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「首都直下南海トラフ地震に備えよ」鎌田浩毅

「首都直下南海トラフ地震に備えよ」鎌田浩毅著・SB新書2024年5月発行

著者は1955年生まれ、京都大学名誉教授。専門は火山学、地球科学、科学コミュニケーション論。

2024年8月8日起きたマグネチュード7.1の宮崎沖地震で、気象庁は南海トラフ想定震源域で大規模地震発生の臨時情報、注意報発令を初めて報じた。

本書は、今年の能登半島地震を踏まえて、今や日本全体が地震、火山噴火の激動期にあるという。能登半島地震は深さ16㎞、マグニチュードM7.6の直下型地震。熊本地震M6.5、阪神淡路大震災M7.3より大きい。マグニチュードが0.2違うと2倍の大きさになる。

マグネチュードは太鼓を叩くときの力の大きさ。震度は太鼓の音の大きさである。震度は震源との距離に影響される。マグネチュードは地震の規模である。
富士山は過去100年に1回程度噴火してきた。前回は1707年12月の宝永噴火、300年以上沈黙している。火山の寿命は100万年、富士山は生まれて10万年、まだ10歳である。噴火で一番怖いのは山体崩壊、岩なだれ、泥流である。富士山で発生すると被害総額は2兆5千億円と予測されている。

1707年宝永噴火時は直前の49日前に、宝永地震M8.6の南海巨大地震が発生した。90年後に、1854年安政南海地震M8.4、安政東南海地震M8.7が連続的に発生した。さらに92年後の1946年昭和南海地震M8.0、1944年昭和東南海地震M7.9が連続して発生した。

ここから92年後と計算すると、2038年に南海地震発生予測となる。南海地震の発生順番は決まっている。最初に名古屋沖の東南海地震、次に静岡沖の東海地震、最後に四国沖の南海地震が発生する。

被害額でみると、東日本大震災の被害額は20兆円弱である。南海トラフ地震の被害額は220兆円、首都直下型地震は1,000兆円と言われる。東日本大震災と比しても被害額は桁違いに大きくなる。

著者は地震正確な予測は不可能と言う。科学への妄信、過剰な要求は期待すべきではないという。所詮、科学は自然を解明できない。

天変地異も、長い目で見れば、興味深い歴史、地理、自然の発見である。「長尺の視点」で「しなやかな生き方」を持つべきだ。効率優先でなく、ゆっくり待つ心構えが大切だろう。

万が一を心配するより、99%の可能性に準備する姿勢。これからはストックよりフローの時代。モノを抱え込むより、リサイクル、流れに沿う生活。大量消費、欲望拡大からの脱却し、集中より分散させ、できる範囲で生きていく覚悟が必要かもしれない。


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