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「消費者金融ずるずる日記」加原井末路

「消費者金融ずるずる日記・当年59歳、ご利用は計画的にお願いします」加原井末路著・三五館シンシャ2024年6月発行

著者は1965年生まれ、1990年代半ばに、中堅消費者金融デックに入社。20年間この業界で四苦八苦、50歳で退職する。退職後、35年住宅ローン返済に苦しみ、自宅任売で整理する。

消費者金融は高度経済成長期に団地金融からスタート。1970年代資本の自由化、グローバル化で資金調達が容易となり、店舗拡大する。しかし過酷な取り立てで1977年第一次サラ金批判が生まれた。

その後も多重債務化は進み、自己破産者、自殺者が増加する。第二次サラ金批判である。1983年貸金規正法が成立、サラ金冬の時代が到来した。

2003年、ヤミ金対策法施行、2006年、最高裁みなし弁済否認・不当利得判決が出た。2010年には貸金法改正で金利上限が29.2%から20%〜15%(100万円未満10万円以上18%)に引き下げと環境が大きく変化した。

著者は、消費者金融ピークが過ぎた1990年代後半に消費者金融会社デックに入社、回収現場に入る。厳しいノルマをこなす中での多重債務者との交渉は身に迫る。それは金が人を作り、破壊する世界である。

デックはダイエー系列の消費者金融会社。ダイエー再建の過程で外資シティグループ傘下となった。武富士、アイフル大手より出遅れ、債権内容も多少レベルが下がる。ゆえに回収の厳しさは大手より強まる。

2015年50歳で退職。消費者金融時代年収600万円を維持できず、クレジットカードリボ払いの泥沼にはまる。住宅ローン返済を抱え、自ら借金の自転車操業に陥る。最終、自宅を処分して、立ち直る姿は心に迫るものがある。

貯蓄超過、金融自由化の日本経済は、経済成長、生活水準向上をもたらしただけではない。その経済合理性、技術革新は、様々な社会問題を合理性ゆえに、表面化させ、資本の本質を明らかにした。

本書は、資本の欲求の中で、動き、呻き、苦しむ人たちと、それに対処して生計を維持する人たちの可笑しき姿、そして哀しき現実を明らかにした本である。

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