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#モザイク

31日目 モザイク

31日目 モザイク

「あ、ちょっと待って下さい。」

行きつけのクラフトビールを出す店へと向かう途中、彼女が言った。

振り向くと、駅の地下街のトイレの前にある、天井を支える大きな円い柱の前に立ち、彼女はその柱を撫でていた。

「なんかいいなと思って。」

伊藤若沖の絵の背後に広がるマス目のような、不思議な色合いのタイルがびっしりと貼られたモザイク調の柱だ。

1年前も、僕はこの場所で同じ光景を目にした。

「前に来

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