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労働運動内のアナキスト(1)

原文:https://blackrosefed.org/anarchists-in-the-labor-movement-1/
原文掲載日:2024年7月17日

この記事は、「労働運動内のアナキスト」と題した新しいインタビュー゠シリーズの第1回目である。

タイトルが示しているように、このシリーズでは職場の組織化に取り組んでいるアナキスト達に話を聞く。話を聞く人々の中には、既存労働組合の一般組合員の中で戦闘的少数派を構築している者もいれば、新しい労働組合キャンペーンを通じて未組織労働者の組織化をしている者もいる。また、労働組合の支援が得られない情況下で職場闘争に勝つための能力を構築する方法を見つけている者もいる。

このシリーズの目的には、単に、米国労働運動にいるアナキスト闘士の存在にスポットライトを当てるという面もある。より本質的には、インタビューを受けた人達に、成功も失敗も含めて自身の経験を批判的に振り返り、一般化できる教訓を導き出してもらっている。

このシリーズでインタビューした人達は、全員ではないが、ブラックローズ/ローサネグラのメンバーである。

分かりやすさと長さを考慮して、回答は編集されている。


ジューン(大学職員)

BRRN:あなたの政治見解を一言でまとめてもらえますか?

ジューン:アナキズム。民衆によるコミュニティの直接民主主義的管理です。

BRRN:あなたが取り組んでいる組織活動の背景を教えて下さい。

ジューン:私は、東海岸のある都市で、約4千人の交渉単位を持つ大学院労働者組合を組織しています。組織活動は2010年代半ばに始まり、共産主義に傾倒する大学院生を中核として組織委員会が結成されました。何年かして、一連の諸問題と破綻(全く非協力的だった大規模で有名な親組合を脱退し、別な組合に再加入した)があり、私達は組合選挙を行い、勝利しました。

BRRN:既成組合と組んでいるのですか、それとも独立しているのですか?

ジューン:定評ある親組合と協力しています。私達がこの方法を選んだのは、親組合は多くのリソース(常勤有給スタッフ・弁護士・独立した資金調達の約束)を提供してくれたからです。私達の組織の創設者にはこの決定を快く思わない人達もいます。完全に独立するという選択肢は、全体的に見て、私達には敷居が高過ぎました。内部データの管理・ウェブサイトのIT・資金調達・労働法など技術的な面で同時に多くの事をしなければならなくなると感じたからです。

BRRN:自身のアナキズムの政治見解は、同僚と共に権力を組織化することとどのように関係していると思いますか?

ジューン:私のアナキズムの政治見解は、私の組合にいる主要オルガナイザーと高いレベルで一致しています。私達は皆、民衆権力を使って職場での労働者管理・平等・尊厳を求めています。また、政府と組合官僚機構は歴史の袋小路で、こうした手段では私達の目標を達成できないと見なしてきました。

多くの組合員は、漠然と社会主義・リバータリアン社会主義の政治空間に身を置いています。組合員の大部分が「アメリカ民主社会主義者(DSA)」「社会主義解放党(PSL)」「社会主義インターナショナル(ISO)」といった既存組織の政治見解に精通していたり、自身が以前にこうした組織のメンバーだったりしています。彼等の多くは、こうした社会主義政党中心的の組織作りで燃え尽き、自らの政治原則を実行する方法として労働者の直接的組織化に目を向けるようになりました。

BRRN:アナキズムの政治について同僚と話すことはありますか?同僚と「政治」(世界情勢や地元の権力構造)について話しますか?

ジューン:私達はよく世界情勢や「政治的」話題について話します。階級的背景が似ていますし(結局皆同じ仕事をしているわけですから)、実際、社会的にリベラルな東海岸の都市に住んでいるからです。平均年齢がかなり若いからでしょうが、大半が資本主義に対する真っ当な嫌悪感を抱いています。地主・上司・警官を憎み、より善く・より平等で・暴力の少ない世界に住みたいと考えている点でかなり一致しています。

組合で見られる最も大きな意見の相違は、一般組合員の中にいる声の大きい少数派(5%以下)がシオニズム支持者のようだというものです。オルガナイザーと組合代表が全員反シオニストなので揉めているのです。

BRRN:あなた方の組織活動には、自らを「政治的」と見なしつつも、異なる政治的伝統や政治組織に属している人々もいますか?

ジューン:驚くべきことに、私達の組合には、異なる伝統や組織に身を置いて「政治的」と自認する人の存在感は強くありません。以前にISOやPSLに所属していた組合員は、そうした組織と決別し、今ではその権威主義的立場に反対しています(元PSLの組合員は、現在、「リバータリアン社会主義読書会」の運営を手伝っています)。DSAの元メンバーだった組合員も、私達の組合の目標・価値観・活動に対して何の矛盾も持っていません。唯一の例外は「社会主義オルタナティブ」とPSLが私達に接触し、支援の提供を申し出たことです。しかし、私達は投票で彼等の誘いを断ることにしました。私達の多くが、国家共産主義政党は反動的で・寄生的で・歴史的に時代遅れの政治組織であり、労働運動にはほとんど貢献できないと考えるようになっていたからです。

BRRN:労働組合の組織化は、社会変革や革命といったあなたのヴィジョンに合致していますか?

ジューン:私達は、労働組合の組織化が社会革命という目標を前進させる一助になってほしいと願っています。なぜなら、労働組合は、労働者が共に戦い、互いに頼り合い、階級の敵を識別して憎むよう教えてくれるからです。しかし、米国の労働組合、そしてその母体である様々な労働者連盟は、恐らく絶望的なまでに資本主義国家とブルジョア政党に統合されています。こうした労働組合は、革命と新社会に向けて運動を前進させる中で、脱却するか、解散するか、置いてきぼりになるかのいずれかを迫られるでしょう。私は仲間の労働者全員を代表しているわけではありませんが、私達の中には、技能を高め・社会的繋がりを作り・新たな政治的理解を考案する準備として、つまり、社会の中で深刻な断絶が目前に迫った時にある種の「新しい」革命組織を結成する先駆けとして、労働組合を捉えている人達もいます。

BRRN:組織を作る上で、最も役立ったリソースは何ですか?

ジューン:レイバー゠ノーツは素晴らしいリソースです。レイバー゠ノーツの助力に声を大にして感謝します。また、私達は、ロジャー゠ウィリアムズ著『労働運動における有給職員という矛盾』、ジョー゠バーンズ著『階級闘争型労働組合主義』、アグスティン゠ギリャモン著『革命の準備:バルセロナのCNT防衛委員会、1933~1938』も読んでいます。

BRRN:労働組合を組織しようとしているアナキストにどのようなアドバイスをできますか?自分が始めた時に、知っておけば良かったことは何ですか?

ジューン:生活する中で毎日、常に、見知らぬ人と話すことを怖がらないようにしてください。余り社交的ではない人は、慣れて、上手くなるようにしていきましょう。また、私が始めた時に知っておけばよかったことは、相手がいる場所で会うこと・共感的になること・自分の信念に誠実であること(どれほど自分がストライキ・決裂・革命を望んでいるかについて、それほど直接的ではないにせよ)です。

同僚達の前でアナキズムという言葉を常に言っているわけではありませんが、彼等は、私が労働者と一般の人達が社会の運転席に座るべきだと考えているのを知っていますし、私が政府と警察を憎み、その代わりに参加型直接民主制で社会を運営すべきと考えていることも知っています。驚いたことに、皆、これを完全に理解できますし、実際に理解して尊重してくれています。労働組合のリベラル派は、私達アナキストを含めた急進主義者に反対していますが、彼等ですら、私達の正直さ・信念・私達の方法の成功に疑念を抱けないのです。

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