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D.Aノーマンの名著「誰のためのデザイン?」を読み直すべき理由
古典的名著「誰のためのデザイン?」
1990年に出版された『誰のためのデザイン?』は、D.A. ノーマン氏の1988年の著作『The Psychology of Everyday Things』の日本語訳です。HCDの提唱者と言われる著者の影響力もあってか、この書籍は数十年に渡り様々な書籍から参考文献として紹介され、2015年には増補改訂版も出版され、多くのデザイナーに読み継がれてきました。
36年前の本が今も通用するのか
しかし、2024年の今、増補改訂版の出版からもうすぐ10年が経とうとしており、原著の出版からは36年も経過しています。36年前といえば、スマートフォンはおろか、携帯電話すらも珍しい存在であり、ショルダーフォンというエイプリルフールのような製品が出ていた時代でした。時代背景が大きく変わった今、古典とも言えるデザイン書が今もなお通用するのか?
「デザイン原則を構成する概念」を検証
『誰のためのデザイン?』は現代にも通用するかを検討するべく、本書の1,2章で紹介されている「理解しやすさと使いやすさのためのデザインの原則」の有用性を確認します。
この原則を構成する4つの概念「可視性・よい概念モデル・よい対応づけ・フィードバック」は、本書の中で繰り返し何度も登場しており、本書の主張の根底にある重要な概念です。
「1.可視性」は今も有用か
可視性
目でみることによって、ユーザは装置の状態とそこでどんな行為をとりうるかを知ることができる。
本書では、「説明書が無いと内線に出る方法すらわからない電話」や「雰囲気はあるが手がかりが無いため開け方がわからないドア」などを例に、可視性の重要性を説いています。
これを現代のUI/UXデザイン文脈で捉えるならば、「なんでもハンバーガーメニューに収納すると気づかれにくい問題」や「雰囲気重視でラベルなしアイコンを使うと意味が伝わりにくい問題」などが可視性における問題と言えます。
「2.よい概念モデル」は今も有用か
よい概念モデル
デザイナーは、ユーザにとってのよい概念モデルを提供すること。そのモデルは、操作とその結果の表現に整合性があり、一貫的かつ整合的なシステムイメージを生むもの出なくてはならない。
本書では、「冷却システムの実際の構造とは異なる構造をイメージさせてしまうコントロールスイッチがあると、ユーザーが意図した設定温度にすることを難しくさせてしまう問題」などを例に、概念モデルの重要性を説きます。
現代のUI/UXデザイン文脈で捉えるならば、「アプリの全体像や構造を掴みづらいナビゲーション構成」や「一般的なスタイルとは乖離があり、操作可能であると認識しづらいボタンやリンク」などは概念モデルにおける問題と言えます。
「3.よい対応づけ」は今も有用か
よい対応づけ
行為と結果、操作とその効果、システムの状態と目にみえるものの間の対応関係を確定することができること。
本書では、「自動車のハンドル操作と方向転換の関係」や「蛇口の操作における水量と温度の調整の関係」などを例に、よい対応づけの重要性を説きます。
現代のUI/UXデザイン文脈で捉えるならば、GUIのデザインそのものが対応づけの問題だと言えます。言い換えるならば、OOUIにおけるオブジェクトベースの話でもあります。
「4.フィードバック」は今も有用か
フィードバック
ユーザは、行為の結果に関する完全なフィードバックを常に受け取ることができる。
本書では、「受話器を取ったときの番号入力待ち状態であることがわかる音」や「物理ボタンを押したときの物理的な感触」などを例に、フィードバックの重要性を説きます。
現代のUI/UXデザイン文脈で捉えるならば、マウスホバーしたときの変化や、フォーム入力時のエラー、もしくは完了時の通知など、フィードバックにおける問題は多々あります。
結論
1980年代、テクノロジーの急速な発達にデザインの対応が追いつかなかった結果、世の中には分かりにくく使いにくい道具が溢れ、本書「誰のためのデザイン?」のデザイン原則が生まれました。そこから36年経った今、テクノロジーはさらに発展し、消費者の求める便利さの水準も当時とは比べものにならないほど高くなっています。
つまり、今日のデザインが直面している問題は、当時から変わっていません。むしろ、より「複雑」になった技術を、より「わかりやすく・使いやすく」しなければならないという、より深刻な問題となって立ち塞がっています。ノーマン氏のデザイン原則は、時代を経て陳腐化するどころか、より一層その重要性を増しています、
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