兵藤恵昭・読書記録

山登り・温泉・博徒の墓巡りが趣味。博徒史に興味を持つ団塊世代。Noteブログは読書記録…

兵藤恵昭・読書記録

山登り・温泉・博徒の墓巡りが趣味。博徒史に興味を持つ団塊世代。Noteブログは読書記録ブログです。 特定社会保険労務士・兵藤社会保険労務士事務所。 「博徒ブログ」も開設。下記URLクリックして下さい。https://blog.goo.ne.jp/shigeaki0303

最近の記事

「モノ言う株主」の株式市場原論・丸木強著

「モノ言う株主の株式市場原論」丸木強著・中公新書ラクレ2024年5月発行 著者は1959年生まれ、野村證券入社、公債資金調達引受、IPOのアドバイザー業務担当、退職後「村上ファンド」創設メンバー、その後、アクティビストファンド㈱ストラジックキャピタル設立、代表取締役。 現在、日本の株式市場は大きく変わりつつある。2014年スチュアードコード(責任ある機関投資家の諸原則)、2015年コーポレートガバナンスコード(企業統治の諸原則)、2023年「資本コスト株価を意識した経営に

    • 「三井大坂両替店・銀行業の先駆け、その技術と挑戦」萬代悠著

      「三井大坂両替店・銀行業の先駆け、その技術と挑戦」萬代悠著・中公新書2024年2月発行 著者は1987年生まれ、公益財団法人三井文庫研究員。 三井大坂両替店は松阪商人・三井高利が1674年、52歳の時、江戸で呉服小売業を開業。「店前売り」(たなさきうり)「現金掛け値なし」のキャッチフレーズで始めた。この手法は高利の親戚「伊豆蔵」が先に試行したと言われる。 元禄4年(1691年)呉服大坂店の隣、高麗橋で金貸し両替店を開業する。その後、呉服部門、両替部門ともに大坂、京都、江

      • 「経済学の思考軸・効率か公平かのジレンマ」小塩隆士著

        「経済学の思考軸・効率か公平かのジレンマ」小塩隆士著・ちくま新書2024年5月発行 著者は1960年生まれ、経済企画庁入省11年間勤務を経て、現一橋大学経済研究所特任教授。「高校生のための経済学入門」などの著書がある。 経済学は与えられた制約ある資源の中でどうやりくりするかを考え、解決しようとする学問である。それは一部では一般的な発想からズレている場合もある。 実際にズレているのか?いないのか?そこに経済学の限界がある。その限界の判断基準が効率性と公平性のジレンマ、トレ

        • 「それでもなぜ、トランプは支持されるのか?」会田弘継著

          「それでもなぜ、トランプは支持されるのか・アメリカ地殻変動の思想史」会田弘継著・東洋経済新報社2024年7月発行 著者は1951年生まれ、共同通信社ワシントン支局長、論説委員長歴任。現在、青山学院大学教授、関西大学客員教授。ジャーナリスト、思想家「トランプ現象とアメリカ保守思想」などの著書がある。 著者は「トランプは病因ではない、病状なのだ」と言う。原因でなく、結果である。トランプ現象は現在のアメリカ白人社会が持つ格差社会と階級社会の病いに大きな原因がある。アメリカは経営

        「モノ言う株主」の株式市場原論・丸木強著

          「ガザ日記・ジェノサイドの記録」アーティフ・アブー・サイフ著

          「ガザ日記・ジェノサイドの記録」アーティフ・アブー・サイフ著・地平社2024年5月発行 著者は1973年ガザ地区ジャバリア難民キャンプで生まれる。ブラッドフォード大学で修士号、欧州大学院で社会科学博士号取得、西岸地区に居住する小説家。2019年よりパレスチナ自治政府文化大臣。 本書は、著者が15歳の息子を連れて、ガザ地区に住む親戚を訪問中にイスラエルの爆撃が始まり10月7日以降、3ケ月近くガザに閉じ込めれれる。 その間に親戚、まわりの者が次々に殺されていく。妻の姉夫婦一

          「ガザ日記・ジェノサイドの記録」アーティフ・アブー・サイフ著

          「海鳴りの底から」堀田善衛著

          「海鳴りの底から」堀田善衛著・朝日文庫1993年6月発行 著者は1918年富山県生まれ、戦前、中国国民党宣伝部に徴用された経験から作家デビュー、「広場の孤独」芥川賞受賞。スペイン内戦から国際的な民族問題に関心を持つ作家。「海鳴りの底から」「方丈記私記」の作品がある。1998年脳梗塞で80歳死去した。 本書は、1637年(寛永14年)10月25日、天草、島原一帯で百姓一揆が勃発。その後、老若男女の百姓家族・名主、キリシタン大名有馬家の牢人ら3万4千人が島原の原城に籠城する。

          「海鳴りの底から」堀田善衛著

          「トヨトミの世襲」梶山三郎著

          「トヨトミの世襲・小説・巨大自動車企業」覆面作家・梶山三郎著・小学館2023年12月発行 著者は覆面作家と名乗る大手経済新聞社記者。2016年「トヨトミの野望」で衝撃デビュー、続編「トヨトミの逆襲」を刊行。本書がシリーズ第三作目である。 本書は日本のトップ企業トヨタ自動車をモデルとした企業暴露本である。かつて山崎豊子が書いた「華麗なる一族」と並ぶ企業小説である。 2022年に問題となった不正車検問題、最近のトヨタの不正認証問題など、日本を代表する企業のガバナンスが問題と

          「トヨトミの世襲」梶山三郎著

          「労働法はフリーランスを守れるか?」橋本陽子著

          「労働法はフリーランスを守れるか・これからの雇用社会を考える」橋本陽子著・ちくま新書2024年3月発行 著者は学習院大学教授。主著に「労働者の基本概念・労働者性の判断要素と判断方法」がある。 ウーバー、アマゾン宅配員として働くギグワーカー。多様な働き方という美名のもと、労働法に保護されない個人事業主には、労災保険の適用もない。最低賃金、長時間労働の規制も、失業時の補償もない。 労働法は誰のための法なのか?本書は、フリーランスの「労働者性」を考え直し、今後の日本の雇用社会

          「労働法はフリーランスを守れるか?」橋本陽子著

          「財政・金融政策の転換点」飯田泰之著

          「財政・金融政策の転換点・日本経済の再生プラン」飯田泰之著・中公新書2023年12月発行 著者は1975年生まれ、明治大学教授。専門はマクロ経済学、経済政策。岩田規久男、浜田宏一らの影響を受け、デフレ脱却のリフレ派だが経済成長だけでなく、平等も大切として所得再分配論も重視している。 いま世界の経済政策は大きく変化しようとしている。日本の財政政策は政府支出を抑制的に、金融政策は財政政策とは独立して行うことが常識だった。二つの政策の実効性に疑問符が付き始めた。 GDP比25

          「財政・金融政策の転換点」飯田泰之著

          「中国の自動車強国戦略」なぜ世界一の輸出大国になったのか?

          「中国の自動車強国戦略・なぜ世界一の輸出大国になったのか?」李志東著・㈱エネルギーフォーラム2024年4月発行 著者は1962年山東省生まれ、日本エネルギー経済研究所客員研究員、長岡技術科学大教授。 中国は、2023年上半期自動車輸出台数234万台となり、日本の202万台を抜いて世界首位となった。通年でも首位となる見通しである。中国は2009年自動車生産台数1,379万台、世界最大の自動車生産国になった。 2012年、中国は「自動車工業大国」から「自動車工業強国」を目指

          「中国の自動車強国戦略」なぜ世界一の輸出大国になったのか?

          「ガザ紛争の正体」宮田律著

          「ガザ紛争の正体・暴走するイスラエル極右思想と修正シオニズム」宮田律著・平凡社新書2024年4月発行 著者は1955年生まれ、現代イスラム研究センター理事長。専門はイスラム地域研究。「武器でなく命の水を送りたい、中村哲医師の生き方」など多くの著書がある。 2023年10月7日、ハマスのガザ攻撃により、多くの犠牲者が出た。一見すれば、ハマスの暴挙とも見える。しかし「空の見える監獄」ガザ、西岸地域でのパレスチナ人の現状、人権侵害、アパルトヘイト(人種差別と隔離政策)、ジェノサ

          「ガザ紛争の正体」宮田律著

          「島原の乱」神田千里著

          「島原の乱・キリシタン信仰と武装蜂起」神田千里著・講談社学術文庫2018年8月発行 著者は1949年生まれ、東洋大学名誉教授。専攻は日本中世史、中世後期宗教社会史、「宗教で読む戦国時代」など多くの著書がある。 5月に雲仙島原の原城跡に行ってきた。あの狭い城に3万7千人の一揆軍が籠城し、落城した。幕府鎮圧軍は12万5千人を動員し、攻撃した。全滅覚悟の籠城戦である。幕府軍の死傷者は1万2千人余り、攻撃部隊の1割が損傷した。その攻防の苛烈さに恐怖を感じた。 本書は、島原の乱を

          「島原の乱」神田千里著

          「消費者金融ずるずる日記」加原井末路

          「消費者金融ずるずる日記・当年59歳、ご利用は計画的にお願いします」加原井末路著・三五館シンシャ2024年6月発行 著者は1965年生まれ、1990年代半ばに、中堅消費者金融デックに入社。20年間この業界で四苦八苦、50歳で退職する。退職後、35年住宅ローン返済に苦しみ、自宅任売で整理する。 消費者金融は高度経済成長期に団地金融からスタート。1970年代資本の自由化、グローバル化で資金調達が容易となり、店舗拡大する。しかし過酷な取り立てで1977年第一次サラ金批判が生まれ

          「消費者金融ずるずる日記」加原井末路

          「おごそかな渇き」山本周五郎

          「おごそかな渇き」山本周五郎著・新潮文庫1971年1月発行 江戸下町もの、人情もの書かせたら天下一品の山本周五郎の短編集である。 「紅梅月毛」は家康・秀忠父子の前での馬競べにみすぼらしい老馬に乗って出場した本多忠勝の家臣・深谷半之丞の物語。読後にさわやかさが残る小説である。 下町もの「かあちゃん」隣近所の悪口にも耐えて、入牢中の長男の友人ために更生資金を作る一家の献身物語。その一家に強盗に入った盗人までその一家に住み着く。盗人が最後に「かあちゃん」と呼ぶまで家族と一体化

          「おごそかな渇き」山本周五郎

          「バカ老人たちよ!」勢古浩爾

          「バカ老人たちよ!」勢古浩爾著・夕日新書2024年3月発行 著者は1947年生まれ、洋書輸入会社に34年勤務、2006年退職。「最後の吉本隆明」「定年バカ」など多くの著書がある。 「暴走老人」の本が出たのが2007年、その後、年寄りが至るところへ進出している。活字メディアは「人生100年時代」と老後を楽しまなければ、損とばかりに老人を煽る。 一方で、最近の年寄りの傍若無人な立ち振る舞いが目に余る。ひとのバカを見て、自分のバカを直そう。まさに「殷艦遠からず」である。 著

          「バカ老人たちよ!」勢古浩爾

          「首都直下南海トラフ地震に備えよ」鎌田浩毅

          「首都直下南海トラフ地震に備えよ」鎌田浩毅著・SB新書2024年5月発行 著者は1955年生まれ、京都大学名誉教授。専門は火山学、地球科学、科学コミュニケーション論。 2024年8月8日起きたマグネチュード7.1の宮崎沖地震で、気象庁は南海トラフ想定震源域で大規模地震発生の臨時情報、注意報発令を初めて報じた。 本書は、今年の能登半島地震を踏まえて、今や日本全体が地震、火山噴火の激動期にあるという。能登半島地震は深さ16㎞、マグニチュードM7.6の直下型地震。熊本地震M6

          「首都直下南海トラフ地震に備えよ」鎌田浩毅