見出し画像

韓国に追い抜かれた日本の賃金水準

「日本人の給料・平均年収は韓国以下の衝撃」坂田拓也他7名の聞き書き・宝島社新書2021年11月発行

フリーライター坂田拓也は言う。日本人の年収は1997年当時、先進国の中で14位、2020年現在22位、23年間の増加率はたったの0.3%である。

最低賃金は2021年全国平均930円。ドイツは2022年1,306円、米国は2025年に連邦で一律15ドル(1,650円)義務化した。

韓国は828円、2020年までに950円目標も中小企業の反対で挫折。しかしここ10年間で2.1倍増加した。

北見昌朗社労士は言う。1990年バブル崩壊後、1997年平均年収は467万円、2018年440万円、27万円の減少している。

税金と社会保険料の国民負担率は、1994年34.9%、2020年46.1%へと11.2%増加。その結果、手取り年収は1997年419万円から2019年375万円へ44万円減少した。

中国からの輸入額は1990年3.1兆円、2019年32.7兆円、30年で30兆円近く増加、その分国内企業の売上が喪失している。多くは中小企業である。

コロナ雇用調整助成金支給額は上場企業だけで5,190億円(2021年7月時点)中小企業は手続き煩雑で従業員1名がかかり切りでないと申請できない。

人事コンサルの城繁之は言う。1998年から2019年まで20年で大企業の内部留保は250兆円から760兆円へ500兆円増加した。一方、人件費総額200兆円、有形固定資産500兆円、借入等負債額1,000兆円と横ばいである。

潜在成長率は資本投入、労働投入、全要素生産性の寄与度で決まる。設備、人件費が増加せず、生産性が上がらなければ、成長率が上昇しないのは当然。

企業は倒産リスク対策で、内部蓄積増加は当たり前。それが賃金と個人消費を減少させ、企業の売上が減少する悪循環「合成の誤謬」である。

東証株式の外国人投資家保有割合は3割、売買高の割合は7割。アベノミクスの金融緩和の株価上昇は海外投資家の懐を増やしただけ。

エコノミスト浜矩子は言う。債権大国、輸入大国の日本にとって円安は国民の富の流失。一部の輸出大企業の利益を増やしただけである。反対に、相対的貧困率は日本15.7%、デンマーク6.1%の倍以上である。

前連合会長神津里李生は言う。連合加入700万人と豪語するも、労組の組織率は全体で17%、中小企業は0.7%、実質、中小企業に労働組合はない。中小企業の退職金支払企業は65%。

衆議員江田憲司は言う。2012年を100とすると、2019年時点での物価は107.2、名目賃金は102.5、実質賃金は95.6、世帯消費は90.7。これがアベノミクスの実態だろう。

失われた30年で日本の中間層は消滅し、格差拡大と孤立化が目立っている。先日の大阪心療内科放火事件も格差拡大と孤立化の結果である。

来年10月より雇用保険失業給付保険料が0.4%に引き上がる。雇用保険料全体で見れば、44%の増加である。年度途中10月からの引き上げは参院選挙配慮と言う。小手先対応の政治で不安社会の解消が可能だろうか?

セーフティネット充実と格差縮小が進まなければ、無差別殺人的自殺は無くならない。米国の銃乱射事件同様、中間層消滅による分断、病む社会の現実が日本にも迫ってきている。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?