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Coffee Talk①:“warm”の温かさにも色々ありまして【ゲームとか翻訳する日々】

表題のとおり、ふだんはゲームとかを翻訳している。こないだは『コーヒートーク』というゲームを翻訳したのだけれど、ひとつの言葉でけっこう悩んだ。

“warm”だ。

お客さんの注文に応じてコーヒーを淹れ、彼らの話に耳を傾けるこのノベルゲームでは“cool”と対になっており、とりあえずぼんやり「温かい」と「冷たい」と訳した。

が、なんか引っかかった。"cold"じゃないし。もう15年くらいゲームとかを訳してきたが、こうした違和感はおおむね正しい。

そもそも、ゲームの舞台はコーヒーショップだ。飲むものは基本的に「温かい」はず。だとしたらなぜ、あえてコーヒーを「温かく/冷たく」するオプションが与えられているのか。筋が通らない。よほどのへそ曲がりでもなければ、ふつうはスタバで「冷たいコーヒーを」なんて頼まないだろう。

で、開発の方に訊いてみた。

それでわかった。どうやらこの“warm”は、コーヒーの材料として用意されているショウガやシナモンを口に含んだときの「ピリッと感」を指しているらしい。液体の温度ではなく、体の芯がぽかぽかするような「温かさ」だ。

したがって対となる“cool”も「冷たい」ではなく、やはり材料のミントやレモンから得られる清涼感のことを指している。

となれば"cool"は「さっぱり感」でいいだろう。「感」をつけたのは仔細は省くが、名詞化したほうがこのゲーム的に都合がよいからだ。

が、もうひとつの"warm"は悩んだ。ドリンクの温度を第一に想起させる「温かい」は使えないため(が、いくらか温度的な含みもある)、それに代わるキャッチーな日本語を探さないといけない。

「あったか感」や「ぽかぽか感」が候補に挙がったが、悩みに悩んだあげく「ほっこり感」とした。語源的には現在広く使われているような意味(ほっとするようなあたたかさ、みたいな)とはちょっと違うのだけれど、それが逆に、この“warm”の微妙なニュアンスを捉えている気がしたし、「さっぱり感」との語呂もよい。

とはいえ、いきなり「ほっこりした飲みものを」と言われても、プレイヤーはどの材料を使ったらいいのか戸惑ってしまうだろう。そこでゲーム序盤のダイアログ内で、本作における「ほっこり感」の意味をそれとなく示唆するようにした。

うまくゲームに収まっていることを祈る。

【ゲーム詳細情報】
タイトル:コーヒートーク
ジャンル:コーヒーを通じて心をかよわせるノベルゲーム
対応機種:Switch, PS4, Xbox One, PC
発売日:2020年1月30日(無料体験版あり)
国内版配給:Chorus Worldwide(公式Twitter
海外版配給:Toge Productions (公式Twitter

(本記事はChorus Worldwide様の許可を得て掲載しています)
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