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組織開発×プロセスワークVol.6〜主流派・非主流派の対話を支援する〜

組織の変容が生み出される時には、様々な関係性や立場の対立をファシリテートするスキルの必要性が出てきます。その際に役立つのが、プロセスワークの「主流派・非主流派」「ゴースト」というレンズ(見方)です。組織の(顕在的 or 潜在的な)対立を見立て、介入していくための知恵としてぜひ活用してみてください。


「主流派」と「非主流派」

「主流派」「非主流派」という考え方は「全体性モデル」を応用したもので、プロセスワークがグループ・チーム・社会・政治を見る時のフレームワークです。

「全体性モデル」とは、組織には「中心」となる人たちが存在し、そこに入らない人たちは「非中心」となり、彼らが抑圧されると「周縁化」し抵抗勢力となる。その結果、組織の可能性が制約されるというものです。

まさにダイバーシティ&インクルージョンの文脈にも活用できるモデルですが、この「中心」「非中心」「周縁化」の"全体"に取り組むことが、一人ひとりがより多様かつ自由にパフォーマンスを発揮し、組織の豊かな可能性が開かれていくと考えられます。

つまり「主流派・非主流派」は、組織や集団で働く力動を扱うプロセスであり、組織開発においても真に有効な施策は主流派と非主流派の対話から生まれることが多くあります。

「ゴースト」の声に気づく

主流派・非主流派の対話が成立しなかった故の悲劇がコダックのケースに代表されるものです。危機感を持っていた経営陣はデジタルの波に乗るための変革を志しました。この変革が失敗に終わった後に、非主流派の声がようやく聞かれたといいます。非主流派が変革を理解しているように見せる一方で、抱えていた悩みの声は「自分たちの仕事がなくなるのではないか?」「変化についていける自信がない」などの声でした。これらは潜在化してゴーストとなり変革の妨害となっていたのです。

「ゴースト」とは、その場にいないのに組織に影響を与えている存在であり、「非主流派」が周縁化されるとその声は「ゴースト」となり、多くの場合、組織変革を阻むエッジを形成する要因になります。もし、ゴーストの声が安全に聞かれる場がもたらされて、変革への抵抗として顕在的に対話が行われていれば、新しい潮流がそこから生まれる可能性があったかもしれません。

つまりゴーストの声をしっかり浮上させることが大事であり、ここを突破できると変革が進みやすくなります。一方で、気づかない、見て見ぬふりをすると対処法がわからず組織開発が失敗に終わります。

<ゴーストの例>
・今は組織にいない創業者や過去のリーダーなどの存在
(ゴーストは必ずしも悪いものだけではなく、良いゴーストもある)
・チームや組織の雰囲気の背後にある歴史や痛み
(過去の○○に戻りたくない。同じことが起こるかわからないのに無意識に避ける。)
・組織変革の際に無視される非主流派の部門や現場の声
・シニアのリスキリングに関する「俺たちはもう学びたくない」という本音

では、ここから組織の中の「主流派」「非主流派」「ゴースト」を特定し、対話によって組織の変化を生み出していく具体的なプロセスを解説していきます。

まず最初は組織に現れている症状や問題を特定するところからスタートし、その背後にある組織や個人間の関係性に意識を向け、「主流派」「非主流派」それぞれを見立てていきます。「主流派」は主に組織におけるランクの高い側になることが多いですが、階層のヒエラルキーに伴うランクの他に、組織の花形部署や本社、年齢・性別など組織の文脈によって生じるものもあります。(ランクの概念についてはまた改めてご紹介しますが、「人間関係において、その人が有している特権やパワー(影響力)」のことであり、上下の力関係の感覚を伴うもの、とまずは理解してください)

そして組織の症状の周辺に存在するゴーストの声(周縁化された「非主流派」の声)を特定していきます。サーベイ結果・飲み会での会話や噂話・退職者の声などから探ることもできますし、プロセス構造分析もゴーストの声を浮上させる上で非常に有効なアプローチです。

その後、ゴーストの声について、主流派・非主流派それぞれの立場からどのように扱うかを考えていくステップに進みます。
非主流派の立場から持ち込む際には、ファシリテーターは感謝と承認、許可取りと勇気などのエネルギーをスキルフルに持ち込むことが鍵です。主流派の声は自分(たち)の中にあることを認め、主流派の立場を想像し、彼らがメッセージを受け取りやすい方法を考えていきます。

主流派の立場から持ち込む際には、対立に関する心理教育を行い、ゴーストの声を受け取る安全な場を準備します。ゴーストの声の中にある1パーセントの真実に意識を向け、意味ある声としてまずは受け取るように関わることが大切です。

最後にお互いにできるアクションに落とし込みます。対立自体の解消が目的ではなく理解を進めることが重要であるという前提に立ち、「心理的安全性」を高めた上でお互いの願いを聞ける状態をつくります。その結果、関係性やシステムのフィールドそのものが進化し、主流派と非主流派のコミュニケーションが活性化していきます。

実際には、主流派と非主流派の当事者同士が対話すると分断が顕在化し、炎上するか、そもそもの対立が回避されることもあります。なので、非主流派のグループのみとの対話でゴーストの声を受け取り、主流派に心理教育をした後に、ファシリテーターがゴーストの声を届ける。受け取る覚悟を持てたら合同の対話の場を作り、対立を解消していくファシリテーションを行うことも多くあります。また、組織内の熱量の高い大きな葛藤や対立を扱うため、第三者のプロのファシリテーターに入ってもらうことをお勧めします。

見立てるための「問い」

慣れるまではなかなか主流派・非主流派とゴーストを特定しづらいですし、さまざまな関係性が入り組んでいることも多いです。まずは以下の「問い」も参考にしながら、主流派・非主流派・ゴーストの見立てにチャレンジしてみましょう。

今回は「主流派」「非主流派」「ゴースト」の3つの視点で、組織の対立を見立て、実際にファシリテートしていくプロセスについてご紹介しました。
実際に取り組んでいくのは一筋縄ではいきませんし、まさに対立の炎にとどまる瞬間が多く現れるため、ファシリテーターや支援者自身の中でも様々なエッジが出てくることも多いと思われます。

同時に組織開発の取り組みから新しい未来を生み出し、ビジネスへの成果に繋げていく上では大きなポイントになる部分ですので、まずは自組織の本質的な課題を見立てていく上での知恵としてぜひ参考にしてみてください。

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