見出し画像

コロさん日記(13)〜ソロでの皮下点滴のコツ〜

コロさんには朝の点滴が欠かせない。

前にも言ったけど腎臓が悪いので、毎日皮下点滴をしないと生きていけないのだ。

こういう猫はけっこう多く、我が家ではもう三頭、点滴を行っている猫がいる。多いだろ。なぜこうなった。私にもよくわからないが、そこはもう宿命と割り切って腹を括るのが吉だよ、とこないだ腐った目をしたペッパー君に言われた。

皮下点滴には輸液をラインから落とし入れるやり方と、シリンジを使って注入するやり方があるが、コロさんの場合は後者だ。

私は一人でコロさんへの点滴を行っている。そう言うとなぜか褒められる。ふだんは滅多に褒められないので悪い気はしない。

ポイントはシリンジの扱い、保定、そして愛だ。

まずはシリンジの扱い。腕は通常二本しかないので、そのうちの一本は泣こうが喚こうがシリンジの操作に用いらないといけない。実際やってみると分かるのだが、輸液の入ったシリンジを押し続けるのには意外と力がいる。腕が疲れる。ぷるぷるする。

そこで私はまず、その作業負荷を減らすことを考えた。この動作が疲れるのは、親指一本の力でピストンを押すからであり、だったらその負荷を分散させればよい。それにはシリンジを右手で縦に逆さに握り、椅子などの平たい面にピストン部を当て、体重を掛けるようにして押し込むのがコツだ。このやり方なら指先だけでなく腕全体の力を使ってピストンを押せるので、比較的楽に輸液の注入を続けられる。

次に保定。右手はシリンジを握っているので、残された左手をいかに効率よく使うかが鍵だ。コロさんの首から胴へ向かって腕を回し、ちょうど柔道の寝技のような要領で抑え込む。幸いにしてコロさんはあまり後退りしないので、このポジションでおおむね保定できるが、それでも時に後ろへ下がって逃げようとする。その際は、シリンジを握っている右手の残りの部分を、尻などに押し付けるようにして防御する。

そして愛。大切だ。我々はこれまで数えきれないほどの映画の中で、愛の力を見せられてきた。ゆえに点滴中はシリンジを持っている右手も、保定している左手も、その空いている指先のすべてを愛に変え、千手観音のようにコロさんを撫でてやることが重要だ。経験則ではひと撫でにつき十分の一秒、点滴を我慢してくれる時間が伸びる気がする。愛の力のなせるわざだ。

これ以外にも、コロさんが活発に動き出す前の寝起きに行う。輸液の入り始めは、驚かせないようゆっくりやる。暴れそうになったら一旦やめ、撫でて落ち着かせる。できるだけ猫と意識レベルで同化して、行動を先読みする。前向きなイメージを持ち続ける。などがポイントだろう。

ソロでの皮下点滴に苦労している猫飼いさんの参考になれば、幸いだ。

****

“コトバと戯れる読みものウェブ”ことBadCats Weekly、本日のピックアップ記事はこちら! 『ベオグラードメトロの子供たち』のノベルゲーム作家、隷蔵庫さんによる、パトリシア・ハイスミス作品の書評第二弾!今回のテーマは、ケイト・ブランシェット&ルーニー・マーラで映画化もされた名作『キャロル』です。

寄稿ライターさんたちの他メディアでの活動も。“魔女になりたい”ライターこと、すなくじらさんのこちらのnoteが面白かったので載せておきますね。

最後に編集長の翻訳ジョブも。おばあちゃんを亡くした少女の不思議な一日を描いたアドベンチャー、『すみれの空』をぜひどうぞ。泣けます。

これもう猫めっちゃ喜びます!