはよく聞くけど、なぜそうなるのかは個人の責任になってしまって、深堀りきれてないことが多いです。そこに気づけると改めてあるべき姿を考えれると言うのはありますよね。

集団の構造・文化に気づくとコミュニケーションが変わる


鈴木(大):

私の場合、会議の場で他部署メンバーと話をする時、なかなか話が噛み合わなかったり、自分たちの考えがうまく伝わらないと感じることがありました。でもGTCを学ぶ中で、その相手も自分が見えない所で、様々なプレッシャーを受けていたり、リクエストを受けてるからこそ、この発言が出てきているのかもと思えるようになりました。

「そうさせられてる」と思えた時に、そうではない一面もちゃんと見えてきて、ちょっと協力的な仕草をしてくれたとかに気づけると、会話のチャンスボールになっていきます。僕たちのことを考えて言ってくれたのかと思えると、もうちょっと聞かせてくれますかという言葉も出てきて関係性が動くというか、それはすごく良かったです。

宮本:
表面的な言葉だけ捉えると否定的に聞こえたりもするけど、構造や文化の中でそう言ってる、言ってくれていると気づけると、関わり方が変わってきますよね。

鈴木(大):
多分一人の人の中にも色んなキャラクターがいるわけじゃないですか。やっぱり関係が悪くなると、相手のネガティブな側面ばかりが見えてしまうと思います。でもGTCのおかげで「そういった立場を取らざるを得ない部分もあるかもしれない」「仕方ないのかな」という眼鏡を手に入れることができ、その人の良い側面をちゃんと見てあげるように自分自身がなれたのは、実際に起きたことですね。

<編集後記>
業績プレッシャー、イノベーション、エンゲージメント、メンバーの価値観の多様化、リモートワークなど、管理職を取り囲む環境は複雑化し、マネジメントの難易度が高まっています。多くの役割・責任を持つマネジャーが、自分自身に対しても、周囲に対しても、時に厳しさを手放し、「私たちも何かに動かされているのかもしれない」と視点を変えることで、心に癒しと余白が生まれ、新たな行動が生まれてくると感じました。(立野夏樹)

ジェネレーティブ・チームコーチング(GTC)講座の詳細はコチラから
※一般社団法人組織開発コーチ協会(ODCF)/バランスト・グロース・コンサルティング株式会社 共催

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