36日目　H2O

「あの人と私は水みたいなものよ、水素と酸素でH2O。あなたもそんな人に出会いなさいね。」

画廊で知り合ったおばあちゃんは、にっこり私に目配せをしてそう言った。

その日も、私は病んでいた。

美術を志して大学に入ったものの、早々に何を作っていいか分からなくなり、描けない自分を持て余していた。

制作に身が入らないので、気分を変えようとゼミの先生の個展を見に出掛けた先の画廊で声を掛けられた。

「