見出し画像

労働運動内のアナキスト(4)

原文:https://blackrosefed.org/anarchists-in-the-labor-movement-4/
原文掲載日:2024年10月11日

この記事は、「労働運動内のアナキスト」と題したインタビュー=シリーズの第4回である。それぞれのリンクをクリックして、第1回の教育労働者拙訳)、第2回の医療労働者拙訳)、第3回の金属加工労働者拙訳)を読んでいただきたい。

このインタビューでは、ノースカロライナの公立図書館労働者、アレックスに話を聞いた。

タイトルが示しているように、このシリーズでは職場の組織化に取り組んでいるアナキスト達に話を聞く。話を聞く人々の中には、既存労働組合の一般組合員の中で戦闘的少数派を構築している者もいれば、新しい労働組合キャンペーンを通じて未組織労働者の組織化をしている者もいる。また、労働組合の支援が得られない情況下で職場闘争に勝つための能力を構築する方法を見つけている者もいる。

このシリーズの目的には、単に、米国労働運動にいるアナキスト闘士の存在にスポットライトを当てるという面もある。より本質的には、インタビューを受けた人達に、成功も失敗も含めて自身の経験を批判的に振り返り、一般化できる教訓を導き出してもらっている。

このシリーズでインタビューした人達は、全員ではないが、ブラックローズ/ローサネグラのメンバーである。

分かりやすさと長さを考慮して、回答は編集されている。


アレックス(公立図書館司書)

BRRN:あなたの政治見解を一言でまとめてもらえますか?

アレックス:私の政治は、綱領主義的傾向を持つ無政府共産主義の信条です。

BRRN:あなたが取り組んでいる組織活動の背景を教えて下さい。

アレックス:私はノースカロライナで公立図書館の司書として働いています。私達は郡の公務員とみなされていて、私達の州には特に厳しい労働法があるので、私達公務員には団体交渉権がありません。

現実的に言えば、これは、他の州の労働組合が持っているのと同じツールの多くを私達は持っていない、という意味です。私達は、報復から身を守れるようなやり方で図書館行政と郡の委員に圧力を掛ける方法について創造力を発揮しなければなりません。図書館システム全体で、組合員募集活動の対象となる「非管理職」職員が約100人います。この組織活動は、およそ2年前に始まりました。当時、図書館管理者達が職員数を増やさずに営業時間とサービスを拡大しようとしたのです。私達は新型コロナウイルスのパンデミックが始まってから酷い人手不足に陥っていて、ただでさえ今いる人員で運営を維持するのに苦労しているのです。

管理側のこうした評判の悪い動きが多くの人を激怒させたので、私と数人の同僚は、図書館職員を正式に組織し始める絶好の機会だと見なしました!私達は、職場で今も少数派ですが、こうした不評な方針の拡大を何度か上手く覆してきました。

BRRN:既成組合と組んでいるのですか、それとも独立しているのですか?

アレックス:既存の組合に入るか、独立してやっていくかについては、メンバー間でかなり長い間議論しました。最終的に、ノースカロライナ州公共労働者サービス組合‐全米電気工労組(UE)第150支部に加盟して組織を作ることに決めました。UE150はこの州で唯一、公共部門の労働者を組織した経験のある組合です。地域の市役所職員の中にこの支部に加入している人達がいたため、私達の組織化活動で部門を超えて繋がるには良い手段かも知れないと考えました。UE150は過去、州の職員や市役所職員を主に組織してきたので、私達郡職員は戦略を練るべき新しい課題となっています。

BRRN:自身のアナキズムの政治見解は、同僚と共に権力を組織化することとどのように関係していると思いますか?

アレックス:階級闘争と労働政治はあらゆる革命闘争において重要な問題です。仕事は、大抵、人が権利を奪われたと感じるよう教わる場所ですが、同時に、私達の多くが局所的権力システムに対して自分達の影響力を行使する最大の可能性を秘めている場所でもあります。

私自身にとって、労働者の組織化は3つの特別で重要な知識を強化してくれました。(1)個人としての私達には自分自身と周囲の人々に権能を与えるように行動する主体性がある。(2)個々人がより大きな権力システムと戦い、それを変革する能力を持てるようになるのは共同集団としてだけである。(3)他者との集団闘争で、教育を受け権能を持った個人として行動することが、現代社会の孤立と疎外に対する最大の特効薬である。

アナキストとして、私は、集団闘争は水平的に組織されねばならないと信じています。だから、私は、労働組合の同志達に「嫌なら出て行け」という態度を取らないように意識して努力しています。私は、自分の政治的観点から自分のスタンスを主張しますが、もっと大きなグループが民主的に別な行動方針を決定したのなら、皆で決めたことなら何でも支援しようとするつもりです。私は、労働者の組織化について常により戦闘的で直接行動の指向を促しますが、闘争の前衛や独裁者として行動するつもりはありません。時間を掛けて教育し、議論し、試行錯誤しながら、思っている以上に私達には職場に対して直接的権力を持っていること・その力を一緒に行使すべきであることを同僚達に納得させたいと思っているのですよ!

BRRN:アナキズムの政治について同僚と話すことはありますか?同僚と「政治」(世界情勢や地元の権力構造)について話しますか?

アレックス:私は概して、同僚達の大半と「アナキズム」について露骨に話すのを避け、もっと一般的な「反資本主義」とか「左翼」の話をするようにしています。私達は地方公務員に分類され、私達の給与と職員は郡委員会の気まぐれに左右されるため、職員間で地元の政治はよく議論されます。私達は団体交渉をできないので、戦略の1つとして、上司と管理者が指示を仰いでいる地元政治家に圧力を掛けています。特に労働組合員は、地元権力のどの部門が私達の大義に共感しそうなのか、攻撃的なPR戦術で揺さ振りを掛けられるのか、今では遥かに敏感に察知するようになっています。国際政治問題はもっと厄介なテーマで、何人かの同僚達が言う「進歩的なNPR」(訳註:NPRは米国の公共ラジオ放送で、進歩的な見解を持つとされている)の論調に私が反発しなければならないこともありますね。

BRRN:あなた方の組織活動には、自らを「政治的」と見なしつつも、異なる政治的伝統や政治組織に属している人々もいますか?

アレックス:私達の労働組合員の多くが、自身を「政治的」人間だと考えていると思いますが、必ずしも特定の政治的伝統を律儀に守っているわけではありません。組合員の大半は、「進歩的リベラル」か「DSA(訳註:アメリカ民主社会主義者)型改良的社会主義者」の陣営に属していると思います。後者のグループについては、メンバーの中に他の労働者組織やテナント組織のキャンペーンで活動している人がいると知っていますが、何らかの左翼政党に属しているとは思いません。でも、以前に組織化の仕事をした人達は、支部の人脈を使って訓練セッションを設定する手助けをして、組合員にアドバイスを提供してくれました。もっと古い20世紀マルクス主義的な年配の同僚も数人いますが、皮肉なことに、彼等は組合運動に参加するよう説得するのが難しい人達ですね。

BRRN:労働組合の組織化は、社会変革や革命といったあなたのヴィジョンに合致していますか?

アレックス:革命を起こすのに必要な部門は労働だけではないのですが、労働者の組織化は個人に権能を与え、集団的組織化の力を発揮するための特に有用なツールだと思います。ステップ1:労働組合を組織する。ステップ2:一般組合員を教育し、政治的に積極的な主体になり、自分の仕事場を集団的に運営するよう学んでもらう。ステップ3:この積極的で集団的な学びをより広い社会的規模に拡大する。直接民主主義と直接行動によって、権力システムを全面的に解体し、再形成できると証明する。社会革命です。ステップ4:社会革命が政治的・経済的革命に繋がり、究極的にはアナキズム的な社会主義社会を創造する。

BRRN:組織を作る上で、最も役立ったリソースは何ですか?

アレックス:前述したとおり、私達は集団交渉を行えないので、労働者組織化の伝統的リソースは私達の職場情況に直接は当てはまりません。より広域的な支部にいるUE150の組合員仲間達は、過去数十年でノースカロライナの公務員を組織する上で自分達が経験した成功と失敗について豊富な情報を提供してくれています。また、UE外の労働者オルガナイザーと話すのも、UEに固有な独自の組織化スタイルの盲点や欠点の幾つかをより良く理解するのに役立ちました。組織活動の初期に、私達は近隣のテナント組合の人に来てもらい、「組織化のヒント初級講座」短期集中コースを行ってもらいました。これは、同僚との会話を始め、私達の州で「労働組合は違法だ」という神話を払拭するのに特に役立ちました。

BRRN:労働組合を組織しようとしているアナキストにどのようなアドバイスをできますか?自分が始めた時に、知っておけば良かったことは何ですか?

アレックス:忍耐強く、マイペースで。労働組合の組織化は格好良い仕事ではありません。軌道に乗るまでは、長い会議・メモ取り・スプレッドシートの作成・気まずい会話を何度も何度もするでしょう。燃え尽き症候群にご注意を!当初最も献身だった非常に多くのメンバーが、自分が余りにも多くの仕事を引き受け過ぎていると感じてドロップアウトしました。さらに、訓練と教育を受ける前、メンバー間の仕事量は必ず偏ります。あなたが毎週、会議と余分な仕事に時間を割いて打ち込めるのというなら、それは素晴らしいのですが、同僚の大半は当初、そうではないと断言しておきます。

私達は今も学んでいるところなのですが、人々を激怒させる喫緊の問題がない時でも、人々が参画し続けられるよう激励するにはどうすればいいのでしょう。要求を勝ち取った後、どうやって勢いを維持するのでしょうか?私達は集中的に作業部会を行う時期と、もっと楽しく社交的なコミュニティ作り活動とのバランスを取ろうとしています。コミュニティ作り活動は、職場が熱くなっていない時でも、人々が顔を出したくなるようにしてくれるでしょう。職場の諸問題に留まらない連帯感を構築するために、ポットラック(持ち寄り)パーティー・映画観賞会・グループでのピクニックなどを考えてみて下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?