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海色のカップ

弟から結婚祝いをもらいました。

結婚祝いなんて初めてでなんだか気恥ずかしいです。でも弟によると「男同士だろうと結婚は結婚。結婚祝いを贈るのは当然」なんだそうです。朝、パートナーのオッサンと2人でこのカップを使うたびに、じんわりとあたたかな気持ちになります。

昔、弟の結婚式に参列した時、とてもとても嬉しかったのを憶えています。弟夫婦の幸せを心から願いました。

でも、その日の晩。家に帰って休んでいた時、ふと強い悲しみに襲われました。僕が結ぶ関係は、これまでもそしてこれからも、決して家族から祝福されることはないと思ってしまったからです。胸に灯っていた暖かな火は一瞬にして消え、幸せは絶望の波に飲み込まれてしまいました。溢れだす涙はシャツを濡らすだけで、誰にも届きませんでした。

あれから16年が経ちました。弟にはカミングアウトし、戸惑いながらも受け入れてもらえました。今では、弟とオッサンと僕の3人で飯を食いに行くようにもなりました。

この世の中に、本当の自分を知ってなおつながり続け、幸せを願ってくれる人がいること。そのことが僕を生かしてくれています。流れ落ちる水は川になり、いつか青い海へとたどり着く。そう思いました。

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